日本から新興国への投資を促すソーシャルレンディング・プラットフォーム「クラウドクレジット」

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2014.12.22

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反論を恐れずに私見を述べるなら、日本におけるソーシャルレンディングの波は、ひところの盛り上がりよりも、ややトーンダウンしているかに思える。日本において、この分野の先駆的なスタートアップの経営者が創業時から交代したり、ビジネスモデルがクラウドファンディングに近い形に変化したりしているのも、一つの時代の変遷として捉えることができるだろう。

一方、アメリカでは半月ほど前、ソーシャルレンディング大手の Lending Club がニューヨーク証券取引所に上場を果たした。Lending Club が創業した2006年、筆者は幸いにも、創業当時のオフィスのあったインキュベータ Sunnyvale の Plug & Play Tech Center に同社の創業者らを訪ねる機会を得たが、あのときの彼らがニューヨーク証取に上場し、日本の大手地銀並みの時価総額をつけたのを目の当たりにするのは実に感慨深い。

日本とアメリカ、同じソーシャルレンディングでも、この環境の違いはどこから来るのだろう? 日本のソーシャルレンディングの将来は明るいのだろうか? そんなことを知人に話していたら、面白いスタートアップを紹介してもらった。日本から南米市場へのソーシャルレンディングを展開する「クラウドクレジット」だ。クラウドクレジットの共同創業者でチームを牽引する杉山智行氏に話を聞くことができた。

資金需要は減らないまま、銀行だけが保守的になる金融市場

世界の人口が増え続けている以上、資金の需要は増え続けている。お金を必要とする人にお金を貸すのが金融の本分であるが、銀行がお金を貸さなくなったのは、何も日本の話だけではない。数年前のバーゼルⅢに端を発し、銀行は自己資本比率を引き上げるためにお金を貸さなくなり、日本では合併や統廃合を繰り返す銀行が目立つようになったのも記憶に新しい。

しかし、世界的な銀行の動向を見たとき、意外なのは、途上国に経営の健全な銀行が多いことだ。

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杉山智行氏

途上国には保守的な銀行が多く、彼らの財務状況はきれいなものだ。ただ、(貸し出しリスクの高くない)中間層の人口でさえ、彼らの30%が金融にアクセスできていない。

需要があるのにもかかわらず、銀行は預金ばかりで貸し付けができない。この需給のギャップを狙ってソーシャルレンディングをやるスタートアップが多数参入している。(杉山氏)

イギリスの LendingWorks は開業前の段階で $3.5M、Rocket Internet 系の Lendico は開業から7ヶ月で $120M 調達するなど、この分野のスタートアップの勢いは留まるところをしらない。

現在の銀行は、預金ばかりで貸付ができない。杉山氏の見方によれば、今は銀行が150年ぶりに変化しているタイミングなのだそうだ。

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世界のソーシャルレンディング・スタートアップの資金調達事案(クラウドクレジットの会社資料から)。

海外に活路を見いだす意味

2000年代にサービスを開始したソーシャルレンディングの多くは、資金の調達元と供給先が同じ市場だった。アメリカの Prosper や Lending Club、イギリスの Zopa、日本の Maneo などがその例だ。しかし、古くから〝南北問題〟という言葉に象徴されるように、地球上で富は遍在している。お金が多く存在している場所が、必ずしもお金を必要としている場所とは限らないのだ。インターネットを使って資金の移動が容易になった現在、国境を越えて、より需要の高い地域に資金を投じようと考えるのは、ごく自然な発想だろう。

杉山氏の説明によれば、世界における資金の遍在は、市場の特性によって、次の3つのパターンに分類できる。

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  • 調達ギャップ型…資金の供給よりも、需要が遥かに上回っている。(イギリス、スペイン、オーストラリア、チリなど)
  • 貸付ギャップ型…資金の需要よりも、供給が遥かに上回っている。(日本、ドイツなど)
  • 途上国型…一見すると、資金の需給バランスが取れているように見えるが、金融が未成熟であるため資金需要が顕在化していない。市場を開拓すれば、需要が供給を上回るはず(ほどんどの途上国)

これらのうち、調達ギャップ型と貸付ギャップ型を結びつけることができれば、相互の市場にとって効率的な投資につながるはずだ。この考えに基づいて、実際、クラウドクレジットで扱っているソーシャルレンディング案件は、日本で資金調達しペルーなど南米市場への貸し付けを対象としたものが多くなっている。

ただ、市場の経済成長率から言っても、南米などよりむしろ地理的にも近い東南アジアを対象に貸し出した方が効率的な印象を持つ。筆者のこの疑問に対して、杉山氏からは意外な答えが返ってきた。

アジアは金融のリテラシーや、行政の透明性に問題があり、貸し付けにあたって、正確な情報を収集するのが難しい。

リスク管理の観点などから言って、アジア向けにソーシャルレンディングの貸し付けを行うのは、まだ時期尚早なのだそうだ。

ソーシャルレンディング業界は市場の醸成にしたがって分業化が進んでおり、事業者も資金を集める側(貸主)と需要を集める側(借主)に分かれてきている。クラウドクレジットも資金を集める側に徹し、ディールソースや借主のリスク管理の業務は、各市場のオリジネーターにアウトソースしている。

クラウドクレジットでは、資金を必要としているプロジェクトを集めてくる世界のオリジネーターとネットワークを形成しており、今後は南米以外に加えて、ヨーロッパやオセアニアのソーシャルレンディング案件も積極的に取り上げてい予定だ。

世界を飛び回り、ヨーロッパや南米にある、ほぼすべてのオリジネーターとつながった。彼らにとっても、資金の調達源の分散という観点で、日本の市場から資金が集まることを面白いと思ってくれている。(杉山氏)

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一般人にも手の出せるソーシャルレンディングへ

今年6月にローンチしたクラウドクレジットは、この半年間ほどは機関投資家からの資金しか受け入れられない限定ライセンスで運用してきたが、今月からは一般個人を受け入れられるフルライセンスに移行、我々でも10万円から途上国向けのソーシャルレンディングに資金を出すことが可能になった。2015年4月からは、融資型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)もISA(individual savings account/個人貯蓄勘定)の投資対象として認められる予定で、ユーザはクラウドクレジットで利益を得たとしても、一定条件のもとで課税対象とならない措置が受けられるようになる見込みだ。

国際的な投資銀行や金融機関が日本から撤退してしまった今、自分たちは、アービトラージ(金利差や価格差を利用して売買し利ざやを稼ぐ取引)など、外銀や信用取引のノウハウを理解している最後の世代ではないかと思う。将来的には、信用金庫や信用組合、企業などからもお金を集めて、世界的なソーシャルレンディングのマーケットプレイスを構築していきたい。(杉山氏)

スタートアップ投資の分野でも、日本では資金がだぶついており、リスクマネーは行き場所を求めている。保守的な金融業界においては、金融当局の不用意な介入さえなければ、市場はパイオニア精神あふれる新しい動きに対して追い風を送るだろう。

クラウドクレジットは2013年の会社設立直後にフェムトスタートアップから、また、今年7月、マネックスベンチャーズGCI キャピタル、フェムトスタートアップから資金調達している。調達した金額など詳細については明らかにされていない。

<参考文献>

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