Y-Combinator卒業生が語る「プロダクトや時代に合った最適なグロース」とは?

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Traction社CEO、KenZi Wang氏

9月17日、グロースエンジニアリングのスピーカーとして著名なTraction社CEOのKenZi Wang氏を招いたミートアップイベントがOpen Network Labにて実施された。Wang氏の会社は500Startupsの後に、Y-CombinatorとDisney Acceleratorへ参加。Growthathon(ハッカソンのように短期間でユーザー獲得施策の企画を作る大会)の主催者としても知られている人物だ。

イベントではWang氏がスタートアップにとって効果的なグロースハックの方法について紹介した。

シリコンバレーと他地域で異なる「グロース」の定義

そもそも「グロースハッキング」はQualaroo社CEOのSean Ellis氏が作りAndrew Chen氏がブログで使ったことで一気に広がった言葉。この言葉自体は非常に受けがよく、早い段階のスタートアップから大手まで使われるようになったが、次第にグロースという言葉の意味がシリコンバレーと他の地域では違っていることにWang氏は気づくことになる。

シリコンバレーのグロースは、より戦略的でプロダクトの実行にかかわる行動を指しており、グロースに関わる人は高い給料をもらいプロダクトの中心人物であることが多い。一方で他地域のグロースはお金を払ってユーザーを獲得したり、一般的なマーケティングを指すことが多い。また、このような業務の人は社外の人間や組織の中心人物でない1スタッフという場合が多い。

リピートに繋がらない施策は意味が無い

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よくあるケースとして、メディアに紹介されることで一時的にトラフィックが急増するも、そのサービスがプロダクトマーケットフィット前だったために、数日後一気にユーザーが離れていってしまう、という例だ。

「プレスへのアプローチやRedit、Hacker News、イベントの開催などをするなと言うわけではないが、ユーザーがリピートしてサービスを使ってくれると確信できたフェーズで実行した方が良い」(Wang氏)。

プロダクトのカテゴリごとに適切なグロースのチャネルを選択すべき

グロースハックにおいて、プロダクトの種類ごとに適切なチャネルを選択しなければ正しい効果を上げることができないとWang氏は語る。グロースのチャネル別に高い効果を上げた事例を紹介してくれた。下記に整理してご紹介する。

SEOーーメディアやECサイトで高いパフォーマンスを発揮

グロースにおいて、Rap Geniusが最もSEOを上手く活用している。Rap Geniusはミュージックシーンの中で特にヒップホップの歌詞を多く扱うメディアだが、Googleで歌詞を検索すると高い確率でRap Geniusのコンテンツが表示される状態になっている。これはRap Geniusのコンテンツが検索されやすい構造で作られているためで、それにより多くのユーザーが検索エンジン経由でRap Geniusを知っていくという良い流れが生まれている。

紹介プログラムーーB2Cサービスやゲームで高いパフォーマンスを発揮

Dropboxが友達紹介プログラムを活用し高い効果を挙げている。Dropboxはサービスを友人に紹介することで自分と友人双方が500MBの追加容量を貰えるキャンペーンを展開し初期に人気を博した。自分だけでなく相手にもインセンティブを与えるプログラムだったため、効果の高い紹介プログラムとして機能しユーザー数増加に寄与した。

ソーシャルでの共有ーー写真/動画共有アプリで効果的

写真共有サービスがコンテンツの配信チャネルとしてFacebookやTwitterをよく活用している。特に、Instagramがソーシャルを活用することでユーザー獲得に強い力を発揮した。初期のInstagramは写真加工後、SNSにシェアさせることが機能として必須の仕組みとなっていた。強制的にInstagramのコンテンツを共有させることが初期で多くのユーザーの獲得する要因となった。

ゲーミフィケーションーーリピート率向上に効果的

LinkedInは非常にパフォーマンスの高いグロースチームを社内で持っており、ゲーミフィケーションの仕組みを上手に活用している。例えば登録後自分のプロフィールを入力するときに、青いバーを表示することでどの程度入力が進んでいるか認識させたり、「あなたの知り合いがこの人と繋がりました」といった通知等、ユーザーにサービスを継続的に使わせるモチベーションを数多く与えている。一般的にゲーミフィケーションはサービスのリピート率を高める為に効果的である。

コンテンツマーケティングーーメディア、B2C、エンタープライズで効果的

コンテンツマーケティングは質の高いユーザー獲得を効率的に獲得できる方法で、自分たちのコンテンツを届けるためのインターナルな仕組みを構築し、ブロガーやインフルエンサーを囲い込みプロダクトの紹介を書いてもらう。

Pinterestが非常に上手く実現しており、グロースチームがママさんブロガーを特に数多く囲い込むことで良いサイクルを生んでいる。コンテンツマーケティングにより獲得したユーザーの獲得率や定着率は広告と比較すると高い傾向にある。また、多くの費用を掛けずに済むという利点がある。

EメールマーケティングーーFacebookで高い効果を発揮

昔からよくある手法だが、Facebookがリテンションの向上とユーザーの新規獲得において効果的に活用している。特にEメールマーケティングがよく使われるのが、サービスへのサインアップ直後。

サービスに自分の友達が登録したらすぐにメールが来たり、友達のアクティビティにも通知が来る仕組みとなっている。Facebookのグロースチームにはメールを活用しユーザーを獲得するミッションが課せられているため、数多くのメール施策が試されてる。

時代ごとに高い効果のチャネルは移り変わっている

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各時代ごとに、流行になるメディアやコンテンツ配信の方法が出てくる。ただし、そのアテンションが増えるとユーザーのエンゲージメントは下がる傾向にある。例えば過去に新聞やTVに広告が配信され、初めは有効だったが次第に広告に反応するユーザーのテンションが下がってきた。そして最近ではそれをWEBの世界でみることが増えてきた。

一番最初にディスプレイ広告が登場した際はユーザーのアテンションを取ることに成功したが、今では広告だと分かりきっているためクリック率が減少してきている。SEMや検索連動型広告でも同様のことが起きている。このように時代ごとに効果的なチャネルの移り変わりが早くなってきており、モバイルやSNSもいずれ同じ状態になるだろう。時代に合った新たしいチャネルを探し続けることがグロースにおいて重要である。

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