6月19日(木)、ベルサール汐留で「あらゆるモノがつながる世界~IoTが起こす新ビジネスイノベーション~」というテーマで「CNET Japan Live 2014 Summer」が開催された。
今回、「CNET Japan Live 2014 Summer」でテーマとなったのは「Internet of Things」だ。「Internet of Things」は、IoTと略され、日本語では「モノのインターネット」と訳される概念。約15年ほど前に登場した言葉だが、通信機器やバッテリーなどの小型になり、安価になったことで、自動車や家電、自転車などの他、眼鏡や腕時計、アクセサリーなど身につけるものまで、インターネットにつなげることが可能になってきている。
ハードウェアビジネスでもスタートアップ
インターネットに接続することが可能になるとなると、IT業界の領分にもなってくる。スタートアップにとってもこの流れは無関係ではなく、ハードウェアスタートアップも登場してきている。
「CNET Japan Live 2014 Summer」中に開催された「ハードウェアビジネスが変わる–IoT時代のモノづくり:Cerevo×Moff」というセッションで、Moff代表取締役の髙萩昭範氏とCerevo代表取締役の岩佐琢磨氏が登壇した。
Moff
Moffは子どもが身につけて遊ぶことができるスマートなおもちゃだ。Kickstarterで資金調達を達成し、今年の秋にプロダクトの発売を予定している。
Cerevo
Cerevoは2008年から活動しているハードウェアベンチャー。最近、体制を一新し、メンバーを13人から4倍近くの50人に増やす予定であるなど、動きが注目されているスタートアップだ。
両者は野々下裕子氏がモデレータを務める中ハードウェアスタートアップについてパネルトークを行った。
Kickstarterの活用と海外メディア
Moffはクラウドファンディングサイト Kickstarter で資金調達を達成している。Moffがプロジェクトを達成した際は、複数の海外メディアがMoffのことを取り上げていた。二人のトークセッションは、まずこの事象に対する岩佐氏の質問からスタートした。
岩佐氏:Moffがメディアに取り上げられたときに、コンタクトなく取り上げてもらえたっておっしゃってましたけど、Kickstarterの前にモバイル・ワールド・コングレスでデモやったり、SXSWでブース出したりしていたじゃないですか。で、そのときにメディアの人たちにKickstarterに出すからよろしく、とコミュニケーションとっていた。それが効いたんじゃないかなと思ったんですけど、どうだったんですか?
高萩氏:意外にもSXSWでしゃべったメディアにはほとんど取り上げられなかったんですよね。なのでこれはKickstarterのすごさかなと思っています。
岩佐氏:Kickstarterに出したいという相談をよく受けるんですけど、ただプロジェクトを掲載するだけだと全く取り上げられない。英語圏のメディアで記事がいくつか載って、その記事のURLを見せたりできる状態になってからKickstarterに掲載できたほうがいいのでは?
高萩氏:たしかに、メジャーメディアはどこかのメディアで取り上げられたというレファレンスが必要だと思います。あくまでレファレンスなんですけれど。
海外展示会には行くべき
野々下氏:毎年ラスベガスで開催されているCESではクラウドファンディングサイトにプロダクトを掲載予定の人たちがブースを出していて、そこでプロトタイプを見ることができるようにしていますよね。そこでちゃんと動くプロダクトであることを示した上で、Kickstarterに出したりしてますよね。
岩佐氏:そうですね。ハードウェアビジネスにちょっとでも興味があるなら記事を読むのではなくて、CESには直接行くべきだと思います。今、野々下さんがおっしゃったような場所っていくつもあって。ベンチャーキャピタルがKickstarterに出す前のプロダクトやもうプロジェクトは掲載していて未達成のプロダクトなどに、シードマネーを入れていて、CESのステージを8個もおさえているなんてこともあるんですよ。でも、会場にあるのはパネルだけ。パネルだけの状態なのにステージをそんなにおさえちゃって、でもプロダクトはまだないなんてKickstarterのプロジェクトがいくつもあったりするんです。
ハードウェアビジネスは今が攻め時
野々下氏:ハードウェアビジネスは今が攻め時、というお話をされていましたが、そう判断される要因は何なんでしょうか。
岩佐氏:かなり複合的な要因で判断している。いくつかの要素で一気にここ2年くらいで来てるんです。ざっと列挙していくと以下のようなこと。
- ユーザはプロダクトが面白ければ有名メーカーのモノでなくとも買うように
- 大手メディアでもベンチャーのプロダクトを記事で取り上げるようになった
- クラウドファンディングで試作段階のプロジェクトにお金が集まるようになった
- 流通の変化、ベンチャーのプロダクトでも仕入れて売れば儲かるということを世界中の代理店が理解した
岩佐氏:流通の変化が一番大きくて、トルコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国とか、現地の代理店から問い合わせが来るんです。僕たちがパッと場所が思い浮ばないようなところであっても、同じようなことが同じペースで動いている。
ハードもソフトウェアが重要な時代に
野々下氏:高萩さんは以前、メルセデス・ベンツでプロダクトマネージャーをされていたそうですが、そのときと比較してハードウェアビジネスの変化は感じられていますか?
