中部からTOYOTAに続く会社を目指せ!サムライ榊原氏による出資先のぶっこみもあった「全国Startup Day in 中部」

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全国各地の起業を促進するため、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが企画している「全国Startup Day」。大阪、札幌と開催してきた同イベントは今回愛知県の名古屋で開催された。

「全国Startup Day in 中部」では、中部地方発の起業家やベンチャーキャピタリストらによる「成長ベンチャーを生み出す秘訣」をテーマにしたパネルディスカッション。その後、中部地方を拠点に活動しているベンチャー企業7社によるピッチが行われた。

パネルディスカッションのモデレーターには帰国中の榊原健太郎氏が登場。47都道府県のすべてを巡り、各地のスタートアップに投資を行い、東京を含めて約200社に投資をする予定であること、イスラエルでは2年間で約50社であることを冒頭で述べ、パネルディスカッションがスタートした。

パネルディスカッションでは、オプトのCVCキャピタリストを務める菅原康之氏、ジャフコのシニアアソシエイトを務める高原瑞紀氏、トーキョーストーム代表取締役の大沢香織氏の3名がゲストとして登壇した。(トーキョーストームが提供している「おてつだいマジック」は以前本誌でも取り上げている)

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榊原氏「投資したいと思わせる起業家はどんな人ですか?投資をする際に一番重要視してる点は?」

高原氏「事業はもちろん、社長のひととなりを見ますね。事業は社長の人生に大きく左右されると考えています。自分はこの社長と仕事をしたら面白そうかなと思えるかどうかを見ています。」

オプトの菅原康之氏
オプトの菅原康之氏

菅原氏「私達はCVCという特徴があります。人と事業を見るという面は多くのVCと変わらず、嘘をつかない、約束を守るなどの面を見ています。事業を見る際は市場は十分大きいかどうか、参入のタイミングは今が正しいのか、KPIはこれでいいのかなど、細かくチェックしています。これは自分たちも事業を手がけているCVCの特徴なのではと思っています。」

榊原氏「人となりという面で思い出したのが、イスラエルで最初のベンチャーキャピタリストだという人。その人が投資判断の際にリーダーシップの有無をチェックしているそうです。ホームパーティをするときなどでもよくて、生活の様々なシーンでリーダーシップを発揮しているかどうか。これはみんなが嫌がることを率先してできるかだと思っていて、こうした力は起業家には大切なのではと思いますね。」

左:榊原氏 右:大沢氏
左:榊原氏 右:大沢氏

榊原氏「ぶっちゃけ、VCから投資を受けてよかった点は何ですか?」

大沢氏「うちは受託で開発をしていたので、資金は自分たちで稼げる状態でした。なので、資金を集めるというのは投資を受ける一番の理由にはなっていませんでした。なので、出資を受ける際はこの人と一緒に会社をやってみたいと思えるかどうかを考えるようにしました。

あとは、そのベンチャーキャピタルのエコシステムに入ることによるメリットもあります。同じVCから出資を受けている他の起業家の人にアドバイスをしてもらえたり、どこかがキャッシュがなくなりそうだったら仕事を発注してもらえたり、といったことがあります。」

榊原氏「逆に困ったことは何かありました?」

大沢氏「投資家はパートナーなので、本来はどちらが上で、どちらが下といった関係ではありません。ただ、受託の仕事をしていたせいか、クライアントのように接してしまうなど、過剰に反応してしまうこともありました。もっと自分のやりたいことに注力すべきだったな、と今では思います。」

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榊原氏「投資家の視点から投資を受けるメリットをお話していただいてもいいですか?」

高原氏「ジャフコはこれまでに様々な会社に投資をしてきており、その分失敗のノウハウが溜まってきています。そのノウハウに触れられることはメリットかなと思います。また、コミットする投資、たとえば採用から一緒にやるなど、会社に常駐するような投資の仕方も行っている点も特徴かなと思いますね。」

菅原氏「北米でも起こっているように、事業投資が増えています。出資を受ける以上、イグジットを考えないといけない。イグジットのあり方がIPOだけではなく、事業会社への売却も増えてきています。オプトはイグジット先としても窓口を開けていますし、また幅広いオプションの中でオプトのアセットを活用できることもメリットではないかな、と思います。」

榊原氏「大沢さんは岐阜に開発拠点を置かれてますよね。そうすることのメリットはなんですか?」

大沢氏「東京はエンジニアがいません。IT業界全体でもそうで、スタートアップだとなおさらです。地方にはエンジニアがいます。しかも、能力はあるけれど、東京には興味がないという人。地方のほうは人が採用しやすいと考えています。それは、地方のエンジニアは適正に評価されていないから。彼らを正当な評価で働けるようにしたいと思い、東京のエンジニアの単価で雇っています。」

