スタートアップという村のお話

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Peter_Thiel
credit: Heisenberg Media via FindCC

<ピックアップ>Meet The PayPal Mafia, The Richest Group Of Men In Silicon Valley

シリコンバレー創世記についてはFairchild Semiconductor社から生まれた「反逆の8人」が知る人ぞよくよく知ってるお話として有名ですが、それよりももっとポピュラーな人たちがこの「ペイパルマフィア」と呼ばれる面々でしょう。創業者のピーター・ティール氏、イーロン・マスク氏、マックス・レヴチン氏らを筆頭に、改めて全員のプロフィールがまとまっていたので眺めてみたのですが、ため息しかでないですね。

それぞれが生み出した企業の価値が戦闘力よろしく掲載されているのですが、合計すると240億ドル(100円換算の日本円で約2兆4000億円)以上と、どこかのマクロ市場規模リサーチの数字を見ているようで意味が分かりません。人間ってこれだけのものを作ることができるんですね。ちなみにその約半分近くは先日、ラーメン二郎で舌鼓を打ったとされるイーロン・マスク氏(97億ドル)です。

このようにたった十数年、下手をすれば数年でこのような成長を果たすスタートアップ・投資の世界ですが、華やかに映る反面、これらは当然のことながら山のような失敗の上に咲く一輪の花であることを忘れてはいけません。

つい最近もあのTwitpicが突然の閉鎖を宣言、「保存してる写真どうするんだよ」というひと騒動の後に買収が決まり、運営続行というなんとも言えない出来事があったばかりでした。このように結構有名なサービスであったとしても生き残るのは本当に極僅か、大概は人員買収されてサービスは消えるか、人知れず消えてゆくかのどちらかです。

スタートアップという村

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credit: NinaZed via FindCC

外見はキラキラしててもしかしたら憧れのようなものを抱く人たち(もちろん、成功者もいますが)もいらっしゃるかもしれない「スタートアップ」の現場ですが、洋の東西を問わずその実態というのは前述の通り「一握りの成功者と大量のその他多数」で成り立っております。

全員成功すると思ってる人たちばかりですから、当然人間関係はあれこれ発生してきます。

米国版匿名ダイアリー、Startup Anonymousで見つけたこの話題は、なんというかパーティーに参加しきれなかった起業家(もしくは投資家かな)の嫉妬の匂いがほのかに香り立つ一本でした。書いてあるのはまあ、アレです、一言で言えばスタートアップ界隈特有の村みたいな馴れ合いの話題、といった内容と言えばいいでしょうかね。

国内はどうでしょう、私がみる限りみなさん落ち着いて仕事をされているとは思いますが、外から見るともう少し閉じたり、華やかな印象があるのかもしれません。

ただ、資金調達の話題は若干浮かれ気味という声はよく聞きます。大型のものが増えてきていることもあって、いくつかの投資系との話の中で「明らかに高杉」というワードを何度も耳にするなど、シード期の売上はもちろんのこと、事業モデルもなにもない状態で10億-15億円の評価額でシート用意されても困るだけ、というのは理解できます。

不思議なことにそれでも調達は決まっていくんですよね。

すごい短期間で投資した金額を数倍、場合によっては数十倍のリターンとして回収するのですから、どこかに無理が生じて外野が「虚業だ!」と叫びたくなる気持ちも理解できなくはありません。

また、この話題の最後の方にもありますが、みんなでキャッキャウフフしてるスタートアップ界隈みたいなのには近づかず、自分の顧客とビジネスに注力し、資金調達なんか気にせず、売上のことを気にかけなさい、他の起業家や投資家とつるむんじゃなくて、友人と家族を大切にしなさい、というのは正論過ぎて直視がなかなか難しいです。

これ書いた人、投資に失敗したとかよっぽど何か嫌なことあったんでしょうね。

投資家と起業家の関係

スタートアップ絡みでもうひとつ、私も国内シードアクセラレーター、インキュベーターを取材して回りましたが、この質問は実は奥深いです。

What entrepreneurial experience do you have? How have you earned the right to advise me on the growth of my company?
Startups Anonymous: What Every Founder Should Ask An Accelerator via PandoDaily

本来、経験値や知識がある人がない人に対して教える、というのが教育現場の関係値だと思います。しかし、起業の現場では必ずしもそうならない場合があります。つまり、育成者と起業家の関係ですね。

どうしても教育という概念でいうと先生と生徒のようなイメージがつきまとってしまうのですが、年齢も場合によっては育成者の方が下、なんてこともありますし、起業家の方がイグジット経験あって育成者よりも経験値が高そう、なんていうこともあります。

逆にここまでオールスターが勢揃いすると平身低頭して「教えて頂いてありがとうございます」と言えるのですが。

よい関係性を持っている起業家と投資家をみていると、やはり対等というか、同じ土俵で話をしているなという雰囲気を感じることが多いです。逆に金を貸してもらってる、お前たちに(イグジットで)儲けさせてやるといった考えが透けてみえる方というのは、やはりマネーゲーム信者(もしくは洗脳された人)なのだなと思います。これはこれでこの投資の現場特有の考え方なので否定はしませんけどね。

バランスを崩しやすい起業の現場だからこそ、自分を上手くコントロールできる人が生き残るのだなと改めて思います。

via Tech

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