高萩氏:会社の規模が違うので難しいですけれど、車の会社ってソフトウェアを軽視していたんですよね。
岩佐氏:それは、家電メーカーも同じですね。家電メーカーなんて未だにそんな感じです。
高萩氏:僕らが今やっているプロジェクトって、ソフトウェアでほとんどやっちゃえという状態。モノづくりの仕方が違うんですよね。それがなぜ可能になるかというと、iPhoneを中心にスマートフォンの処理能力が格段に上がったから。
CPUなどはハードウェアに良いものを積んだほうがいいんですけれど、データを飛ばしてスマホで処理させちゃったほうがいいじゃん、となってきている。スマホ持っているので使ったほうが安くできるし、アプリ側でダウンロードすれば機能追加もできる。
モノをただ売るだけで終わる時代ではなく、ソフトウェアを絡めて考えるとハードウェアの可能性が非常に大きくなってきている。スタートアップでも勝負できる新しい流れがあると思っています。
一回売って終わりではないハードウェア
野々下氏:これまでは 売ってしまえば終わりだったビジネスの仕方が変わるんでしょうか?すると少し手間がかかる分も増えるのでは?
岩佐氏:たしかに手間は増えましたけど、機能追加などによって商品寿命を延ばすこともできるようになったと思います。Cerevoの商品は、3年経っても売れている。これは従来型の家電だと考えにくかったことです。
高萩氏:手間も増えるとは思いますが、一回買ってもらった顧客から色々なビジネスチャンスをもらえると思っています。Moffはセンサー解析プラットフォームなので、データが集まれば色々なことが可能になります。手間はかかるかもしれないが、そこにビッグチャンスがあると思いますね。車でもアフターセールスで儲かっていたりしますし、顧客との接点も広がったりするので。
モノづくりにおける新チーム構成
野々下氏:ソフトウェアが重要な役割を担うとのことでしたが、モノづくりにおけるチームメンバーの構成も従来のハードウェアとは変わってくるのでしょうか?
岩佐氏:すでに変化は起きた後だと思いますね。もうソフトウェアの人員が増えていて、ソフトウェア偏重の方向になっています。電子部品もどんどん良いものが出てきていて、チップやモジュールもどんどん高性能になっていて、ハードウェアは作るのが楽になりつつあるんですよね。するとよりソフトウェアの人材が必要になる。
プロダクトの前提を覆していく
岩佐氏:「GoPro」はかなり売れていてみなさんもご存知かと思うんですけれど、あれはデザインが素晴らしいと言われているんですね。それはなぜかというと、従来のカメラの前提を覆したからです。液晶をやめて、頭に付けられるようなカメラにし、それがユーザに刺さった。「◯◯といえばこういうもの」という常識を覆すことでできることはかなり多く存在しているにも関わらず、世の中のメーカーはそれに取り組んでいない。うちで作った「OTTO」という電源タップもそういうことにチャレンジしています。
ハードウェアは作り方、売り方、届け方、価値提供の仕方など、あらゆる面で変化が起こり始めている。今回のトークセッションのレポートで、その潮流を少しでも感じてもらえれば幸いだ。
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