「ポテンシャルのある女性をサポートすれば、女性の人材は増える」欧州で急速に広がる女性のテック・コミュニティ

by Yuki Sato Yuki Sato on 2014.12.24

ポーランド発祥の女性コミュニティ「Geek Girles Carrot」中央がファウンダーのKamila Sidor氏(c) Marek Stępniowski
ポーランド発女性コミュニティ「Geek Girles Carrot」中央がファウンダーのKamila Sidor氏
(c) Marek Stępniowski

ベルリンや周辺都市のスタートアップシーンを取材しながら感じるのが「パワフルな女性の存在感」だ。日本にいた頃と比べると、女性から刺激を受ける機会がずっと多いし、「こうなりたい」と思わされる女性にも多く出会ってきた。

この違いはどこにあるのだろう? その要因については、さまざまな角度から論じられると思うが、本記事ではテック業界の女性をサポートする「女性コミュニティ」の存在について紹介したい。こうしたコミュニティの草の根の活動が、女性に与えている影響は実に大きいと日頃から感じる。

毎月1,500名が参加するワルシャワ発「Geek Girls Carrot」

Geek Girls Carrot(以下GGC)はテック業界における女性の数を増やすことを目的に立ち上げられた団体だ。ワルシャワのVCに勤めていたKamila Sidor氏は、2011年に開催されたStartup Weekendに参加した際、参加者の女性比率の低さに愕然とする。120名の参加者のうち、女性は10名。しかも、その半数は男性パートナーの同伴者だったという。実質の女性比率はわずか5%にも満たない低さだったのだ。

「テクノロジーに興味のある女性がこんなに少ないはずはない。みんなイベントに現れないだけなんじゃないか」と感じたSidor氏は、自ら女性を対象にしたミートアップを開催する。初回は11名のミートアップでスタートするが、活動の規模は徐々に大きくなっていった。特に転機となったのは、ポーランドの主要なテックメディア Antyweb が、このGGCの活動を取り上げたことだ。それによって、ワルシャワ以外の都市を拠点にする女性からのコンタクトが増え、ワルシャワを越えてGGCの活動が広がっていった。

こうして、3年前に、11名のミートアップからスタートしたGGCは、その後7カ国20都市に広がった。ファウンダーの Kamila Sidor氏によれば、今では毎月1500名がGGCの開催するなんらかのイベントに参加しているという。

Sidor氏は、GGCでは以下の3つの軸となる活動があるという。

1.ミートアップを定期的に開催し、ローカルなコミュニティを確立する
「女性は男性と比べると、ネットワーキングが苦手です」とSidor氏は言う。そのためにも、初対面の人同士が交流する機会を頻繁に設け、ネットワーキングに慣れてもらうことが必要だという。ネットワーキングを通じて、横の連携を強化し、互いにサポートしあう仕組みを築くことがゴールだ。

2.プログラミングのワークショップを開催し、テック人材を増やす
ワークショップは、プログラミングの知識がほとんどない人が対象だ。既にプログラミングの経験と知識のある「メンター」にも参加してもらい、ハンズオンでプログラミングを学べる環境を提供する。これまで、600名がこうしたプログラミングのワークショップに参加し、プログラミングの知識がゼロだった参加者が数ヶ月後に仕事を得られるケースも出ているそうだ。

3.メディアとの連携を通じた、ロールモデルの普及
最後に重要な点が、より多くの「女性のロールモデル」を輩出するためのメディアとの連携だ。実際、GGCの活動が成長してメディアでも注目されるようになってからは、テック領域のストーリーや専門家を求めて、メディアからアプローチを受けることが増えたという。こうして「テック分野で輝く女性」が雑誌や新聞などのメディアに登場することで、テック業界の女性が「クール」「セクシー」「自立している」というイメージが普及し、それまでまったくテクノロジーに興味のなかった層の女性もGGCに参加するようになっているのだそうだ。

