100万ダウンロード間近な「ネイルブック」の女性ディレクターが語る、女性にウケるサービス作りの極意

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ネイルブックのディレクター 正木友佳さん
ネイルブックのディレクター 正木友佳さん

現在のダウンロード数は96万件と、100万の大台も近づいてきた「ネイルブック」。ネイルブックは、モバイルに特化した開発会社「ゆめみ」からスピンアウトして、2011年4月末にリリースされたネイルアプリです。ネイルブックを提供するスピカにお邪魔して、ネイルブックのディレクターである正木友佳さんに取材してきました。個人的にも、次のネイルを決める際に参考にしていて、かなり「あるある」があって面白い取材でした。女性向けサービスを開発している皆さんの役に立ちますように。

次のネイルデザインが見つかる「ネイルブック」

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ネイルブックのAndroidアプリ

スマートフォンが登場するまでは、多くの女性が、雑誌などを見ることでネイルのアイディアを探していたはず。それが、スマホアプリで簡単にできちゃうのが「ネイルブック」です。ネイルブックには、累計64万枚を超えるネイル写真が、ユーザーやサロンのネイリストさんの手によって投稿されています。

ネイルブックの月間ユーザー数は約50万人。その6割は、25歳から34歳までのいわゆるF1層で、ネイルをする金銭的余裕がある女性たち。ダントツで多いのは会社員で、次いで主婦が多いそう。もっと若い世代は、おそらくクーポンが使えるホットペッパー・ビューティなどを使っているのでは?と正木さんは分析します。

気になるネイルを、[かわいい]ボタンを使ってお気に入りに登録したり、ランキングから最新のトレンドを見たり、サロンの情報をチェックして予約したり。もともとiPhoneアプリとして始まったネイルブック。まだ、Android版を出す前にスマホ対応のウェブサイトを立ち上げたことで、未だにウェブ経由のユーザーの方が多いのだと言います。

「未だに、女性にとってアプリをダウンロードすることのハードルは高いんです。また、ネイルのデザインを検索する時は、Googleなどの検索エンジンで「ネイル デザイン」などと検索する方が多いです。今は、「ネイル」や「ネイル ×××」といったキーワードのSEOで1位をとれているため、検索エンジンからの流入が6割と多いですね」

ネイルブックの高いO2O効果、カリスマ ネイリストの登場も

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ネイルブックのネイリスト ランキング

もともと、ネイルブックは正木さんの前任の女性ディレクターが考案したアイディア。O2Oをテーマにした消費者向けサービスを検討していて、色々調べるうちに美容業界に可能性を感じました。ヘアスタイル関連のサービスも考えたものの、当時はまだ自撮り文化が今ほど確立されておらず、個人的にネイルが好きだったこともあってネイルブックの構想にたどり着きました。

実際にアプリを提供してみると、ユーザーからの投稿に加えて、ネイリストが自分の作品を投稿するように。それを受けて、ネイリストとして登録できるようにし、彼女達にフォーカスする機能を加えました。一般ユーザーとネイリストの登録の割合は9:1と数では少ないものの、ネイリストがきれいに撮った作品が、多くのユーザーを惹き付けています。

また、ネイルブックでは、定期的にネイリストやサロンにインタビューすることで、ネイリストの視点からもアプリを改善。ネイルブックにプロフィールを持って作品を投稿することは、ユーザーの来店にどれだけ繋がるのでしょうか。

「都内のランキング上位のネイルサロンの方だと、月に20人くらいは送客できています。また、ネイルブックを見て来店した人の6割以上がリピートしてくれるそうです。もともとは、客足が薄くてサロンをたたもうと思っていた人が、ネイルブックによってお客さんが増えて大活躍しているような方もいらっしゃって嬉しいですね」

ネイルブックの中から「カリスマ ネイリスト」が登場しており、過去には雑誌「ネイルUP!」と組んで、ネイルブックのネイリストと投稿作品を紹介するコラボをしたことも。安くネイルをすることより、自分の感性に合う「通いたくなる」ネイリストさんと出会えることもまた、ネイルブックがユーザーに対して提供する大きな価値だと言えそうです。

