Startup Asia Singapore 2014で披露された、今年有望なスタートアップ10社を一挙ご紹介

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さて、先週お伝えした GMIC(Global Mobile Internet Conference/全球移動互連網大会)の G-Startup 登壇のスタートアップに引き続き、今週は5月7日〜8日に開催された Startup Asia Singapore のピッチ・セッション Startup Arena に登壇したスタートアップ10社を取り上げる(授賞式の模様は、この記事に書いた)。

なお、Startup Asia は今年初となる Startup Asia Tokyo を9月3日〜4日に開催予定だ。ピッチ・セッションへのエントリ、一般参加へのエントリはこちらから受け付けている

【優勝】Bindo(香港/NY)

Bindo はクラウド・ベースのPOSシステムで、小売店が実店舗のみならず、Eコマースでも商品が販売できるようにするプラットフォームだ。商品管理、商品検索ほか、在庫管理も含めて、オンラインの店舗と、オフラインの店舗を一元管理できることが特徴だ。今回の Startup Arena でのピッチをきっかけに、East Ventures から180万ドルを調達したことでも話題になった。

シボレー賞、Jungle Ventures 賞】Astroscale(シンガポール)

Astroscale は神戸出身のシリアルアントレプレナー岡田光信氏がローンチしたスタートアップだ。会社はシンガポールに登記されている。宇宙空間には、ロケットや人工衛星などの破片がスペース・デブリ(宇宙ゴミ)として多く漂っている。映画「ゼロ・グラビティ」でもテーマとなったように、スペース・デブリは、既にある国際宇宙ステーションや人工衛星の脅威になりかねない。小さな宇宙船(1.5メートルとのこと)を打ち上げ、これを用いて比較的大きなスペース・デブリ300個を大気圏に突入させて燃やしてしまおうというプロジェクトだ。

Global Brain 賞】FaceRecog(シンガポール)

FaceRecog は屋外広告などに付けられる小型のデバイスで、広告の前を通過した人の眼を認識し、年齢、性別、人数等を認識することができる。デバイスで得られた情報はウェブAPIで転送されるので、リアルタイムで Google Analytics で閲覧することができる。


AsliGoli(パキスタン)

AsliGoli は医薬品のトレーサビリティを提供する。以前、パキスタンのインキュベータ Invest2Innovate(別名i2i Accelerator)から輩出されたスタートアップの一つとしても取り上げた

パキスタン国内で実に50%もの医薬品は未認可か基準不足の品質であり、Asli Goli はSMSを通して本格的に医薬品のチェックができる体制を提供している。特定のシリアルナンバーが付いたスクラッチラベルが提携薬局に提供される。店舗にラベル代金の請求をするため消費者の負担はなく、カラチ、ラホール、ファイサラバードの大手ドラッグストアでのテストプロジェクトが予定されている。

MergePay(タイ)

MergePay は消費者向けは、クレジットカードやスマートフォンがあまり普及していないアジア地域向けに独自に決済アプリを提供しており、銀行や電話会社のアカウントを連動させ、超音波を使ってモバイルウォレットに送金することができる。既に世界1.2万社の銀行と接続しているとのことだ。

今回は、店舗向けのツール MergePay Pulse の紹介。POSシステムや各種ハードウェアと連動、帳簿管理が簡単にクラウドで処理できるようにシステムだ。電子マネーと店舗の入出金管理のしくみを一つのプラットフォームに統合する試みは、今後の小売業界のトレンドを標榜しているのかもしれない。

HayStakt(シンガポール)


クラウドファンディング・マーケットプレイスの HayStakt では、購入希望者からのエントリにより価格が決定する。掲げられたプロジェクト=プロダクトに対して、オーダー数が最低生産ロットを超えれば、作品の制作者が生産を始め販売するしくみだ。制作者は最低価格を設定できるが、価格が注文数にあわせて変動するため、従来のクラウドファンディング・サイトに比べ、より柔軟な市場原理を取り入れたプラットフォームと言えるだろう。

