SmartNewsはただのニュースアプリなのか? 1億米ドル以上の評価額が付く理由

by Tech in Asia Tech in Asia on 2014.10.28

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左より鈴木 健氏、浜本階生氏、Rich Jaroslovsky氏

日本のニュースアプリは終わりが見えない戦争中だ。この中から勝者として勝ち上がってきそうな有力候補のSmartNewsは、既に日本人以外のユーザの獲得でその地位を強固なものにしようとしている。同社は今月初めに英語アプリをローンチし、サンフランシスコのDigital Garageオフィスに居を構えた。

Tech in Asiaは創業者の浜本階生氏と鈴木 健氏、そしてかのWall Street Journalのオンライン版を立ち上げた大物メンバー、Rich Jaroslovsky氏に会い、同社のこれまでの歩みとグローバルなメディア企業への移行、将来の計画について話を聞いた。

総ダウンロード数500万件でSmartNewsはGunosy(600万)に遅れをとるが、Antenna(400万)よりも多い。これはFlipboardの1億超のユーザと比べると取るに足らないように見えるかもしれないが、ニュースおよびキュレーション系スタートアップは現在日本で大きな注目を集めている。

これらの会社は規模は小さいが決して無視してはいけない。勝ち馬に賭けた投資家は自慢する権利以上のものを手に入れることになる。彼らは次の金のなる木の根っこを手に入れるのだ。

長年Yahoo Japanは何百万人もの日本人にとっていきつけのウェブサイトとして存在してきた。新しいアプリが狙うモバイル空間では、Yahoo Japanは毎月3800万アクティブユーザを集めている。彼らはYahoo Japanをウェブ全体へのポータルとして利用していて、ニュース、天気予報、スポーツ、eコマースなどの情報にアクセスしている。

同社のポータルサイトとしての地位は数多くのタイアップ広告と健全な収益をもたらしている。Yahoo Japanは昨年広告事業により808億円(7億5300万米ドル)を得た。

王者を引きずりおろそうという競争は始まっている。KDDIのような大企業はトラフィックを引き寄せるためにスタートアップに重点を置いたアライアンスを形成している。ニュースやキュレーションに特化したスタートアップは豊富な投資機会に恵まれている。

SmartNewsはこの流れに乗り、9月の投資ラウンドで3600万米ドルを獲得した。2大投資家であるグリーとAtomicoは総評価額について堅く口を閉ざしているが、Tech in Asiaが浜本氏に確認したところ、同社は現在1億米ドル以上の価値があるということだ。

投資家は、SmartNewsの順調な成長ぶりを喜んだ。2月にはダウンロード数が300万件に達し、その内の75%は月間アクティブユーザ(MAU:毎月利用するユーザ)で38%がデイリーアクティブユーザ(DAU:毎日利用するユーザ)だった。9月末時点には、ダウンロード数は500万件にまで達した。

浜本氏によると、ダウンロード数全体に関してはかつてない程の速さで増えているが、MAUとDAUのパーセンテージは共に2月時点よりほんの少し低くなっているそうだ。つまりSmartNewsは、MAUで375万件弱、DAUで190万件弱であるはずだ。アーリーアダプター(初期採用者)に影響されたライトユーザ(冷やかしレベルのユーザ)数の伸びがこの一時的な落ち込みの原因になったと彼は見ている。

SmartNewsは近いうちに大きな新しい収益源を立ち上げる予定であり、この点もおそらく投資家たちの共感を呼んだと言える。同社は12月から独自のネイティブ広告ネットワークをローンチすることになっており、既に営業パートナーとしてソーシャルネットワークとゲームの大手ミクシィと手を結んでいる。

パーソナル化における手探り

現在のSmartNewsは良好な評価価値を受けて順風満帆であるが、この状況に至る前には一度大きなフライングを経験している。2010年に浜本氏が企業勤めを辞めて独立した後、ソーシャルメディア向けのリアルタイムウェブクローラーを作成した。このプロジェクトについて鈴木氏と話し合っている間に、彼はこのプロダクトがさらにニュース情報を集めることに焦点を当てるべきだと気がついた。そして彼はそのサービスを構築し、Crow’s Nestと名づけた。

Crow’s Nestは2011年のTechCrunch Tokyoにおける準優勝を始め様々な賞を受賞したが、ユーザの引き留めや新規ユーザの獲得に失敗した。SXSWへの出展すらもその流れを変えることはできなかった。

