チャットでコーデ提案する「PRIMODE」のCV%は通常ECの10倍、強みは実力派スタイリストのネットワーク

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PRIMODE-website

昨年12月頭にトライアル版としてリリースされた、コーディネート提案サービス「PRIMODE」。ここ数年で、洋服の購入や着回しに頭を悩ますユーザーを対象としたファッション系サービスが増えていますが、PRIMODEはマンツーマンのチャット形式で、プロのスタイリストがコーデ提案をしてくれることが特徴です。

「コーディネート提案のサービスは、実はありそうでない」と話すのは、PRIMODEを運営する、空色の代表取締役の中嶋洋巳さん。既存サービスは、発信者から受信者へ向けた「一方通行のコミュニケーション」に留まるものが多いと指摘します。PRIMODEは、実力派スタイリストと組み、ユーザーに寄り添ったファッション提案を行うことで差別化を図っています。中嶋さん、PRIMODE事業部ブランドプロデューサーの小泉デイビッドさん、広告・広報担当の久保田さんにお話を伺いました。

コンバージョンは通常ECの10倍

スマホブラウザ版として提供されるPRIMODEのユーザー層は幅広く、20代から30代の男女、中には40代のユーザーも。運営開始から1ヶ月間ほど経った現在、通常のECサイトの10倍に当たる20%弱のコンバージョンを誇っています。これは、チャットで提案したアイテムの商品が購入に至った率を指しています。

PRIMODEの利用の流れは、スタイリストへの相談を希望するユーザーが、相談内容をフリーワードで入力することから始まります。すると、その依頼内容がPRIMODEに登録するスタイリストたちに届き、対応可能な人がユーザーとのチャットを開始。

今年春にはベータ版としてスマホアプリをリリースする予定。アプリでは、スタイリストの指名や、同じスタイリストへの継続依頼も可能になります。

「リリース前は、PRIMODEを利用するユーザーの大半はコーディネートに悩んでいる人だろうと思っていました。でも、それは全体の6割くらいで、4割の方は、さらにファッションを楽しむためにスタイリストさんとのコミュニケーションを楽しんでいる感じです。新しいブランドを教えてもらったり、コーディネートのベーシックな知識を得たりして満足してご購入いただけています」(中嶋)

「チャット」がリアルな接客を上回る?

PRIMODE-chat

チャットという形式にたどり着く前は、Skypeなども試したと話す中嶋さん。結局、LINEなどで多くの人が慣れ親しみ、忙しい人でもちょっと聞きたいことを気軽に相談できるチャットを選びました。

「チャットなら、スタイリストさんも複数ユーザーの相談に同時に乗ることができます。当然電話ではそれはできませんし、対面の接客でも難しい。また、ビジネス的にも、チャットはデータを解析しやすく、サービス改善に繋げることができています」(中嶋)

チャットに関しては、質問に対して回答するといった端的なやり取りを想像していたものの、実際にはスタイリストとユーザー間のコミュニケーションが非常に親密であることに驚いたと話すのは、アパレル業界で10年のキャリアを持つデイビッドさん。

「お店で買い物をしていて、接客されることを苦手な方って多いと思うんです。ちょっと押し付けがましく感じてしまうというか。でも、不思議と、チャットだとそれがなくて、「普段はどんなブランドが好きなんですか?」なんて自然に会話をしながら楽しんでいただけているようです」(デイビッド)

「PRIMODE上では非常に良いコミュニケーションができているので、スタイリストさんの本業にも繋げられないかと考えています。例えば、将来PRIMODEに参加いただくブランド側に対して、スタイリストさんのプロフィールだけでなく、ファンの人数や自社アイテム販売実績などを説明することを検討しています。将来的には、ブランドとスタイリストが直接仕事ができるようなきっかけになればと考えています」(中嶋)

資産を活かして育むスタイリストとの関係性

PRIMODEの構想を得たのは、代表の中嶋さんが前職のNTTで働いていた4年前にさかのぼります。オンラインクロゼット系のサービスが色々登場する中で、NTTでも同様のサービスを立ち上げていました。その時の経験から、スタイリストの才能を活かすことを重視し、購買まで一環して提供するサービスを思いつきました。

「NTT時代にオンラインクロゼットのサービスを提供してみて学んだことは、スタイリストというプロフェッションの素晴らしさです。彼らが持つ情報量の多さには圧倒されました。その素晴らしいセンスをもっと発揮してもらう場として、PRIMODEがあります」(中嶋)

PRIMODEの展開に活きている資産が、2013年10月頃に立ち上げたウェブのプレスルーム「Stylee」と、取締役の久保田さんが2007年に立ち上げて、現在は統括する日本国内のクリエイティブ系専門学校300校に設置されるフリーペーパー「Stylee Times」です。現在は運用を停止しているStyleeは、全国の地場産業のブランドなどが300以上集まり、スタイリストはそれらの洋服を無料で借りることができるプラットフォーム。専門学校の学生や先生なら大体の人は知っているというStylee Timesは、毎年何百人いるというスタイリスト志望の学生との接点の場です。

「広告会社にいた頃に構想を得てStylee Timesを立ち上げました。PRIMODEの展開にも活かせるだろうということで、2014年7月に空色で一緒に発行していくことになりました。最新号(アーティストの大原櫻子さんが表紙)は、全国からの問い合わせが殺到し、発行1週間で完売しました」(久保田)

PRIMODEにとってコアバリューである、プロのスタイリストによるスタイリング提案。その価値の善し悪しを決めるのは、他ならぬスタイリストです。ウェブのプレスルームやフリーペーパーを通して、PRIMODEに自然とスタイリストが参加してくれる仕組みを作り上げているのです。

ファッションを入り口にライフスタイルを提案

2014年10月末に出資を受けたPRIMODEは、現在、社員10名強のチーム。目下注力するのは、春にリリース予定のアプリの開発です。今後、プロモーションに力を入れた際のユーザー数の増加に十分対応できるよう、スタイリストの獲得や育成にも力を入れています。まず目指すのは、1年以内にダウンロード数12万件。

オンラインで商品が売れない理由を突き詰めて考えると、それは「従来のECサイトが商品を陳列しているだけに過ぎず、提案が欠けているから」だと中嶋さんは話します。PRIMODEなら、オンラインでも、スタイリストがコーディネート提案を通してブランド価値を伝えてくれる。また、リアル店舗に劣らない提案をしてくれます。また、まとめ買いが多いPRIMODEなら、「自社ブランドが、他のどんなブランドと組み合わせて購入されているか」を把握できるという付加価値も。

まずはファッションの提案サービスとして展開するPRIMODEですが、その先にはより大きなビジョンを描いているのだと言います。

「今はファッションに特化して提供していますが、次は、衣食住の「住」にアプローチするようなことも考えています。PRIMODEβ版に参加してくださるブランドには、既にインテリアや雑貨などを展開している企業様もあるので、比較的早いうちに、ライフスタイル全般に関して提案するサービスにしていきたいと思っています」(中嶋)

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