「全国Startup Day in 九州」が開催。グランプリは、ホームセキュリティの低価格を実現したスタートアップ

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全国各地の起業を促進するため、トーマツベンチャーサポートとサムライインキュベートが企画している「全国Startup Day」。大阪、札幌、中部などの全国で各地域で開催する同イベント。今回は九州エリアによるスタートアップたちのピッチが、先日オープンしたスタートアップカフェで行われた。

まず始めに、「IPO起業家・著名ベンチャーキャピタリストが語る、成長ベンチャーを生み出す秘訣とは?」と題しパネルディスカッションが行われ、さくらインターネット代表取締役の田中邦裕氏、SMBCベンチャーキャピタルVC投資第一部長の太田洋哉氏、ドーガン取締役副社長の林龍平氏が登壇した。太田氏や林氏など、実際に投資に携わっている人たちの視点から、ベンチャーとしての必要な素質や投資に対する心構えなどの議論がなされた。

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起業家と投資家は、対等な目線で互いを理解しあうことから始まる

太田氏は、起業家にとって必要な素質として「愚直にものごとをやり切る力」と「優秀な仲間を巻き込めるか」が大切だという。いかに個として優秀であっても、チームで結果を出すためにさまざまな取り組みやチーム構成を考えないといけないと指摘する。

林氏は、自身の原体験や挫折した経験を投資家などに共有できる人が重要だとし、「なぜそのビジネスをやるのか、何を変えたいのか、という強い思いが最後の一歩を踏むかどうかの決め手になる」と主張した。そのためには、自身が解決したい問題の設定と、そのための解決方法を見出すことが必要だという。

モデレーターの、サムライインキュベートの玉木氏(左)と、さくらインターネットの田中氏(右)
モデレーターの、サムライインキュベートの玉木氏(左)と、さくらインターネットの田中氏(右)

投資を受けてさくらインターネットを成長させてきた田中氏。VCからの投資のメリットデメリットについて若手起業家たちへのアドバイスを行った。

「外部の投資が入ることで、投資家というブレーンによって有益な事業を進めることができる。2001年のネットバブルのときの苦労をした時期に、銀行との交渉や資金繰り、事業戦略などのさまざまな面でその存在価値を実感した。VCのアドバイスや人的なリソースは、スタートアップにとって大きい。逆に、資本政策をきちんと考えて運営していくことが求められる。株式会社は株主のもの。人材や組織は経営者がなんとかできるが、株の配分は変えにくいからこそ、意思決定においてスムーズに進めるためにも、どういった人が株主になっているのかを始めから考えることをおすすめする」

契約書の一つ一つにも意味があると林氏。「細かな条項一つ一つにも、その条項の背景があるからこそ、投資契約について投資家は説明する義務があるし、起業家も理解する必要がある。契約に関するやりとりをきちんと学んでおいたほうがいい」(林氏)

投資部門で長らく活動してきた太田氏は、「最初のファイナンスが重要」と語る。最初である投資家は、一蓮托生の仲間であるからこそ、信頼をおける人物を見極めることが大切だ。そのためにも、VCが起業家の素質を見るように、起業家もVCをきちんと見極めなければいけない。

「起業家とVCは対等な立場。投資はいわばお見合いや結婚のようなもの。長期間一緒に苦楽をともにするからこそ、互いに始めからすべてをさらけ出し、考え方や不足していることなどを理解した上で投資を検討すべき」

ドーガン林氏(左)とSMBCベンチャーキャピタル太田氏(右)
ドーガン林氏(左)とSMBCベンチャーキャピタル太田氏(右)

情報の後ろのあるストーリーや思想を知るための努力をすること

話は九州から起業家が増えるためには、といった話題に移る。アントレプレナーの土壌があるとする林氏だが、「会社がそこそこに成長すると、一定の推移で踊り場になって、そこに満足して成長が止まってしまう企業も多い」と指摘する。20人30人規模で、売上がそこそこ見込めてしまうことに満足することなく、新しい挑戦をするための前のめりな姿勢を取ることが必要、と九州の起業家の人たちにエールを送った。

