画像解析によるO2Oマーケティング支援を行うABEJA、セールスフォースと第三者割当増資引き受けによる資本業務提携を実施

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セールスフォースの倉林氏(左)とABWJAの岡田氏(右)
セールスフォースの倉林氏(左)とABEJAの岡田氏(右)

画像解析・機械学習をもとにしたサービスを展開するABEJAは、セールスフォースと第三者割当増資引き受けによる資本業務提携を行ったと発表した。出資金額は非公式ながら、アーリーステージ投資として数千万円から1億規模だと推測される。

ABEJAは、画像解析技術と機械学習技術等を活用した、リアル店舗向け解析ソリューションによるリアルタイムデータ分析を行うO2Oサービスを提供している。

画像解析で性別や年齢を認識する性別年齢推定サービス「MIEL」は、これまでPOSデータなどでは取れなかった顧客来場者を分析することができる。従来の購入情報だけでなく、来店記録としてデータをアーカイブすることで、来店頻度や滞在時間を取得できる。店舗企業は会員データなどによる購入履歴などをもとにより最適な広告や情報通知を発信することができ、店舗在庫の最適化や広告効果の高い情報を届けることができるようになる。

「これまで、購入データはあっても購入にいたらなかった顧客の動向をつかむことは難しかった。それを、来店者情報があることでより店舗運営の改善やマーケティング効果を解析することができる」と、ABEJA 代表取締役社長CEOの岡田陽介氏は語る。すでに、コンビニや携帯ショップなどに導入されており、詳細は非公開ながら導入実績と導入効果は高いと岡田氏は語る。

性別年齢推定サービス「MIEL」
性別年齢推定サービス「MIEL」

岡田氏を含めたABEJAのメンバーは研究者や開発者が多く、学生時代から画像処理や機械学習、コンピュータグラフィックスなどを専攻していた人たちが多い。テクノロジーを基盤に、企業やユーザに対してさらなるUXを提供できるためのサービスの提案を行っている。

「コンビニなどの店舗から、ラグジュアリーブランドなどの顧客との購入以外のコミュニケーションなどの会員サポートの充実を図っているブランドなどにとって、これまでにない新しいマーケティングデータの提供ができる」(岡田氏)

今回、セールスフォースからとの資本業務提携について、セールスフォース日本投資責任者の倉林陽氏にも話を伺った。

「セールスフォースでは、これまで企業のマーケティング支援などを行ってきたが、近年はエンタープライズだけでなくリテール向けにもアプローチしていた。そのなかで、マーケティングのコアテクノロジーとしてのスケールが見込め、かつマーケティング施策と購入によるPOSデータまでの足りなかったピースを埋める協働相手として、本国からも評価が高いスタートアップで、話がスムーズに進んだ」(倉林氏)

今回の業務提携によって、1年以内にはSalesforce のサービス内にABEJAの機能を搭載したオプションなどを用意し、企業のマーケティングサポートを充実させていくという。

セールスフォースでは、これまでに国内のアーリーステージのスタートアップに対して投資を行っており、今回のABEJAを含めて20社ほどの投資実績がある。今後も次世代のエンタプライズテクノロジーをもとにしたスタートアップに投資を行っていくという。

これまでのO2O系サービスにおいて、個人の行動を把握するサービスとしては、Wi-FiやiBeaconなどがあったが、それらはスマホの所有がマストであったりなど、すべての顧客を把握することはできない。しかし、画像解析を行えば、大まかなユーザの動きすべてが把握できる。かつ、非言語とテクノロジーリテラシーに左右されないことから、グローバルに対しての展開も容易だ。

「Googleなどの企業では把握できていない、新しいデータを持つことで、O2O以外にもさまざまな展開が可能になる。画像処理が今後進化すれば、医療やセキュリティなど、さまざまな分野にも展開可能。自分たちのコアテクノロジーを研ぎ澄ましながら、データマネージメントプラットフォームを構築し、グローバルに展開していく企業にしていきたい」(岡田氏)

リアルな店舗といえば、これまでお店のマスターなどが常連の顧客の様子などといった数値化しずらいものを感覚値で考えていたものを、ABEJAのようなサービスを活用することで、より数値化された顧客動向を把握することができる。

また、BtoCの流れは近年ではBtoI(individual)という、よりパーソナライズな提案を行う動きが起きている。例えば、アドテクなどにおける動きがそうだ。これまでデジタルにおいて起きていたことが、店舗運営などのリアルな空間においてもそうした個人に対するアプローチが増してくる可能性も高いのではないだろうか。

リアル店舗やリアルな空間における顧客へのホスピタリティをどのように図っていくか。デジタルが普及してきた時代において、改めてリアルなコミュニケーションやリアルな場がもつ可能性を模索する時代が来るかもしれない。

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