インキュベイトファンドが110億円ファンドを組成ーー村田氏が語る「独立系VCの夜明け」

Takeshi Hirano by Takeshi Hirano on 2015.1.5

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インキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介氏

国内独立系ベンチャーキャピタルのインキュベイトファンド(以下、IF)は1月5日、インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合の組成を完了したと発表した。産業革新機構、ヤフー、三井住友銀行、Tencent Holdings、セガサミーホールディングス、Mistletoe、東京放送ホールディングス、ミクシィ、日本政策 投資銀行、その他個人が出資者として参加し、調達金額は総額で110億円となる。

IFは今後、「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」という三つのキーワードをベースに、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を主軸とした革新的な創業時点のスタートアップに対し「1社あたり最大5億円」(IF代表パートナーの村田祐介氏)の出資を行う。

また、村田氏の話によるとカリフォルニア、サンノゼを拠点とするDrivemodeが同ファンドの第1号出資案件となるそうだ。TechCrunchのレポートでは「見ないで操作ができるUI」を持った同アプリに対し、IFは200万ドルの資金を出資したとしている。

独立系ファンド躍進の意味するもの

さて、インキュベイトファンドが大型のファンドを新年早々に発表した。

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資料提供:インキュベイトファンド

100億円規模の資金を保有する独立系ファンドとしては、大企業との橋渡しをコンセプトにしたWiL(350億円規模)、KDDIとの共同ファンドを運用するグローバルブレイン(150億円規模)、グロービス・キャピタル・パートナーズ、昨年11月に発表されたインフィニティ・ベンチャーズLLPの3号ファンド(2015年に1億米ドル(約110億円)規模を計画、以下、IVP)のほか、B Dash Ventures(以下、BDV)も同等規模の資金を調達しているという話も関係者筋から聞いている。(カッコ内の数字は各社サイトを参照)

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資料提供:インキュベイトファンド

村田氏によると、ここ1年ほどの数字からこういった独立系ファンドの割合が社数、調達金額ベース共に増えている傾向が見えてきているということだった。

では独立系ファンド躍進の裏側には何があるのだろうか?

もちろん単一の理由で語ることはできないが、村田氏との話で感じたのはシード期の企業育成の難しさが背景にあるのではと感じられた。

発掘も含め、育成の困難なシード期のスタートアップ育成には相当なノウハウ、考え方、選球眼、それに人間臭い「気合い」が必要になる。村田氏が「これだけ(スタートアップが)調達できる時代になっても、シードの出し手は変わらない」と表現したように、創業間も無い企業の支援を担うVCは限られたプレーヤーのみなのだ。

結果として担い手に期待が集中するのは至極当然のことかもしれない。

独立系VCが招待制カンファレンス(IFはインキュベイトキャンプ、IVPはIVS、BDVはB Dash Camp)などを開催し、スタートアップの登竜門などを独自に運営しているのも、確率の低い創業期のスタートアップを成長路線に乗せようという仕組みづくりの一環、と見ると理解しやすい。

とにかく手間がかかるシード期の育成を担ってくれるのだから、お任せしたいという出資側の気持ちもよく分かる。

「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」という三つのキーワード

話をIFの3号ファンドに戻そう。前述の通り、IFは創業期から起業家とタッグを組んで事業を作ることにこだわりを持っている。そんな彼らがパートナーとして選びたい起業家に求めるのが「Global Scale」「Legacy Market」「Enabling」という三つのキーワードだ。

「単純にネットがいろんなものにつながっていく時代になるわけです。デバイスもモバイルという主戦場から更に拡大する。そうなれば、既存のサービスも再定義することができるようになる」(村田氏)。

このようにネットに接続できる「革新可能な既存マーケット(Legacy Market)の拡大」と、AppStoreやGoogle Playによるディストリビュー ションプラットフォームの普及による「同時に攻めることができるエリアの拡大(Global Scale)」を意識できるかどうかは、IFの投資対象であるなし関係なく、これからのスタートアップに必要な要素と言えるだろう。

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資料提供:インキュベイトファンド

聞きなれないEnablingは、その業界を支えるインフラ的な位置付けと考えればいいだろう。例えばスマートフォンが大きく伸びると予想された2010年代、その業界を支えることになるであろうスマートフォン広告のアドテク関連スタートアップには大きく投資金が動いた。これが各マーケットでも発生するという考え方だ。

ただ、インターネットがこれから普及するから通信網が必要だ、サーバーインフラが必要だ、というシンプルな構造だったこれまでと違い、例えば医療関連のマーケットを改革するモデルであれば、その下支えをするインフラが何であるかをまず定義することから始めなければならない。

そういった難しさを解決するためにも、村田氏はこれからのスタートアップに必要な要素として「既存マーケットに食い込もうとすると、その業界の作法があるので、ネットネイティブな人とのハイブリッドなチーム」が望ましいとも語っていた。

早々にDrivemodeという一号案件を出したIFの3号ファンド。ここからどのような革新的なスタートアップが生み出されるのか。注視したい。

Takeshi Hirano

Takeshi Hirano

ブロガー。TechCrunch Japan、CNET JAPANなどでテクノロジー系スタートアップの取材を続け、2010年にスタートアップ・デイティング(現THE BRIDGE)を共同創業。1977年生。(株)THE BRIDGE代表取締役

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