「新しい働き方」を担う企業はどうあるべきかーー国内外の4事業者からみるクラウドソーシング事業考

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Image by Flickr

「クラウドソーシング」というサービス、ビジネスモデルは定義が難しい。

例えば世界の課題をオンラインで解決するINNOCENTIVEのようなものもアイデアのクラウドソーシングと言えるし、デザイン作業に特化した99designsももちろんこのカテゴリに入る。

日本国内で言えばリクルートが実施しているC-teamもそうだし、gengoConyacのような翻訳、CrevoViibarといった動画、KAIZEN Platformが提供するPlan BCDはサイトグロースの一部作業にクラウドソーシングを活用することで各方面から高い評価を得ている。

大規模なものだったらAmazonのMechanical Turkという軽作業プログラムも思いつく。

こういった中で敢えてひとつこのカテゴリの「王道」を決めるとするならやはりそれはオールジャンルのマッチングプラットフォーム、ということになるだろう。ーー国内で言えばランサーズクラウドワークスの2社、海外を見渡せば、シドニー拠点のfreelancerと昨年合併を果たしたElance-oDeskが主なプレーヤーだ。

ところでここ数カ月、国内2社は相次いでその事業の成長状態を公開している。私がクラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏に札幌の地で独自取材したのは5月末のことだったが、その時点で吉田氏は年間の流通額(依頼総額、つまり受注が決まっていない依頼された総額ではなく、受注した案件の依頼総額)が年間20億円規模に到達すると明かしてくれた。

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クラウドワークス代表取締役の吉田浩一郎氏

<参考記事> クラウドワークスの年間流通額は20億円規模の見込み #IVS

また、もう一方のランサーズは先頃実施した事業説明会の壇上で2014年第1四半期(4月-6月)の結果として成約額が4億5000万円規模に到達したと公表している。

そこでこれらの情報を元に、海外大手のfreelancer(オーストラリア証券取引所に2013年11月に上場済み)および2013年12月に合併を果たしたElance-oDesk連合(サービスはそれぞれバラバラに継続運営中)の状況を並べてみたのがこの一覧だ。freelancer以外は非公開企業なので数値に幅があることはご了承頂きたい。

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まず目に入るのはElance-oDesk連合の流通額の大きさだろう。日本円で100円換算として930億円規模の受発注が彼らのプラットフォーム上で実施されている。比較的国内組と創業時期も近いfreelancerに関しては日本だけを対象とする国内2社に比較して対象としている市場は広いので、その差はそれほどでもないという見方もできるかもしれない。

また、この規模にいたるまでの時間にも注目したい。Elance-oDesk連合はこの規模になるまで16年(Elance創業時期を起点)かかっている。freelancerが既に上場しているのでそれを参考に考えても、このままのペースで国内2社がこの規模に達するまであとまだしばらく時間は必要だろう。さらにfreelancer社より流通規模で10倍近くあるElance-oDesk連合を視野に入れればさらに時間は必要になる。

国内2社についてはどのタイミングで市場範囲を拡大(海外展開含め)して成長率を上げるか、が注目点だ。

さらに過去、2社をインタビューして理解できたのは新しい働き方への理解を得る難しさだ。詳細は下記の記事をぜひご一読頂くとして、特に発注側の体制は人員を投入してフォロー体制を作るなど、完全にフリーハンドでマッチングが自動的に発生するとは言い難い状況になっている。これは2社とも同じ課題を抱えている。

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ランサーズ代表取締役の秋好陽介氏

<参考記事> 1万人がクラウドソーシングで”食える”世界に立ちはだかる「見えない壁」ーーランサーズ秋好氏に聞く #IVS

率直に言ってこのビジネスが明日、1カ月後、半年後、1年後に倍々ゲームで拡大していくイメージはなかなか持てない。また手数料ビジネスの利益率の低さはどうしても目立ってしまう。

そういった困難があったとしても、この事業の社会的意義はとても大きい。本当に時間と場所に縛られない、さらに会社員でもなく派遣社員でもない第三、第四の働き方が成立すれば、大げさかもしれないが、人の生き方も変えることができるからだ。

つまりここに並べた数社が作っているのは数十人、数百人が働くクラウドソーシングのサービス提供会社ではなく、数百万人の生活(の一部)がかかっている「街」のようなものと想像してもいいかもしれない。私企業の一存で手数料は上げ下げできるが、生活がかかる税と考えれば、そう簡単に調整はできなくなる。株式市場の圧力に負けて税金が上がる街には誰も住みたくないはずだ。

国内2社はこの先、これらの課題をどうクリアして新しい働き方の文化と事業を作っていくのだろうか?

  • 新しい働き方を生み出す上で事業体をどのように成長させるのか?
  • 働き手とどのように対話し、コミュニティをつくっていくのか?

そこには会社を上場させて社会の公器とするステップも当然含まれる。後半では2社の代表にインタビューを実施し、彼らが作ろうとしている新しい働き方とそのコミュニティのあり方について考えを深めたいと思う。

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