地方におけるエンジニアの状況や採用に関する点は興味深い。開発の拠点を日本の地方に持つという発想が活かせるスタートアップは他にもいるのではないだろうか。

中部地方のスタートアップによるピッチ

パネルディスカッションが行われた後は、中部地方のスタートアップ7社によるピッチが行われた。ピッチの評価は以下の4つの視点から行われた。

  • アイデアの新規性、着眼点のユニークネス
  • 実現可能性、戦略
  • 市場成長性
  • ピッチのわかりやすさ、アピール力

登壇したスタートアップは、

  • カーリル – 日本最大の図書館蔵書検索サイト
  • ソラビト – 世界中の建設機械の売り手と買い手をつなぐマッチングサービス「Mikata」
  • タイムカプセルソリューション – プロスポーツチームのファン向けスマホアプリで地域活性
  • ドットネット – デジタルテレビのデータ放送を活用したテレビコマース
  • FunPlace – CRMなどにも注力する犬のトリミングショップ
  • ユニファ – 保育士が撮影した我が子の写真を保護者が確認できる写真サービス「るくみー」
  • ワングルーブ – 人力レコメンデーションとコミュニティ構築を目指す音楽アプリ「Livees!」

の7社。ここでは賞を受賞した3つのスタートアップを紹介する。

3位 カーリル(トーマツ賞)

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3位に入賞し、トーマツ賞を獲得したのは日本最大の図書館蔵書検索サイト「カーリル」を運営するカーリルだ。どこの図書館でどの本が貸し出されているのかをリアルタイムに把握することができる。

複数の図書館の蔵書をまとめて検索でき、現在全国6400感以上の図書館に対応している。これは公共図書館の約93%を網羅していることになるそうだ。さらに、大学図書館も8割以上対応しているという。

現在では、どこにどの本が置いてあるのかを探すことができるような書架のナビゲーション機能も開発しており、実証実験を名古屋大学で開始しているという。

このように最初は想定していなかったことも動き始めているという。同社は蔵書の検索に留まらず、図書館に関わるあらゆることに対応していく新しい公共サービスを作る会社だと自分たちを捉えている。

2位 ソラビト(サムライ賞)

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ソラビトは世界中の建設機械の売り手と買い手をつなぐマッチングサービス「Mikata」を運営している。

建設機械のマーケットは、買取会社側も売りたい側もなかなか相手を見つけることができないという課題があった。また、これまで建設機械はオークションなども開催されていたが頻度は2ヶ月に1度であるなど、売りたいときに売れなかったという。

「Mikata」はそうした人々にいつでも売れる環境を提供するサービスだ。同サービスはレンタル会社向けとなっており、スマホ、タブレット、PCに対応しており、いつでもどこでも利用可能となっている。ユーザは項目にしたがって情報を入力していき、買取会社を選択すると出品が可能となる。

ソラビト代表の青木 隆幸氏は、BtoBマッチングの領域に可能性を感じており、「働く機械の阿里巴巴(アリババ)を目指したい」とコメントした。なおソラビトは、榊原氏によるぶっこみの対象となり、出資のオファーを受けていた。

グランプリ ユニファ

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グランプリを獲得したのは、「るくみー」という写真サービスを運営するユニファだ。子どもの写真を撮影したり、家族を対象とした写真サービスはいくつか登場しているが、「るくみー」の特徴は、写真を保育士が撮影し、全自動でサーバーへ送られ、画像認識の技術を活用して整理されるという点だ。

「るくみー」は保護者は自分の子どもの写真を保育士に撮影してもらい、保護者もアプリをダウンロードすることで写真を閲覧することが可能になる。これは園児の成長の記録への活用ができ、保育園だよりとしての機能も果たす他、保育園からの連絡も受けられる保護者との連絡ツールとなっているという。

現在、「るくみー」は114の保育園が利用しており、約3万人のユーザがいるという。全国に保育園は5万箇所存在しており、ユニファは約1000億円の市場規模があると見込んでいる。それだけではなく、今後は母親が撮影した写真を両親に見せられるようにするなど、家族ポータルメディアを目指してサービス領域を広げ、さらに海外での展開も視野に入れているという。

グランプリを獲得したユニファは、2015年3月に開催される各地域から選抜されたスタートアップが集う「全国Startup Day」への出場権を獲得した。

入賞したスタートアップたちはどこもひとつのニーズを抽出し、そのソリューションを提供することに注力しながらも、周辺領域への展開を見据え、スケールを大きくしていく印象があった。

日本全国で開催されている「全国Startup Day」は、次回11月さいたま市で開催される予定だ。さいたまからはどのようなスタートアップが登場するのだろうか。

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