Kickstarter や Indiegogo のような、相応の最低生産ロット数が求められるプロダクトに比べ、小ロット受注にならざるを得ないハンドクラフト製品のクラウドファンディングには適しているのかもしれない。

Proxperty(シンガポール)

シンガポールに本拠を置くスタートアップの多くが、市場機会を東南アジア全域に見つけている。シンガポール国内の市場ボリュームはさほど大きくないからだ。しかし、例外があるとすれば、不動産業界と小売店向けの顧客リワードプログラムかもしれない。これらの分野のスタートアップの多くは、シンガポールに根ざし、シンガポールの人々に向けてサービスを提供している。その背景には、この分野特有の地域性の高さがあるのだろう。

Proxperty は不動産屋が不動産を簡単にマーケティングできるようにするサービス。複数の不動産ポータルに横断投稿ができる。特にこのサービスが目指しているのは、不動産屋の内部でのチームのコラボレーションだ。不動産屋のエージェントはその業務の性質上、それぞれの担当者が独立的に動くことが多い。情報を共有しルーティンワークを省力化することで、より効率的な業務運営ができるのではないか、というアプローチ。

日本には、複数のEコマースプラットフォームに出店している事業者向けに、在庫を横断管理できるソリューションがあるが、不動産やホテル業界向けにも、プラットフォーム横断で情報を統合管理し、在庫を横断管理できるしくみが出てくれば面白いかもしれない。

Kairos(韓国)

Kairos は先週の GMIC の登壇スタートアップとしても紹介した。自動巻き腕時計のディスプレイにスマートフォンの着信やフィットネス情報を表示するハイブリッドなスマートウォッチ。スマートウォッチは概して単価の安いものが多い。一方、時計市場全体を見てみると、売上の多くはアナログでラグジュアリーなブランドものが占めている。そこでこれら両方の要素を兼ね備えた、ラグジュアリーなスマートウォッチを作ることで、これまでになかった市場需要を開拓しようとする試み。

StudyPact(日本)

StudyPact は、Open Network Lab から第8期から輩出されたスタートアップで、2月の HackOsaka に登壇したほか、Innovation Weekend のシンガポール予選でも優勝している

同社のサービスでは、ユーザに学習機会の達成を促し、ユーザは掲げた目標を達成できればお金がもらえ、達成できなかったらお金を支払う。例えば、1週間で2時間、英会話の勉強をすることを目標に掲げ、達成できたら5ドルもらえるように設定したとする。達成したら5ドルもらえるが、達成できなかったら5ドルを支払い、この5ドルのうち半分の2.5ドルは応援してくれた他ユーザに分配され、残りの2.5ドルは StudyPact が受け取るしくみだ。

AppVirality(インド)

AppVirality は SDKを入れるだけで、簡単にモバイルアプリのグロースハックが実現できるプラットフォーム。モバイルアプリの A/B テスティングができるほか、アプリ上でユーザに調査を実施してアプリの改善に役立てることもできる。planBCD などとも競合になり得るスタートアップが、東南アジアからも生まれたことになる。

一部筆者の推測を含むが、このアプリの想定ユーザは、モバイルデベロッパのエンジニアというよりはマーケッターであり、マーケティング部門は開発部門の日常業務に影響を与えずに、A/B テスティング、ひいては、ユーザインターフェース(UI)の変更が可能になると考えられる。つまり、この SDK を組み込んだ iOS アプリは事実上、iTunes Store の承認を経ずに UI 変更が可能になるわけで、このあたりのポリシーをどうクリアしているのかは気になる。


いかがだっただろうか。これらのチームが東南アジア各国の市場で成功することを期待したい。

次回は、5月14日〜15日に韓国・ソウルで開催された beLAUNCH 2014 のピッチ・セッションに登壇したスタートアップ20チームを紹介する予定だ。

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