シリコンバレーで生まれた初の100兆円スタートアップ、それにまつわる8人の起業家とエコ・システム誕生の話

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<ピックアップ> The First Trillion-Dollar Startup

北米スタートアップ・エコシステムの創世記に関する興味深い考察がTCに掲載されておりました。

リサーチ会社のEndeavor 、 Rhett Morris氏による寄稿で、シリコンバレー創世記に多くの起業家を輩出したFairchild Semiconductor社(文中以下、Fairchild)についての調査です。

実はこの企業が世界で初の1兆ドル(100円換算で誤差すごいですが一応、100兆円)になるであろうという内容で、ちなみに現在の時価総額トップがAppleの約5800億ドルあたりですから、その倍ということですね。

もちろん、現在トップは別の企業であり、Fairchild自体は現在20億ドルほどの時価総額ということですから実態とは合いません。お時間ある方はぜひ原文読んで頂きたいのですが、興味深いのはFairchild社から輩出された企業の影響範囲なんですね。筆者の論点をかいつまんでこちらに書いておきます。

  • – 1957年にサンフランシスコの南、小さな街で8人の起業家がFairchildを創業
  • – 創業者メンバー:Jay LastBob NoyceSheldon Robertsの三人はボストンのMITで博士号取得、Eugene KleinerJulius Blankの二人はニューヨークでエンジニアとして活躍、そしてJean HoerniGordon Mooreはロサンゼルスで働いていた。もうひとりの創業者Victor Grinichは以前にリサーチャーをやっていて、スタンフォードの学生でもあった
  • ※追記:反逆の8人についてそれぞれWikipediaのリンクを追加
  • – 当時のベイエリアにはベンチャーキャピタルもなく、スタンフォードも起業に重要な役割を果たしてなくって、PCを作る上でのトランジスタ開発企業の数においては米国の他都市に遅れをとっていた(元記事のグラフを参照)
  • – 8人中、7人の創業者(Victor Grinich以外)がサンフランシスコに移動
  • – 2名の重要な支援者の援助を受け、3年後の年間売上が2000万ドル(約20億円)に到達、1960年代中盤には9000万ドルに拡大
  • – 会社が大きくなると、離れてスピンアウトする人々が出てくる。つまり、こっからスタートアップ・エコシステムが回り始める。この中にはMooreとNoyceの始めたインテルなどがあり(元記事の円グラフを参照)MooreとNoyce以外の6人の共同創業者は二人に出資をするなど資金的な支援も開始する
  • – こうやって創業者8人は12年間で30社のスピンオフ企業を生み出す
  • – 1971年にジャーナリストのDon Hoefler氏がサンフランシスコのこういった状況をみて「シリコンバレー」の言葉を作る
  • – 1970年代に活動を開始したスティーブ・ジョブズ氏はNoyce氏のアドバイスに耳を傾けたりしていた。Appleの最初の投資家もやはりFairchildの元従業員だった
  • – そして1972年、8人の創業者のひとり、Kleiner氏がベンチャーキャピタル「Kleiner Perkins」を共同創業、さらにFairchildの元エグゼクティブであったDon Valentine氏もまた同様のベンチャーキャピタル「Sequoia Capital」を創業。それぞれGoogleやSymantec、CiscoやLinkedInといった企業に投資をしていた
  • – さらに投資先であるSun MicrosystemsやNetscape、そしてPayPalなどから輩出された人材がKhosla VenturesやAndreessen Horowitz、500 Startupsなどを生み出す
  • – Endeavorの調査では、Fairchild社が生み出した効果として、92社の関連公開企業の総額が2兆1000億ドル、雇用は80万人に上るとしている。また、8人の起業家にルーツを辿ることのできる企業は現在2000社になるとした

さてさて、いかがだったでしょうか。8人の起業家が生み出した半導体企業が、投資とスピンオフ、人材の輩出を繰り返した結果、半世紀でこれほどまでの経済的インパクトを生み出すことに成功したわけです。やはり特に重要なのがマイルストーン毎に出現する「キーマン」であることはこの振り返りでもよくわかります。スタートアップ・エコシステムで常々「人やチームが重要」である、といわれる所以ではないでしょうか。

もちろんこの流れはアジア、日本にもやってきていますので、どういう成長があるのか、楽しみで仕方ありません。

via TechCrunch 【G翻訳】

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