女子大生が共同創業した美容師のサロンモデルハントを簡単にする「Coupe」がCAVから資金調達

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Coupleの共同ファウンダー 竹村恵美さん(左)と渡部愛子さん(右)
Coupeの共同ファウンダー 竹村恵美さん(左)と渡部愛子さん(右)

2月19日に正式リリースされた美容師のサロンモデル探しを簡単にするウェブサービス「Coupe(クープ)」。登録するサロンモデルの数は130人におよび、ベータ期間からのサロンモデル依頼件数の累計は1,200件を超えています。また同社は、サイバーエージェント・ベンチャーズからの資金調達を発表しました。

Coupeを立ち上げたのは、今年4月に大学を卒業する竹村恵美さんと渡部愛子さん。インターンを含めて18歳から23歳から成る7人チームを率いるというお2人に、Coupeを開発する上でのこだわりや、学生起業して学んだこれまでの最大の教訓などについて聞いてきました。

大変そうな美容師の友人を見て着想した「Coupe」

Coupeに登録するサロンモデルたち
Coupeに登録するサロンモデルたち

竹村さんが、Coupeの構想を思いついたのは身近な人の存在がきっかけでした。中学生の頃から一番の仲良しが、表参道の有名な美容院に就職。ところが美容師という職業は休みが少なく、ただでさえハードワーク。それをさらに辛くするものに、サロンモデルハントがありました。暑い日も寒い日も、街頭に立ってサロンモデルを探さなくてはいけない。

現役女子大生として、大学生の間で読者モデルになることを上回るほどにサロンモデルを目指す子が増えていることを知っていた竹村さん。大変そうな友人の姿を見て、サロンモデルと美容師がもっと簡単に繋がれる方法があるはずだと考えてたどり着いたのがCoupeでした。

無料で髪を切ってもらうのはカットモデル。サロンモデルは、美容院や雑誌のヘアカタログなどのために撮影されるモデルのこと。そんな大役にふさわしいモデルを集めるために、Coupeは厳しい審査を設け、現在の登録倍率は10倍に及びます。メール(書類)審査やカメラテスト、礼儀作法や写真写りなどを合格したモデルを厳選して登録しています。

「最近はサロンモデルになりたいという子がすごく多いんです。周りを見ていても、読者モデルよりサロンモデルの方が人気なくらいです。スカウトなどでリクルートすることもあるんですが、集まる応募がすごく多くて、今の倍率は10倍です」(渡部)

マネタイズは手数料一律5000円の法人向けビジネス

美容師とサロンモデルをマッチングするCoupeですが、美容師の利用料は無料です。立ち上げ当初は美容師への課金モデルなども検討したものの、美容師や美容院へのヒヤリングを繰り返した結果、現実的ではないと判断。有料でウェブサービスを利用することはほぼ皆無で、そもそもウェブサービス自体あまり使わないことが判明したからです。

現在は、法人向け事業「Coupe for Business」をマネタイズの柱に据え、既にリクルートやDeNAが活用しています。例えば、アプリのイメージ画像のモデルだったり、メイクのモデルだったり。リクルートが運営する「Preno」(実装実験段階中)は、女の子のポーチの中身がわかるウェブサービスで、登場する女の子の9割がCoupeのモデルです。また、Uber Japanへの広告モデル派遣の実績もあります。

モデルに仕事を依頼するとなると、芸能事務所を通す必要があって決定までに時間がかかったり、価格も不透明だったりでなかなかハードルが高いもの。一方のCoupeは、法人への利用手数料を今のところ一律5000円に設定。また、モデルへの支払いも時給制で、交通費だけ出れば仕事を受けるという人から、時給5000円のモデルまでさまざまです。サロンモデルの時給を明示することで、法人が安心して依頼できるようにしています。

内定を辞退して決めた起業の道

Coupeの2人とCAVの皆さん
Coupeの2人とCyber Agent Venturesの皆さん

竹村さんには、指輪型デバイス「Ring」の開発会社でインターンをしていた経験が。社会のことや会社のことが何もわからない学生なのに起業なんて…と弱気になっていた当時、ログバーの社長である吉田卓郎さんの言葉が背中を押してくれました。「知らないことこそ一番の武器。会社に染まってしまうとできなくなってしまうことも多いよ」、と。