多少ダサくなっても、大事にするのは「わかりやすさ」

「以前のバージョンが時代遅れで、自分が使いたいと思えなかった」ことを理由に、2014年2月にデザインを全面リニューアルしたと話す正木さん。ユーザーにヒヤリングをしたところ、同じピンク系でも大人っぽいピンクと黒の組み合わせが好評であることが判明。若干 子どもっぽかったデザインを、ネイルブックのユーザーである20代後半〜の女性の好みによせてリニューアルしました。

EとDが接戦だったアプリのアイコンアンケート
EとDが接戦だったアプリのアイコンアンケート

リテラシーが高くない女性がユーザーの大半を占めるというネイルブックが大切にするのは、何より「わかりやすさ」。流行のフラットデザインなどを取り入れることより、多少ダサくなっても、わかりやすいことを優先しています。例えば、[検索]や[メニュー]などはアイコンだけにせず、「検索」などの文字ラベルをつける。ラベルは、名詞ではなく、意識的に動詞を選ぶことでユーザーが次のアクションを思い浮かべやすいように工夫しています。

「そこを押すと何が起こるのかをわかりやすくしています。わからないものは、怖くて押せないので。また、会員登録をしていないユーザーの場合、メニューの中に鍵がついている項目が存在します。そこも、それをタップすると何ができるのかを丁寧に説明することで、安心して次に進めるようにしています」

会員登録誘導時のポップアップ
会員登録誘導時のポップアップ

意外だった発見と、読みが外れた機能

ネイル写真に日付を追加
ネイル写真に日付を追加

次のネイルデザインを探すために見るネイルブックは、1ヶ月に1回ほど見られるのが基本。もちろん、自分の作品を投稿するネイリストはより頻繁に見ていたり、また中には一般ユーザーでも、Instagramを見るようにネイルブックを毎日開く人がいるんだそう。

「暇さえあればアプリを開いてネイル写真を見てくれるような人もいますね。1日1000枚くらい投稿されるものを、1つ1つ見て行くみたいなんです。そういうユーザーさんから、『次に開いた時にどこまで見たかわからない』と言われて、ネイル写真に日付を入れて対応したほどです」

一方、ニーズがあるだろうと思って追加して外したのが「ふーふーシャッター」。それは、一見聞くとすごく便利そうな、写真を撮る時に、iPhoneに息を吹きかけることでシャッターが切れる機能。ネイルを写真に収めるなら、片手ではなく両手を撮りたいだろうと推測して開発したものの、機能の存在に気づかれなかったのか、iPhoneを配置する角度の難しさなのか、結局使われなかったそう。

時にはユーザーのリアクションを見ながら、時にはユーザー女子会を開催して意見を聞きながら、時にはユーザーでもある自分自身が共感できるかをもとに、ネイルブックのあるべき姿を追求しています。

ネイルサロンが主役の別アプリをリリース予定

取材に向けてネイルブックについて色々調べていて見つけたのが、「女ゴコロを形にする!現役女性ディレクターが語る女子にウケるサービス作りとは?」と題されたSlideshareの資料。レバレジーズ主催の「ヒカ☆ラボ」でプレゼンするために正木さんがまとめたものです。

ネイルブックのことがかなり赤裸々に語られているので、一見の価値あり。資料の中にもあるように、一時フリーミアムを実施していたネイルブック。写真拡大機能、タグ別ランキング、非公開写真のストック機能などをプレミアム会員に提供していましたが、結局1年間で集まったのはサーバー代にすらならない40万円弱。現在では、まずユーザーとコンテンツを集めるために、全機能を完全に無料に戻しています。

また、来年早々には、サロンにフォーカスしたネイルブックの姉妹アプリをリリースする予定。ネイルブックとも連携させて、デザイン探しはネイルブック、サロン探しは新アプリと、目的に応じて使い分けられるようにします。

「ネイルブック自体が、もともとO2Oのプロジェクトとして始まったものなので、そこにもっと注力したいですね。実際、ネイルブックでも、KPIの1つはサロンの店舗登録数に設定しています。O2Oの仕組みが上手く機能するようになれば、長期的にはネイルから他の領域にも横展開できると考えています」

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