「失敗しても挑戦をやめないこと」:椿奈緒子さんが語る7つの社内起業体験に見る7つの失敗要因 [FailConレポート]

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FailCon-Tsubaki-NaokoVOYAGE GROUPで「ADTest」を手掛ける椿奈緒子さん

「FailCon Japan」で唯一の女性登壇者として登場した椿奈緒子さん。彼女はまた、イントレプレナー(社内起業家)であるという点でも他の登壇者と異なる。

椿さんからは、過去手掛けた7つの新規事業と、その失敗要因が共有された。これまでに、Tryl.net、Cybozu.net、HubsMedia、Japan Market Entry Parter、appmom、瞬刊!リサーチNEWSを事業展開し、現在はVOYAGE GROUPでADTestを手掛けている。

7つの失敗要因

事業の失敗要因は、主に「組織」と「事業」に分かれると話す椿さん。細分化すると、以下の7つに分かれる。

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  • 参入タイミングの見誤り
  • 成長市場ではない
  • 市場の課題を見誤り
  • 競合に負けた
  • ローンチ戦略の見誤り
  • チームワークに課題
  • 実行力不足

この中でも、過去には市場の見誤りという失敗要因が最も多かったと分析している。

いろいろ手を出し過ぎた「Tryl.net」

例えば、2004年の7月に立ち上げたのはサンプリングサービスの「Tryl.net(トライアルネット)」だった。 当時はサイバーエージェントに所属しており、社内事業コンテストでのグランプリ受賞を受けて事業化したものの、結局1年ほどでサービスを終了した。

当時、椿さんはネット広告の営業担当で、1,000円の化粧品のために2,000〜3,000円の新規顧客獲得コストが必要という企業側の課題を感じた。複数のサンプルを同梱することで獲得単価を下げ、同時にユーザーは複数サンプルを試せるというウィン・ウィンのシナリオを描いた。

この社内起業体験で椿さんが学んだことは、中長期的なビジネスモデルをつくることの重要性だったと言う。

「この事業が失敗した要因は、いろいろ手を出し過ぎたことだったと考えています。数字を伸ばすために、ECサイトから物流オペレーション、パッケージデザインなど何でもやりました。目の前の売上げを追うことに忙しくなりすぎて、長期的なビジネスモデルを見出だせませんでした」

ローンチ戦略および市場にある課題の見誤り

サービスをつくるなら、それは市場にある課題を解決すべきというのは良く言われるが、そこの課題を見誤ったのが「Japan Market Entry Parter」の事業だった。JMEPは、海外企業が日本市場に参入する際の支援を提供する事業。

「実績のない、社名を聞いたこともない企業だったため、海外パートナーを探すことに苦戦しました。何より決定的な失敗要因は、少なくともそのタイミングでは日本市場にそこまで興味を持っている企業がいなかったこと。これは、ローンチ戦略の見誤りでした。やり直すなら、人脈ネットワークを構築するためにも現地に拠点を構えたと思います」

市場の課題を見誤った事業が、2011年2月にサービスを開始したAndroidアプリのレコメンドサービス「appmom」だ。「大量にあるアプリの中からどれをダウンロードすればいいのかわからない」という課題がユーザーにあると考えた。

ところが、アプリとして提供しているにも関わらずダウンロード数はまったく伸びず。リアルアフィリエイトやデータ事業などにも手を出してみたが、そもそも、こちらが思うほどユーザーは困っていなかったという「市場の課題を見誤った」ことが失敗要因だったと振り返る。

失敗しても挑戦をやめないこと

現在は、VOYAGE GROUPのリサーチパネルという部署に所属しながら、クリエイターズマッチ社と共同で「ADTest」を手掛けている。サービスの正式リリースは今年の5月で、デジタル広告のクリエイティブに特化したABテストを提供している。

プライベートでも、iOSアプリ「ポケットIR」や、ママとしての感性を活かした「BABYalbum」といったサービスに携わる椿さん。こうしたサイドプロジェクトに関しても、「ゴールは何か」、「何のためにそれをつくるのか」を明確にすることを徹底している。

過去には散歩ルートが検索できる「Sanpo」というアプリも開発していたが、設定した3ヶ月という期間に下限目標に到達することができず、潔くチームを解散した。適切なタイミングで見切りを付けることもまた必要なのだと話す。

椿さんは最後、こう話してトークを締めくくった。

「市場の見誤りをどうすれば避けられるか、これは永遠の課題です。参入前に判断するのか。やりながら判断するのか。でも、ダメならすぐにピボットすることです。失敗しても挑戦をやめないこと。必ず次につながるから」

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