大学を卒業するまでに何とか資金調達をするために、昨年11月から資金調達に向けて動き出したという竹村さん。先日、無事に口座への入金が確認され、いよいよ事業に注力できるところまでたどり着きました。でも、その間、投資家とのミーティング後に悔しくて泣いて帰ったことも。学生の彼女にとっては、何もかもが新しいことだらけで、起業や投資の話も本の中の情報としてしか知りませんでした。

「自分で資金調達をしてみて、投資のシステムを理解できたことは本当に勉強になりました。特に資金調達に動いた昨年11月からの数ヶ月間は大学の4年間の学びを上回るものがあったと思います」

モデルの管理を任される渡部さんは、スタートアップをやりながら、メンタルも体調も自分で自分のことを律し、自己管理する大切さを実感していると言います。

「初めてのことだらけで色々失敗したり、上手くできなくてへこんだりしますけど、そんな中でも自分のいいところを探してそれを活かしたり伸ばしたりしようと思考できるようになってきました」

18歳から23歳で成るユーザーの気持ちがわかるメンバー

Coupeは、現在インターン3名と元美容師のメンバー、エンジニア1名の計7人のチーム。また、美容院やサロンモデルに興味がある、そこにある課題を解決することに共感するエンジニアを随時募集中だと言います。若い女性メンバーが多いため、サロンモデルというユーザーの立場で考えたサービス作りができています。

「Coupeは大人の男性には作れないサービスだと思っています。ユーザーと同世代だし、可愛くしてもらって撮影してもらって、写真データをもらう。サロンモデルになりたいっていう子の気持ちがすごくわかるんです。だからこそ、もっとモデルの子たちが輝ける形を一緒に考えていけます」(竹村)

Coupeがあることで、これまでは街中を歩いて声をかけられるのを待つしかなかった憧れのサロンモデルへの道が、いっきに身近になる。サロンモデルになりたいと願う子の夢を叶えてあげられるかもしれない。サロンモデルにとって最良のことを考えながら、そして彼女達を巻き込みながら一つの大きなチームとしてサービス作りに取り組んでいます。

「単なるサロンモデルの登録サイトではなくて、Coupeというプラットフォームがみんなの憧れのステータスのようになることが目標です。そのために、オンラインだけじゃなく、モデル同士が仲良くなるようなオフラインの交流会を開いたりしています」(渡部)

法人からのサロンモデル依頼を月間100名に

事務所に頼ることなく自分自身をマネージメントできるモデルを増やせば、法人がモデルをダイレクトにキャスティングできるようになるはず。今後はまず法人事業に力を入れ、月間で100名へのモデルの依頼件数の獲得を目指しています。

また、サロンモデルの登録数を毎月20名以上増やすこと。まだまだサロンモデルだけで食べていくのはなかなか難しいのが現状ですが、Coupeが主な収入源になるようなモデルを増やしていきたいと話します。現在は竹村さんの自宅がオフィス代わりですが、将来的には美容院が立ち並ぶ表参道周辺にオフィスを借りて、サロンモデルが自然と集まってコミュニケーションを楽しむような溜まり場を作る予定も。

「起業という選択肢があることを色んな人に伝えていきたいです。自分では自分のことを起業家とは思っていなくて、単純にベストな道を進んでみてたどり着いたのがここだったという感じです。もし自分が選んだ道で大失敗するようなことがあっても、そこから得られる経験や学びはすごく大きいはず。人によって何がベストかはそれぞれですが、自分で立ち上げるという道があるということを伝えていきたいなと思います」(竹村)

確かに、知らないからこそ飛び込めることがある。また、人には向き不向きもあればタイミングもある。でも、こうして起業という道を選んだ2人が、これから同じように新しいチャレンジに挑もうとする若い女性の背中を押してくれるのではないでしょうか。Coupeのまだ始まったばかりの挑戦を見守っていきたいと思います。

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