しかし浜本氏と鈴木氏は良い技術を持っているとまだ信じ、再起することを決めた。Crow’s Nestは個人の好みに力を入れていたが、新しいプロダクト – 後のSmartNews – は利用する全ての人にとって重要な情報を収集した。

改良されたプロダクトもその日の大きなストーリーを見つけるためソーシャルメディアをクロールするが、今度はより高度なアルゴリズムと自然言語処理(コンピューターに言葉のニュアンスを理解させる技術)を使い一般的に重要なニュースを分類、ランク付けする。

この違いがユーザにとっても大きなものであり、SmartNewsはAppleとGoogleから2013年のトップニュースアプリに選ばれた。その称賛が本物であることは、同社の最近の評価額が示している。

SmartNewsはアメリカにいたJaroslovsky氏をはじめ、多くの人の注目を集めていた。Jaroslovsky氏はこう話す。

「『デイリー・ミー』という、個人的な興味に合わせ個人向けに超カスタマイズされたニュース報道という概念は究極のテーマでした。しかしそれは虚構であったという結論に多くの人は達しつつあります。人が前もって知っておきたいだろうということと、実際に興味を持つことは、全く異なることもあるのです」。

Bloombergの前エグゼキュティブエディター、Wall Street Journalオンライン版の編集長として、ジャーナリストとしての評価が非常に高いJaroslovsky氏はちょうど友人がSmartNewsを紹介してくれた時、新しい道を模索している最中でもあったのだ。

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思わぬ発見を探す

「私がもっとも興味深いと思ったのは、SmartNewsは1人のオーディエンスにアピールするためでなく、より幅広いユーザにアピールするように設計されているということです。デジタルメディアで難しいことの1つに、思わぬ発見を提供するということがあります。『こんなことに自分が興味があるとは思わなかったけど面白い』というユーザ体験です」。(Jaroslovsky氏)

そのような体験を提供するには技術だけでなく利用可能なデータが必要だ。SmartNewsチームは既に技術を持っているが、メディアで飽和したアメリカ市場を、商品強化と価値の最大化へのステップにできると考えている。「私たちはグローバル企業を目指していますので、アメリカの後はイギリス、カナダ、その他各国でローンチする予定です」と鈴木氏は話す。

SmartNewsはアメリカで華々しいスタートを切った。Appleの新たな目玉アプリとして取り上げられるやいなや、新アプリの中でベスト2に急上昇した。当初のダウンロード数の勢いは幾分冷めたものの、チームは登録者数をいまだ上昇傾向に保ち、同アプリはベスト10に留まっている。

アメリカ国内で認知度を高める戦略として、Jaroslovsky氏の役割はより多くのコンテンツプロバイダーに参画してもらうこと、またコンピューターをより優秀なジャーナリストに育てることだ。5人からなるチームの誰か1人が毎日、ランキング記事にエラーがないかチェックするのだ。

今夏の顕著な例として、アメリカで最も力のある政治家の1人Eric Cantor下院議員が予備選で予期せぬ敗北をしたというニュースがあった。これは最初SmartNewsでトップニュースであったが、数時間後、ライバル候補者のプロフィール情報が脚光を浴びていた。Jaroslovsky氏はランキングを修正し、Cantor氏敗北のニュースをトップに据えた。彼にとってはこれこそがその日の本当のニュースであり、その他は重要ではあるが補完的な情報にすぎなかった。

SmartNewsのアルゴリズムは、人々が読むべき内容を決定する方法はわかっているかもしれないが、適切なニュースサイクルを作り出すにはJarovlesky氏の作業をまだ必要としている。自動のニュース情報収集やニュースサイクルの設計を実行できるプログラムは、現実にある仕事を奪ってしまう1つの有力な候補であるように思える。

今でも活字からデジタルメディアへの「胸の痛くなるような」移行のことを覚えているJaroslovsky氏は、独自の考え方を持っている。「私が話をした出版社という出版社は、今年が(デスクトップパソコンからモバイルへの)転換点であると言っていました」また、ほとんどの出版社は来るべき変化の中で生き残ろうと先を急いでいるという。

彼がSmartNewsに加わったのは、この業界が再び同じような混乱の中を行き交うのを目にしたくなかったからだ。

「この20年間私のモチベーションを支え続けてきたのは、ジャーナリズムには未来があること、また真剣な仕事をしようとしている出版社やコンテンツプロバイダーが生き残れるだけのオーディエンスにアクセスできること、という2つの点を確実なものにしたいというものでした。SmartNewsは出版社に非常に好意的です。(中略)出版社に未来への道をもたらすものだと思います」。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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