Asia Leaders Summit 2015: インターネット企業経営者らが語る今年注目のテックトレンド、経営の課題点

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これはシンガポールで開催されている、Asia Leaders Summit 2015 の取材の一部だ。

Asia Leaders Summit 2015 の最後のセッションは、Keymans Talk と題し、日本と台湾の注目のネット企業/インキュベータ経営者らが、企業経営における課題点などを議論しあった。このセッションに登壇したのは、

  • GREE SVP、GREE International CEO 青柳直樹氏
  • V-CUBE 創業者兼CEO 間下直晃氏 …関連記事
  • AppWorks(之初創投) 創業パートナー Jamie Lin(林之晨)氏 …関連記事
  • Cerevo 創業者兼CEO 岩佐琢磨氏 …関連記事

モデレータは、World Innovation Lab の共同創業者兼 CEO 伊佐山元氏が務めた。

2015年、一番楽しみにしている、新しいテクノロジートレンドは何か?

Cerevo の岩佐氏は、新規格 BLE 4.2 と USB 3.1 を楽しみにしていると述べた。

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Cerevo 岩佐琢磨氏

IoT で一般的に採用されている現在の BLE はスマートフォンなどを通さないとインターネットと接続できない。

BLE 4.2 がリリースされれば、IoT がスマートフォンを介さずダイレクトにルータと接続でき、IoT が IPv6 で直接インターネットと通信ができるようになり、さまざまな可能性が広がる。

岩佐氏によれば、今年の冬くらいまでには、BLE 4.2 をサポートしたチップが発売されるようになるだろとのことだ。

USB 3.1 については、EU が Apple に対して Android と同じ形式の USB コネクタの採用を求めており、2016年以降はすべてのコネクタは統一されるだろうとのことだ。すなわち、Android であれ、iPhone であれ、すべてのスマートデバイスは統一の共通されたコネクタで接続が可能になる。

AppWorks の Jamie は、自走式自動車に興味があると語った。自動車は過去50年にわたり、ほぼ同じような形で利用され、裕福な人たちだけドライバーを雇える状況だった。伊佐山氏は、アジアは非常に人が多いエリアもあり、世界で自走式自動車が普及するのは難しいのではないかと聞くと、Jamie は人間の感覚よりもセンサーの方が優れており、結果的に事故も起きにくくなるのではないか、と語った。

V-CUBE の間下氏は、ドローンに興味があると語った。

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V-CUBE 間下直晃氏

V-CUBE はコミュニケーション・サービスを提供しているが、なぜドローンに興味があるのかと投資家らから聞かれることがある。ドローンは安全性の確保のプロセスで少し時間はかかるだろうが、人が出向くにはリスクの高い場所を確認する用途において、非常に大きな可能性がある。

V-CUBE の顧客に中国の天津市政府がいるが、彼らは災害場所の状況確認のために、市政府の指令センターとの間で V-CUBE を使ってコミュニケーションをしている。ドローンが使えれば、そもそも、現地に人が出向かなくてもよくなる。

GREE の青柳氏は昨年入手した Google Glass には興味があるが壊れてしまって使えないと答え、会場の笑いを誘った。また、Tesla はいい車なのだが、カーナビが付いていないなど、他にも改善すべき点がまだ多く残っていると指摘。デバイスと組み合わせることで、2020年のオリンピックを念頭に、例えば、羽田空港から都内まで自走式自動車で向かうようなことが可能になると、選択肢が拡がるだろうとの期待を述べた。

Jamie、間下氏、岩佐氏の3人の話を聞いた岩佐氏が、ドローンの安全性について、問題解決の可能性を語った。

車にエアバッグや ABS のような事故防止技術が導入されたのと同様に、ドローンにもそのような技術が追加されていくだろう。ドローンは空中を飛んでいるときによく事故が起きるので、パラシュートを搭載するようなソリューションは既に存在している。ホンダがスマートフォン・ケースにエアバッグを搭載したようなジョーク・ビデオを公開しているが、そのようなアイデアが実現するようになれば、ドローンはよりビジネスに応用しやすくなるだろう。

企業経営の上で、最大の課題は何か?

青柳氏はこの問いに、ゲームに代わる Next Big Thing を定義しなければならない、と答えた。

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左から:World Innovation Lab 伊佐山元氏、GREE 青柳直樹氏

GREE がグローバルオペレーションを始めたのは4年前だが、その経験を GREE のメンバーは楽しんでいた。

GREE のメンバーは決して保守的ではなくリスクテイカーであり、課題は Next Big Thing を何に定義するかということ。十年前、GREE は10人しかいないスタートアップだったが、モバイルの SNS にシフトして、ビジネスが非常に大きなものになった。そのような Next Big Thing を求めている。

間下氏にとって、V-CUBE の課題は、ビジネスのスピードをどう保つかということ。日本やグローバルで、常にコミュニケーションサービスを提供する大企業と競争している。そして、顧客である大企業は、サービス品質を非常に気にする。

十年前の V-CUBE と比べてみると、今よりスピードが速かった。我々は、スタートアップと競争したいと思わないといけない。

Jamie は AppWorks でアクセラレータ・プログラムを運営しており、彼の元には多くのスタートアップの CEO がアドバイスを求めにやってくる。

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AppWorks Jamie Lin 氏

CEO は人々のリーダーであるべきという話をしている。

人はそれぞれ違う。違う人を違ったようにマネージメントする。それが CEO に求められるスキル。他人を変えるのではなく、自分が変わらなければならない。

岩佐氏は、「言うに易し、行うに難し」という持論を、自社の事例を引き合いに出して説明した。

品質を保て、スピードを保て、というのは、社員にいくら言葉で言っても効果的ではない。トヨタや家電メーカーでは、一つのプロダクトを作るのに数百から数千人のエンジニアが関わっている。しかし、当社では一つの IoT プロダクトを出すのに4人しか関わっていない。4人でハードウェアとサーバーサイドの両方を見ている。

この人数の少なさが彼らのモチベーションを保つのに役立っている。自分たちが手がけたプロダクトが市場に出れば、そのプロダクトのことを自分の子供のように思うからだ。

IoT はインターネットにおいて、次の大きな波になると言われる。そこには、どんなビジネスの可能性があるか?

岩佐氏は、IoT とはいえレッドオーシャンになっていると指摘。したがってニッチを狙うのだが、今日のニッチが、将来もニッチのままとは限らない。そのような可能性がある分野を探してチャレンジしてみるべきだと述べた。

例えば、IoC (Internet of Cup) というのが考えられる。ペットボトルの会社に行っても、彼らは IoT を作るための人材や設備は持っていない。そういう分野に可能性を見出すことはできる。

間下氏は、IoT が持つ問題を提起した上で、生活に密着した分野への応用に可能性を見出した。

IoT の大きな問題は、マネタイズをどうするかということ。ヘルスケアや医療に大きな可能性があるだろうと、今朝会った人も言っていた。

シンガポールでは毎朝、非常に多くの人がジョギングしている。健康を保つことは、人々にとって最優先課題だからだ。こういうところに IoT を適用すれば、マネタイズに大きな可能性があるのではないか。

成長著しいアジアの消費者パワーは、世界のリスクマネーを魅了し続けている。IoT がアジアの市場にもたらすインパクトも計り知れないだろう。

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