北海道から世界へ−−全国Startup Day in 札幌が開催。グランプリはクラウドによる酪農・畜産業のIT化のFarmnote

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全国各地の起業を促進するため、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが企画している「全国Startup Day」。前回の大阪に続き「全国Startup Day in 北海道」が開催された。三連休の中日である9月14日開催にも関わらず、100人以上もの参加者が集まった。今回は、共催として小樽商科大学ビジネス創造センターが務めた。

まずはじめに、北海道発の起業家やVCらによるパネルディスカッション、その後北海道を拠点に活動しているベンチャー企業8社によるピッチが行われた。

ビジョンに人をワクワクさせられるか

左から、玉木氏、岡氏、渡辺氏、中垣氏、村田氏によるパネルディスカッション。
左から、玉木氏、岡氏、渡辺氏、中垣氏、村田氏によるパネルディスカッション。

「IPO起業家・著名ベンチャー・キャピタリストが語る、成長ベンチャーを生み出す秘訣とは?」と題したパネルディスカッションには、ムラタオフィス代表取締役の村田利文氏、Drpater Nexus Venture Partnersマネージングディレクターの中垣徹二郎氏、ジャフコ北海道支社長の渡辺正人氏、IMJ Investment partners Japan Office Managerの岡洋氏、モデレーターにサムライインキュベートの玉木諒氏が登壇した。

シリコンバレーと日本で投資を行っている中垣氏。現在投資対象として見据えているのは日本から世界に活躍するベンチャーを育てたいという意識だ。グローバルの時代では、コピーやタイムマシン経営ではなく、世の中のニーズを汲み取り、それに対してのソリューションかどうか。長期的な視点と目先の具体性をもった人であってほしい、と起業家たちに話をした。

おもにシードやアーリーステージのスタートアップに投資を行っている岡氏。まだまだユーザがつき始めてきたサービスであるからこそ、起業家は目をキラキラさせてサービスやビジョンについて語ってほしい、という。「ビジョンなきは社員も、ユーザも、VCも付いてこない」と語り、アウトプットそのものよりも思いをいかに熱く伝え、VCたちがワクワクするかが重要だと語る。

こうしたポジティブな投資判断がある一方、失敗する投資の数多く存在する。実際に、北海道から起業し、IPOを達成した経験がある村田氏。90年代に起業したスタートアップの先駆けとして存在する同士は、道内では偉大な先輩起業家として、若い世代の起業家にとって参考になる存在だという。その村田氏は、「投資がなかったら事業を続けることはできなかった」と語る。R&Dに力を入れていたプロダクトであり、そうした技術力で勝負するためには、長い時間とお金が必要で、その思いを理解してくれた投資家たちの存在は大きいと語る。

投資は結婚と同じ。いい人間関係を築くことが大切

ジャフコの渡辺氏は、長年地方の投資案件に携わった人物だ。村田氏のような成功事例だけではなく、多くの失敗を経験してきた。その経験の中で「投資は結婚と同じ。結婚したての入り口では盛りあがるが、それが5年10年といったスパンで良い関係を構築し、二人三脚で突き進めるかどうかが重要だ」と指摘する。中垣氏も99%は投資を断るケースもあるという。

また、投資後も事業が起動に乗らず別れを強いることもありうる。そうした時にも、悪い関係で別れてしまえばその後の起業活動にも影響を及ぼす。「起業に失敗はつきもの。だからこそ、粋な別れをしてもらいたい。投資が解消しても関係性は消えないのだから」と、投資以前、投資中、投資後といったさまざまなフェーズにおいて、人間関係の重要性を指摘した。

それぞれのVCたちからは、「道内、ということを忘れること」(岡氏)、「北海道の人たちは、飢餓感が足りない、もっとガツガツしなければいけない」(中垣氏)、「一流の人達と付き合い、常に高みを目指そう」(渡辺氏)といった応援のコメントも寄せられた。

起業志望の学生からどうしたら一歩を踏み出せばいいか、といった質問に対しても、村田氏は「自信とスキルは関係無い。何かが足りないから起業できないわけはない。まずは行動すること、やりながら考えていけば道は見えてくるし、熱い思いを持っていれば、北海道含めて起業家をさまざまな人達が支えてくれる」と、激励のコメントを寄せた。

自社の悩みや、北海道が抱える課題を解決しようと挑戦するスタートアップ

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ここでは、ピッチを行った8社のうち、評価の高かった3社を紹介する。グランプリを獲得したスタートアップは、2015年3月に東京で開催予定の、各地の全国Startup Dayでグランプリを獲得した企業たちによるファイナルピッチへの出場することができる。

酪農・畜産クラウドFarmnote(ファームノート)(グランプリ)
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酪農・畜産クラウドFarmnote」は、牛の活動履歴をクラウドに記録し、牧場の状態をいつでもどこでも確認できる酪農・畜産業×ITの分野のサービスだ。これまで、牛の個体管理(出産や発情期、種付けの日付など)はデジタルではなく紙やホワイトボードなどのアナログで管理を行っており、データを活用した経営ができていなかった。そこで、それまでのノートをデジタル化し、見える化を図ることが狙いだ。これにより、病気の早期発見や適切なタイミングでの繁殖の予定を組むことができる。

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全国の90%以上の酪農家は100頭以下だということから、100頭以下の牧場は無料で利用してもらう予フリーミアムモデルを進めていく。今後は、センサーデバイスを活用したデータ活用や、世界14億以上もの酪農の牛のデータを集め、それらをもとに適切な酪農経営を行うためのサポートを行う。7月からトライアルをはじめ、アンバサダーとしての酪農家と協力しながら進めていく。

ファームノートを運営する小林晋也氏は、北海道を拠点にCMSソリューションサービスを提供するスカイアークを10年ほど経営しているベンチャー経営者で、今回の新サービスをもとに二社目の経営と、新しい事業として事業展開をしていきたいと語った。

クラウド勤怠管理アプリシュキーン(インフィニットループ)(サムライ賞)
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クラウド勤怠管理アプリシュキーン」は、NFCを使ってSuicaやPASMOといった交通系カードなどを用いて出退勤といった勤怠記録をスムーズにするアプリだ。使い方は、読み込みが可能なAndroidなどのタブレットやスマートフォンを用いて、カードをかざすだけだ。データをクラウド化することで、リアルタイムに情報を管理し、煩わしい月末処理も容易となる。運営するインフィニットループは、『ブラウザ三国志』などのブラウザーゲーム、スマートフォンアプリを開発する100名を超えるベンチャーで、自社の悩みからクラウド勤怠管理アプリの開発に着想したという。今後は、残業の確認などのオフィス機能だけでなく、多様な働き方にあった勤怠機能や、出勤をより楽しくするためのゲーミフィケーションなどの要素を用いて機能をアップデートすることも予定しているという。

IKEMEN -いつものお店選びにちょっとしたときめきを(ときめきサプリ)(トーマツ賞)
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IKEMEN―いつものお店選びにちょっとしたトキメキを」は、飲食店などのイケメンオーナーや店員マップ、インタビューなどを掲載した店舗情報アプリだ。掲載されているお店に行くと、アプリ内で「キュン投票」を行うことができ、部屋に閉じこもりがちな女性を外に連れだすO2Oサービスと言える。オーナーや店員個人に紐付いたファンを形成することが狙いだ。今後は、さまざまな企業とのタイアップなどを行ったり、さまざまな視点からイケメン飲食店情報を提供するメディアを立ち上げていきたいという。

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