オーストリア最大のスタートアップ祭典「Pioneers Festival」が東京予選を開催、排便タイミング予測デバイス「D Free」が優勝

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優勝した D Free のチーム。東京〜ウィーン往復相当のマイレージが、日本航空から贈呈された。

Pioneers Festival はオーストリア・ウィーンで毎年開催されるスタートアップ・イベントで、2011年の開始以来、今年で5回目を数える(今年の Pioneers Festival は5月28日と29日に開催)。

このイベントに日本から参加する代表チームを決める東京予選が今日 Impact HUB Tokyo で開催され、排便タイミング予測デバイスを開発する D Free が優勝した。入賞者と他の参加スタートアップを見てみよう。

なお、審査員を務めたのは次の方々だ。

  • Nikola Pavesic, CEO at Justa.io
  • Vickie Paradise Green, Founder of Paradigm / Chairman of the board at Run for the Cure® (乳がん早期発見啓発活動推進協議会)
  • 株式会社アドライト CEO  木村忠昭氏
  • Shingo Potier de la Morandière, co-founder of Impact HUB Tokyo
  • Tim Romero, former Representative Director of Engine Yard, K.K. / Host of Disrupting Japan podcast

Impact Hub Community Award(1位):D Free(聴衆賞も受賞)

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D Free は、排便タイミングを予測するウエアラブル・デバイスだ。超音波を使って腸内の便の大きさを計測、人が便意を感じるようになる仙骨が刺激されるまでの時間を予測してくれるので、ユーザはあわててトイレを探す必要がなく、便失禁の心配から解放される。健常者はもとより、パーキンソン病患者、身体障害者や高齢者など容易にトイレにたどりつけない人々が、おむつの利用をする必要が無くなり、人間が自身の尊厳を取り戻すのを助ける。

同社はプロトタイプを作成し、便の大きさ検出と排便タイミング予測が可能であることを実証済。個人差については、機械学習機能により精度が上がっていくしくみ。2016年 Q1 に自己利用ユーザに向けてマーケティングを開始、2016年Q3 には介護施設や病院での利用につなげたいとしている。

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2位:Mister Suite

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Mister Suite は、AirBnB に代表される宿泊施設の貸し出しホストや小規模旅館オーナー向けの業務代行サービス。ホストや旅館オーナーに代わって、問い合わせ対応、宿泊者への鍵の貸し出し、清掃作業などを提供する。東京オリンピックが開催される2020年には、海外から日本への2,000万人の観光客が訪れると推測されているが、一方でホテルの供給部屋数は毎年1,800室ずつしか増えておらず、年間370万人分の宿泊施設は不足する。一方、東京の住居などの未入居率は17%なので、Mister Suite は同社サービスの提供により、これらの空部屋を宿泊施設として活用されるのを促進したいと考えている。

予約管理のシステムが清掃の指示と連携しており、ある滞在客が退出した後、新たな客をいつ受け入れられるかなども自動的に計算され、予約受付ページに反映されるようになっている。将来は、小規模ホテル、旅館、温泉、他のシェアリング・エコノミー・ビジネスにも商圏を広げていきたいとしている。

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3位:Wovn.io

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Wovn.io は、JavaScript のコードを一行挿入するだけで、ウェブサイトを複数の言語に翻訳できるソリューションだ。世界には30億人のインターネット・ユーザがいるが、そのうちの70%は非英語話者とされる。Wovn.io は導入したウェブサイトは、これら非英語話者のユーザへのアクセスが可能になる(彼らのピッチは英語話者向け)。

9ヶ月前にローンチし、これまでに12万ページを翻訳。ウェブサイト・オーナーはメニューから機械翻訳にするか人間翻訳にするかが選べ、前者は Google 翻訳、後者は gengo によって翻訳される。現在、WordPress、Drupal など各種CMS への導入ができるしくみを開発中だ。