地方だから、という意識はしなくていい、と語る太田氏。しかし、地方は流れている時間の早さが違うかも、ということを意識すべきという。表面的な情報だけだと、東京と地方が大差ないが、その情報の裏側にある人の思想や出回っていない情報を知ることが大切だと語る。田中氏も、本社を関西に置きつつも定期的に東京に足を運び、コミュニケーションを取っている。その理由は、情報だけではない人と人とが直接対話することによるエネルギーが、次へのチャレンジの源泉になると考えているからだ。

「情報量が増した現代において、情報だけで満足するのではなく、他者との真の関係性を築くためにも、顔を突き合わせることの大切さが増してきている」(田中氏)

人間関係づくりや、起業家と投資家との関係性といった話に終始したパネルディスカッション。人と人が出会い、議論し、相手の考えを理解すること、そのための時間と労力を惜しまないことが、スタートアップにとって必要な要素なのではないだろうか。

九州のスタートアップ8社のピッチ

パネルディスカッション後は、8社のスタートアップによるピッチが行われた。登壇したスタートアップのなかから、注目の企業をいくつか紹介する。

SMART ROOM SECURITY(グランプリ)

SMARTROOMSECURITY

月額500円から980円で、家庭のホームセキュリティサービスを提供するSMART ROOM SECURITY。一般的に、ホームセキュリティの普及率は3%程度で、多くの家庭で導入が進んでいない。その原因として価格面などが大きい、と同社代表取締役の原田宏人氏は指摘する。

そこで、同社はセンサーとデバイスを家庭に設置し、センサーに反応したらスマートフォンなどにアラートが鳴る仕組みとなっている。一般家庭だけでなく、一人暮らしの高齢者などの孤独死などに対応するために、一定時間ドアが開かないとアラートが飛ぶ、という仕様も可能だ。

アラートだけでなく、提携している警備会社のスタッフによる駆けつけ対応も可能で、駆けつけた場合に数千円の都度課金が発生する。すでに九州全体をカバーしているにしけいと提携している。提携している警備会社は、抱えている警備スタッフの空き時間にSMART ROOM SECURITYの対応を行い、それによって収益を得られるなどの空きリソースの活用もできる。空きリソースの活用によって、SMART ROOM SECURITY自体のサービスの低コストを実現しており、一般家庭の防犯・警備普及率を高めていきたいという。

テラスマイル(トーマツ賞)

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テラスマイルは、農業における予測とシミュレーションによって農業経営を改善するレコメンド型の農業ERPを提供するサービスだ。データベースを蓄積し、予測と分析によって、効率的な農業戦略を構築させ、売上向上の支援を行っていく。農業×ITの分野において、経営的視点をもって農家経営を行うことで、農業の活性化を図っていきたいという。

YAMAP(サムライ賞)

yamap
登山地図アプリのYAMAPは、電波が届かないところでも、現在地が確認できる地図アプリだ。登山だけでなくスキーやスノボなど、さまざまなアウトドアシーンにおいて活躍することができる。2013年3月にリリースし、8万以上のDLがされている。全国3000件以上の山情報なども掲載されており、誰でも情報を投稿できるプラットフォームにもなっている。フリーミアムモデルを採用しており、有料プランなどのサービスの拡充を墓っていく。また、ベータ版では登山用のアウトドア用品の比較評価サイトも収益化の柱となっている。今後は、外国語対応や地域の滞在型観光を推進する地図アプリとして、自治体らとの連携も図っていくという。

他にも、タッチセンサー技術を搭載した新しい製品づくりを行う痛すぽ、ドラマなどで使用された衣装を検索、購入できるECサイトのガイダー、電子書籍店頭販売システムのキャンディ、ウェブ制作プロジェクトのコラボレーションツールのUniversions、オリジナルギフトカードなどが作成できるブレッサ、などがピッチを行った。

今後は、1月の中四国、2月の東北を踏まえて、3月に東京で開催されるファイナルが予定されている。

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