予約台帳サービスのトレタがWiLから2億円を調達、元ペパボ常務取締役の吉田氏がCOOとして参加

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飲食店向けの予約台帳サービスを提供するトレタは6月27日、WiLを引受先とする2億円の第三者割当増資の実施を発表した。

また、同時に7月1日付けでGMOペパボ(前社名はpaperboy&co.)の元常務取締役で、自身が手がけたブックレビューサービス「ブクログ」の代表取締役などを務めた吉田健吾氏を取締役COO(最高執行責任者)として迎え入れることも発表している。トレタは新たな経営陣とこの調達資金を元に、開発および営業体制の強化を実施するとしている。

予約台帳サービスの導入は順調に進んでいるようだ。5月中旬に取材した際、約半年弱で900店舗だった導入店数は現在1000店舗を突破している。1店舗あたりの導入代金は月額9000円なので、単純な計算式で売上の規模はおおよそ予想がつく。

つまり、国内の飲食店規模を想定すればこのビジネスのアップサイドが分かることになる。その点についてトレタ代表取締役で、飲食店経営者でもある中村仁氏に数値を聞いたところ「国内では飲食店事業というのはざっくりと50万店舗が23兆円規模の市場を作ってる」とのことだった。

もちろん全店舗に導入というわけにはいかず、中村氏も上位2割ほどが想定できる数字ではないかと話していた。もし想定通り10万店舗に入ったとして売上規模は年間でざっくり100億円程度だ。もちろんこれはこれで素晴らしいビジネスだが、果たして投資サイドはそれで納得するだろうか?答えは否だ。彼らが考えるビジネスモデルはもっと大きい。

ポイントは「あらゆる飲食店のテーブル情報」にある。つまり席予約だ。

お店の予約を、まるごとタブレット1台で。___トレタ

詳しく説明しよう。現在、飲食店でリアルタイムの席予約ができるサービス(オープンテーブルのようなもの)を提供している場合、その実態は飲食店で紙の予約台帳をオンラインサービスの提供するシステムに手入力で打ち込んでいるそうで、大変手間もかかるしミスも発生する。これでは当然スケールが難しい。

しかしトレタのような電子予約台帳で席の管理ができるようになると、その情報は全てリアルタイムに管理することができる。つまり、導入されている飲食店の席が全て「在庫」として一元管理できることになるわけだ。

この在庫を効率的に捌くことができる、つまり飲食店の空き席を減らすことができれば大きなビジネスチャンスになる。トレタが狙うのはそこだ。

「飲食店の席在庫を一元的にトレタが管理することで、様々なグルメ媒体から予約を受けて、さらに店舗側では手作業なしに自動的に処理することができるようになります。APIなどの提供を通じて、集客媒体との連携も視野にいれています」(中村氏)。

一方で、この分野は競合も虎視眈々と狙っているはずだ。中村氏も予約台帳サービスが飲食店に普及するのはここ一、二年が勝負と語る。これまでのウェブサービス運営や、飲食店の豊富な経験を背景にここまで順調に導入店舗を増やしてきたが、この勝負に勝つために中村氏は今後、オンラインでの戦略に力を入れるという。つまり、今回新たに参加した吉田氏の得意とする分野だ。

「現状では営業チームが売上を作っている会社なので、その現場を学びながら、徐々にオンラインセールスの下地を作っていく予定です。ただ、対象となる客層のITリテラシーなどを考えると、リアルな施策も盛り込む必要があるでしょうし、これからその戦略を練っていきます」(吉田氏)。

スマートデバイスの波に乗り、飲食店というアナログな世界に隠れたチャンスをモノにできるのか。トレタの新しい勝負が始まる。

※情報開示:筆者の家族はトレタと契約関係にあります

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