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以下は入賞しなかったものの、東京予選で雄弁なピッチを披露したスタートアップ・チームだ。

Tamecco

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Tamecco は、アマゾン・ドットコムで体験できるレコメンデーションなどのユーザ体験を、リアルの対面販売の世界に持ち込もうとするプラットフォーム。人工知能ローヤルティ・アプリを使って消費者行動を収集し、実店舗において商品のレコメンデーションの機能を提供、ユーザの好みや位置情報などに基づいて、店舗のオーナーは割引クーポンなどをアプリに配信できる。

美容院、リラクゼーション店舗、ラーメン店などのフランチャイズ店舗がターゲット。現在、吉野家、立ち食い寿司や、Re.Ra.Ku(リラク)などの一部店舗に導入している。iBeacon を使ってしくみでは Android ユーザをカバーできないが、Tamecco では iPhone ユーザも Android ユーザも100%捕捉できるとのこと。また、スマートフォンを持っているだけでよく、ユーザに能動的なアクションを求めないので、若年層のみならずシニア層にも使ってもらえるとしている。

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JANDI

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JANDI は企業向けのコミュニケーション・プラットフォームだ。この分野では Slack が有名だが、JANDI チームによれば、Slack は欧米で開発されたしくみであるため、必ずしもアジアのビジネス・シーンのニーズを反映していない。JANDI では東京、台北、ソウルにオフィスを持ち、それぞれの地域のユーザニーズを反映したプラットフォームを開発することで差別化を図りたいとしている。

同社は昨年11月、韓国の Softbank Ventures Korea 、中国の VC である Cherubic Ventures(心元資本)、韓国の Ticket Monster 代表シン・ヒョンソン(신현성)氏らから200万ドルを資金調達している。

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PAYGATE

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PAYGATE はクレジットカードの決済システムを開発。Square やコイニーなどの決済サービスとは差別化路線をとり、ICチップが埋め込まれたクレジットカードの決済を取り扱うなど、より高い信頼性や安全性が求められる大企業での決済需要をターゲットにしている。PCI-DSS 認証を受けた決済SDKも提供しており、カード決済機能を含むアプリを開発するデベロッパは、このSDKを使うことで PCI-DSS 認証を省くことができ開発工期を短縮することができる。

FlashTouch

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NFC を使った認証システムや決済システムは、OS のバージョンが一定以上でないと使えなかったり、それぞれのシステムに合ったアプリを導入する必要がある。FlashTouch は、どんなスマートフォンにも搭載されているウェブブラウザを使って、光の点滅によってユーザ情報を店舗などに配置されたデバイスに伝達、モバイル決済、個人認証、カギ認証などを可能にする。特許取得済みの技術を利用しており、(店舗などデバイスを配置する側の)1IDあたり1ヶ月20ドルで提供される。

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Odigo

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Odigo は海外から日本に来る旅行者向けの旅行計画・旅行体験共有プラットフォーム。地元に住む写真家や作家によって、観光スポットが紹介される。観光振興事業を行っている都道府県や市区町村の宣伝予算を獲得してマネタイズする計画。

Zest

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Zest は、各種業界向け派遣作業担当者の行動予定表自動化システムを開発。現在、建物検査業界で市場テストを行っている。導入費10万ドル、月額料金2,000ドルと、業界標準の同様のシステムの約10分の1で利用できるのが最大の特徴。アジア諸国への展開のため、シンガポールでのオフィス開設を計画している。

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Swingnow

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メッセージのやりとり、カレンダー管理、連絡先管理の効率化を追求するプラットフォーム。Swingnow は Swingmail(メッセージング)、Swingcal(カレンダー管理)、Swingbook(連絡先管理)の3つのアプリで構成されており、英語圏ではすべてが公開済。日本では昨日、Swingmail が公開された


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審査員とのQ&Aセッション
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Pioneers Festival 設立者の Andreas Tschas(右)と、東京予選オーガナイザーの Andre Casaclang(左)

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