マウスでなぞるだけで、あらゆるデータ取得をAPI化——Y Com出身のスタートアップKimono Labsにインタビュー

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2014.8.5

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Kimono Labs 共同創業者 Ryan Rowe(左)と Pratap Ranade(右)
写真提供:Kimono Labs

Open The Kimono〟——すべてのデータを洗いざらい皆で共有しよう、という慣用句だ。筆者はネイティブ・スピーカーではないので、この表現が英語圏でどの程度広く通用するのかわからないが、このコンセプトを社名に冠したスタートアップが存在する。Y Combinator のインキュベーション・プログラムの最新バッチ(2014年1月〜3月)から輩出された Kimono Labs だ。

Kimono Labs のチームが先週から来日しており、共同創業者の Pratap Ranade と Ryan Rowe に話を聞くことができた。

ネット上に存在する、あらゆるデータ取得をAPI化

インターネット上には無数の情報が存在する。その多くは、人間がウェブブラウザで閲覧することを前提としたものであり、他の外部サービスがそのデータを利用する場合、ウェブスクレイピングという手法が用いられる。家計簿アプリなどで、銀行のネットバンキングサービスから入出金履歴や残高情報を取得するのによく用いられている。

しかし、それらは、そもそも人が閲覧することを前提としたデータであるため、API を利用したときのように、外部サービスが読みやすい形式では提供されない。前出の事例で言えば、ネットバンキングサービスが画面仕様を変更すると、たちまち外部サービスはデータを取り込めなくなってしまう。

インターネット上で、マシンが読みやすい形式でデータが提供されているのは、どれくらいだと思う? 0.0005% だ。つまり、ほとんどの情報は外部サービスでそのまま取り込むことができない。(Pratap)

Kimono Labs が開発したサービス Kimono を使えば、同サービスにログインした状態で、対象のウェブサイトの欲しいデータをマウスカーソルでなぞるだけで、CSV や JSON 形式でデータを取り込める API を作成できる。コーディングの知識は一切不要だ。ウェブサイトのデータを取り込みに行く頻度も設定できるので、外部サービスを開発するユーザは、Kimono で作成した API を参照して最新のデータが容易に取得できるというわけだ。

Kimono を使って小学5年生の子供が、データ取得の API を作った例もあるよ。(Pratap)

ダイナミックな値を簡単にネット上から取得できれば、開発できるサービスの幅が広がる。アメリカ、フランス、日本など世界中のユーザが Kimono を利用しており、Y Combinator を卒業した、今年3月の時点で Kimono のユーザは2万人、毎週15%以上のペースで増加し続けている。

Kimono が生まれたきっかけ、Airpapa

Pratap と Ryan が共に仕事をすることになった契機は3年前に遡る。二人はコロンビア大学大学院の同級生で、大学院を卒業した後、Pratap は マッキンゼーに、Ryan はシステムデザインの会社に身を置いていたが、一緒にプロジェクトを立ち上げたいと考え、電話で連絡を取り合うようになった。

そうした中でできあがったのか、2012年の冬にローンチした Airpapa.com だ。Airpapa を使えば、利用したいエアライン、出発地と目的地、渡航日を入力することで、機内でどんな映画が上映されているかを確認することができる。つまり、見たい映画に合わせて、搭乗する飛行機を選ぶことができるサービスだ。

Airpapa は、その機能を実現するために、エアラインのウェブサイトをウェブスクレイピングして映画の情報を取得しているが、エアラインのウェブサイトはデザインの仕様やページ構成が頻繁に変更されてしまう。その都度、ウェブスクレイピングの仕様も変更する必要が生じたが、Pratap と Ryan は、同じような悩みを持っているデベロッパは自分達だけではないと考え、 Kimono Labs のコンセプトに行き着いた。

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Airpapa

Kimono で広がる可能性

Kimono Labs のウェブサイトの、#BuiltWithKimono のコーナーには、Kimono を使って開発された数多くのウェブサービスが紹介されている。中でも面白いのが、Pebble で天気、交通情報、サーバの監視情報をモニタできるようにした API だ。

ウェブにはデータが公開されていても、API は提供されていないサービスは多い。ウエアラブルやモバイルなどデバイスが多様化してくると、データが効率よく加工できることは重要だ。

Twitterがかつて、API は公開しながらも、自前ではモバイルアプリを開発しなかったように、今後、ユーザに見せるインタフェース部分の開発は、デバイスが多様化するゆえ、サードパーティのデベロッパに開放する、という流れは強まるだろう。そして 公開API が無くても、Kimono を使えば、誰でも簡単に、それぞれのデバイスにフィットしたサービスを作ることができる。(Ryan)

ペイウォールの向こう側にあるデータの取得(つまり、有料サイトなどでログインしないと取得できない値の取得)や、ユーザが作った API のマーケットプレイス構築などの可能性を聞いてみたところ、いずれも構想にあるようで、近い将来、リリースされるだろうとのことだった。

特段コーディングの知識が無い小学生が、夏休みの課題でスマートグラス用のサービスを完成させて持って来た、というような事例も今後増えるかもしれない。

#BuiltWithKimono

#BuiltWithKimono

Youは何しに日本へ?

Pratap と Ryan の二人は、ベトナム滞在中に Kimono を開発しローンチした。現在はチーム総勢で都内の民家に AirBnB で宿泊しており、8月末まで日本に滞在するのだそうだ。

スタートアップなので、いつが仕事でいつが休息ということは無い。同じ屋根の下で寝食を共にしているから、思いついたアイデアをすぐにチームに伝えることができる。チームビルティングにも有効だね。グローバルなサービスを作っているので、いろんな市場を知ることは大事で、いつもと違う街に滞在することでチームは刺激を受けられる。

東京の後、どこに行くかって? うーん、チームの皆は長らくホームタウンを留守にしているので、サンフランシスコに戻って、久しぶりに友達と旧交を暖めるよ。(Pratap)

最近、旅をしながら開発を続けるスタートアップが増えている。海外のカンファレンスなどでは、名刺交換したときに「どこを拠点にしているの?」と聞くと、ジョーク半分に「飛行機の上です」と回答する起業家も少なくない。グローバルなサービスを目指すのだから、日々の開発や運営も一カ所に留まる必要はない。

Kimono Labs のチームに興味がある起業家や投資家がいたら、彼らの日本滞在中に気軽に連絡をとってみるとよいだろう。そして彼らが日本のスタートアップ・コミュニティから受けた刺激が、今後の Kimono にどんな影響を与えるか楽しみだ。

“summercamp"/

Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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