大阪大学が「起業・製品化プロジェクト」から生まれた〝光〟関連製品を披露する「フォトニクスデイ」を開催

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏、武田泰二郎氏による寄稿を編集部で再構成したものです。


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記者会見でプロジェクトの成果を発表する、大阪大学フォトニクスセンター長の河田聡氏
(撮影:武田泰二郎氏)

光やレーザーに関わる先端科学技術を研究する、大阪大学フォトニクスセンターは2日、大阪・吹田キャンパスにある同施設で7回目となるイベント「フォトニクスデイ(Photonics Day)」を開催、2011年から行われている「起業・製品化プロジェクト」から生まれた製品が複数披露された。

このプロジェクトでは、2011年に4件、2012年に3件、2013年に2件と、これまでに応募件数44件からから計9件が採択されており、いずれも大阪大学の教員や学生からの応募である。

披露された製品の中でも、特に注目を集めたのが「熱輻射スペクトルによるeco電球」だ。これは、フィラメント表面に数100nm単位の微細な穴を開けることで、熱輻射をコントロールした新しい白熱電球で、赤外線の輻射そのものが抑えられるため熱が発生せず、またLED電球以上の90%近い発光効率を達成している(LED電球では電力の50%、既存の白熱電球では10%が可視光に変換される)。

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熱輻射スペクトルによるeco電球(撮影:武田泰二郎氏)

LED電球の白さは波長が制限されているため、場合によっては人の目に〝冷たく〟映る。これに対し白熱電球は全波長が入ったなだらかなスペクトルであるため、より自然に見える。レストランなどの食品を扱う現場では未だに白熱電球が用いられることもあるという。しかしパナソニック、東芝といった大手メーカーは白熱電球の製造から撤退しているため、ここにニッチな需要を見込んでいる。

加えて、この日のイベントでは、フォトニクスセンターと協業する多くのスタートアップが出展、他社との協業や資金調達についても議論が交わされた。

フォトニクスセンター長の河田聡氏は、「イノベーションとは技術革新ではなく、新しい仕組みを作ること」というシュンペーターの概念をそのまま実行したいと述べた。既存の産学連携では異なるセクション同士が他力本願になってしまい、完結に至らない場合が多々ある。フォトニクスセンターでは型に捉われない産業創出を支援しており、発明者が自らベンチャーを起こすケース、企業とパートナーを組むケース、既にあるベンチャーの中からカーブアウトするケースなど、様々な形で製品化に成功している。

なお、今回のフォトニクスデイで発表された、「熱輻射スペクトルによるeco電球」以外の製品については、次のそれぞれのウェブサイトから確認できる。

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