世界9都市でメンバー3000名を誇るベルリン発「Geekettes」

ベルリン初のGeekettesも同様に、テック業界の女性をサポートすることを目的に2012年に立ち上げられた団体だ。当時スタートアップで働いていた Jess Ericksonは、ベルリンで開催された、あるテックカンファレンスに参加した際、その参加者を見て「あまりにも女性が少なすぎる」と驚いたという。「テック業界で活躍する女性がもっと前面に出る機会、そしてテクノロジーに興味のある女性がお互いに助け合うプラットフォームが必要だ」と感じ、コミュニティを立ち上げることを決意する。

当初は「そんなコミュニティをつくる意義はない」「人が集まらないだろう」というネガティブな反応も多かったというが、それから2年以上が経った現在、Geekettesは世界の9都市に広がり、3000人もの女性を惹き付けるコミュニティへと拡大した。ベルリンだけでも800名のメンバーがいる。

各都市には、ローカルなコミュニティを引っ張るオーガナイザーがいて、現地で様々なプログラムを運営する。トレンドのテクノロジーを扱ったワークショップや、起業に関するミートアップ、企業とタイアップしたハッカソンなど、プログラムの内容は多様だ。今年の6月には女性ファウンダーのスタートアップを集めて、初のデモデイを開催し、起業家と投資家をつなぐ場を実現した。

Geekettesのデモデイでは、女性ベンチャーキャピタリストによるパネルディスカッションんも開催
Geekettesのデモデイでは、女性ベンチャーキャピタリストによるパネルディスカッションも開催、右端がファウンダーのJess Erickson氏

女性同士の方が「オープンな議論ができる」「悩みをシェアしやすい」

また、Geekettes のErickson氏は、コミュニティのもう一つのメリットについてこのように話す。

女性は、同じ女性に対しての方が、悩みを打ち明けたり、相談をしやすいんです。だからこそ、こうした女性中心のコミュニティが必要だと考えています。

女性同士の方がより打ち解けて悩みを相談できる、オープンに話がしやすいという声は、私自身も何人もの女性から聞いてきたし、個人的にもそのように思う。だからこそ、より女性とのコミュニケーション機会を増やすことは、女性に対して大きな心理的サポートを提供することを意味するはずだ。

Berlin Geekettesのメンバー達
Berlin Geekettesのメンバー達

ポテンシャルのある女性の成長をサポートし、業界における男女比の偏りを是正する

GGCのSidor氏はまた、テック系の職業における女性比率の低さはこうしたコミュニティの活動によって是正可能であると考える。

女性と男性で知性に差はないことは研究でも証明されています。現状の業界における男女比の偏りは、ポテンシャルのある女性を活用しきれていないからなんです。センスがよく、ポテンシャルの高い女性の学習や成長をサポートする仕組みさえできれば、より多くの女性の人材をテック業界に送りこむことが可能なはずです。

女性の人材を増やすことはプロダクトづくりのためにも必要なことであるとSidor氏は指摘する。ユーザーの半分や過半数が女性であるプロダクトを開発するにあたっては、女性の視点やフィードバックが重要であることは言うまでもない。ユーザー志向のプロダクトづくりのためにも、女性の人材の活用は欠かせないのだ。

「日本でもぜひローカルコミュニティを立ち上げてほしい」

Geekettes、GGCともに欧米を中心に、国を越えて各地でローカルなコミュニティが広がっていったが、アジアはまだ未開拓のエリアだ。Erickson氏、Sidor氏ともに「日本でもローカルなコミュニティを立ち上げてほしい」と言う。

実は、昨年3月には、Geek Girls CarrotのSidor氏が日本に来日し、その際に「ヨーロッパの女性起業家とTech×女子の未来について語る会!」が開催された。既にIT業界で起業していたり、またはIT分野に関心がある女性などが集まり、ちょっとしたピッチイベントを開催するなど盛り上がり、日本における女性テック・コミュニティへの需要を感じさせた。

既に活動実績の多いGeekettesやGGCのローカルコミュニティを日本でも立ち上げることで、これまでの両団体のノウハウを学べたり、また都市を越えたネットワークを築くことができるはずだ。日本でコミュニティづくりを率先してやってみたいという意欲のある方は、ぜひ両団体にコンタクトしてみてはいかがだろうか。

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