「物議を醸す場所にこそ、ビジネスチャンスがある」——サン・マイクロシステムズ共同創業者Scott McNealy氏が語る、起業成功の条件〜ITV起業塾から

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伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(以下、ITVと略す)では、同社の投資先スタートアップの経営者を対象に「ITV起業塾」という勉強会を定期的に開催している。これまでにマネックスの松本大氏や Fab.com CEO Jason Goldberg 氏など錚錚たる顔ぶれが講師として招かれている

今週、都内で開催された「ITV起業塾」には、サン・マイクロシステムズの共同創業者 Scott McNealy 氏の姿があった。ITV の出資先でもある WHILL は今年9月、500 Startups、NTTドコモ・ベンチャーズ、Jochu Technology らから1,100万ドルを資金調達しており、このラウンドの投資家の中には Scott McNealy 氏も名を連ねている。

世界のワークステーション市場を席巻した経営の神様は、日本の起業家にどんなヒントを与えてくれるのだろうか。WHILL の杉江理氏をはじめ、クラウドワークスの吉田浩一郎氏、Fringe81の田中弦氏、ユーザベースの梅田優祐氏、ラクスルの松本恭攝氏、Tokyo Otaku Mode亀井智英氏ら、ITV が出資するスタートアップの経営者達が McNealy 氏の話に耳を傾けた。

物議を醸す場所にこそ、ビジネスチャンスがある

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新しいビジネスを興すと、そこに物議を醸し出されることはよくあること。逆に言えば、物議を醸すくらいでなければ、そのスタートアップに将来の可能性は無い。McNealy 氏は一つの好例として UBER を挙げた。読者なら承知の通り、UBER は世界各国で、地場のタクシー業界や運転手の組合などとの間で物議を醸している。しかし、それを乗り切るのはビジネスのスピードだ。ビジネスのスピードを速めるには、とにかく意思決定を素早くやること。それが CEO に求められる最も大きな責務の一つと言える。

スタートアップのコミュニティでは、よく皆で仲良く一緒に成長しよう、なんて風潮があるが、私に言わせれば、そんなのは有り得ない。

資本主義には、勝者と敗者があるのみだ。その業界のナンバー1とナンバー2のプレーヤーを引っ張り出す。ナンバー3より下はどうでもいい。ナンバー1とナンバー2とあなたのスタートアップとで、three-way dogfight(三者格闘)をするんだ。

話を聞いていた経営者の一人から、市場シェアを獲得する上での秘訣は何かと尋ねられ、McNealy 氏は物事を短期的に捉えることだと答えた。

必要なものを手に入れるにも、買うのではなくて、借りてくるんだ。長期的には考えないこと。

スタートアップにとって、多額の投資を必要とする〝所有〟という行為は資産にはつながらず、ピボットを妨げる要因になりかねない。むしろ、優秀な人材こそ、企業価値を生み出す源泉となる資産と言えるだろう。

優秀な人材確保は難しいことだ。GE の Jack Welch に会ったとき、彼もそう話していた。サン・マイクロシステムズを創業したとき、Bill Joy や Andy Bechtolsheim といったスーパースターを創業メンバーに迎えられたことは幸運だった。

そして、一つ言えることは、サン・マイクロシステムズの最初の100人を雇用するとき、彼らの面接に経営者である自分も参加していたということだ。面接は人事部がアレンジしたが、私も人事部に自分の意見を伝えていた。

これまでに何度か会社を創業した経験上、筆者も採用面接の大変さは理解できる。多くの業務タスクに追われる経営者にとって、面接は意外なほどに時間と体力を求められるものだ。しかし、社員の採用を人事部任せにすべきではない。特に最初の100人は、経営者が自ら立ち会って面接すべきだという話は、日本の企業創業者の口からもよく耳にする。

世界的企業を作り上げた成功者が語る、シリコンバレーの魅力

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グローバルなスタートアップ・コミュニティは、なにもシリコンバレーだけではない。日本にも素晴らしいコミュニティがあり、素晴らしい市場がある。それでも、世界のスタートアップはシリコンバレーを目指すべきか、との筆者の質問に対し、McNealy 氏はイエスと答えた。

その理由には3つある。英語が通じるということ。そして、シリコンバレーの気候がすばらしいということ。それに、Stanford、UC Berkley をはじめ、数々の大学や研究機関が集結している。スタートアップをやるには、シリコンバレーは素晴らしい場所だ。

アメリカの起業家や投資家に会ったとき、筆者は努めて、アメリカと日本のスタートアップを比較した意見をもらうようにしている。アメリカのスタートアップと違って、日本にはビジネス・インテリジェンスのサービスにフォーカスしたスタートアップが少ないのではないか、と尋ねたところ、McNealy 氏は筆者の質問を一蹴した。

日本には、ソニーの盛田昭夫氏(故人)に始まり、三木谷浩史氏や孫正義氏など素晴らしい起業家が多くいるじゃないか。私は、日本からも(ゲームなどに限らない)多くのビジネスが生まれていると思うし、今後もそうなると思う。

McNealy 氏が我々が感じている以上に、日本のスタートアップ・シーンや起業家の動向に魅力を感じているようだ。彼のような、世界の一大産業を築いた人物が、投資などの機会を通じて日本のスタートアップに積極的に関わるケースが多く生まれることを願ってやまない。

<参考文献>

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Scott McNealy 氏と記念撮影に臨む「ITV起業塾」の参加者ら。

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