「調達した1.6億ドルで、これからの10年に備えます」~WordPressの父、Automattic CEO Matt Mullenwegにインタビュー

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.6.10

先週、WordPress コミュニティの長にして、WordPress.com の運営元 Automattic の CEO Matt Mullenweg が来日した。

彼はアジア太平洋地域の WordPress コミュニティを巡るツアーの途中で、韓国、インドネシア、シンガポールを訪れた後、ここ東京に立ち寄った。インタビューを受けてくれたこの日(6月6日)は、彼は東京で WordPress のユーザのコミュニティとのミートアップに参加し、以降、大阪、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリアと巡る計画だ。

本社オフィスはサンフランシスコの SoMA (South of Market St.) にあるけれど、最後に出社したのは4ヶ月前。サンフランシスコに来たときは、ぜひ立ち寄ってもらうといいけど、そのとき僕がいるかどうかは分からない(笑)。世界中どこにいても仕事はできるからね。言わば、僕が居る場所が〝本社〟という感じ。

この前に来日したのは5年前だという。当時の日本はスマホ全盛とまではいかず、ガラケーで i-mode を使っているユーザも少なくなかった。現在の日本の WordPress のコミュニティの状況について聞いてみると、WordPress はまだアーリーアダプターのものでしかなく、2005~2006年位のアメリカの WordPress コミュニティの状況に似ていると語る。

現在の日本の WordPress コミュニティの状況は、野球で言うなら、まだ1イニング。だから、もっとWordPress を日本で広めたい。そのためにも、日本から優秀な人を雇用したい。それが今回の来日の大きな目的の一つだ。

250人いる Automattic の社員は、約3分の1がユーザサポート要員で、残りがエンジニア/デザイナー/経営管理部門という構成なのだそうだ。世界中のどこで仕事をしてもいいことは Automattic の雇用体系の特徴の一つで、250人の社員のうちサンフランシスコのオフィスに常駐する社員は15名。残念ながら日本人社員は現在のところ、東京に常駐する高野直子氏の他には居ない。[1]

英語という一つの障壁はあるにせよ、(社内の情報共有はウェブベースであるため)「英語を喋らなくても、読み書きできればいいんだけどね」と笑いながら語る Matt は、少なからぬユーザがいる日本の WordPress コミュニティにより良い環境を提供するためにも、日本人の Automattic への入社を切望しているようだ。

約1ヶ月前、Automattic がVCから1.6億ドルを資金調達したことは記憶に新しい。「IPOするとか、どこかに買収されたりするとか、そういう計画は無いの?」と尋ねてみると、Matt は次のように答えた。

典型的なIPOより、大きな金額をVCからの資金調達で賄えたんだ。会社は自分達でコントロールしたいし、今のところIPOの必要は無い。WordPress は2ヶ月前に11歳になった。今回調達した資金は、WordPress のこれからの10年に備えるためのものだ。

今回調達した資金を使って、同社は当面、iPhone や Android 向けのモバイル最適化に開発体制を集中する。それを考えれば、モバイルで欧米の先を行く日本から、多くのエンジニアに WordPress の開発に加わってほしいと考えるのはごく当然の発想だ。

WordPress を採用しているウェブサイトは世界の2割以上に上ると言われ、たった250名しかいない社員で、それだけのトラフィックシェアを獲得しているという点で、Automattic は Facebook や Google などよりマーケット・ディスラプティブな存在として評価されてきた。日本を含む世界で雇用される新たな人材が、WordPress を単なるブログ環境や CMS という概念に留めず、新たなプラットフォームに成長させてくれることを楽しみにしたい。


  1. 高野氏は「グローバライザー」と紹介されている。WordPress の利用促進と Automattic の信念を世界中に広めることが、彼女のミッションのようだ。 

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