渋谷付近のスタートアップを集めて開催しているピッチイベント「Sprout」が朝日新聞メディアラボ渋谷分室で開催された。
「Sprout」は、ツクルバ・IBMが協力して展開するインキュベーションプログラム「IBM BlueHub(ブルーハブ)」とのタイアッププロジェクト。
ピッチするのは主にC向けサービスを提供しているスタートアップたち。会場に足を運ぶのもVCやメディアというより、ユーザがほとんどでファン獲得を目的としているというのも特徴だ。
<関連記事>
規模を拡大して開催された第三回目の「Sprout」に登壇したのは、以下の6社。
- 「オフィスおかん」を提供するおかん
- 中古物件オンラインマーケット「cowcamo(カウカモ)」を運営するツクルバ
- 資料作成のクラウドソーシングサービス「SKET(スケット)」を提供するスマートキャンプ
- 音楽コミュニティアプリ「nana」を運営する nana music
- アメリカ発のスマホでダイエット支援をする「Noomコーチ」を提供するNoom
- にネイティブが回答してくれる「HiNative」を提供するLang-8
ファンに向けたサービスピッチ
nana
トップバッターとしてピッチを実施したのは、nana music代表の文原明臣氏。「nana」は人が投稿した曲や歌に対して、他のユーザがかぶせて演奏したり歌を歌うことができるサービスだ。
これまで何度か本誌でも取り上げてきているが、先日、投稿楽曲再生数が累計1億回を突破しており、現在成長中。文原氏は「今後の最優先項目はユーザスケール」だと語り、そのためのアクションとしてLIVEの開催をあげた。
来年、武道館で1万人のLIVEを開催予定だと発表。その前哨戦として今年の8月23日に品川プリンスステラホールでユーザ参加型のフェスを実施する。出演者、イベントスタッフ、グッズ企画などすべてがユーザによって開催されるというイベントだ。
文原氏はピッチの締めに「音楽を通じてもっと人生を豊かにしていきたい」と語った。
<関連記事>
- 約70万人のサンデーアーティストが集う音楽コミュニティアプリ「nana」、投稿楽曲再生数が累計1億回を突破
- リリース二周年を迎えた音楽アプリ「nana」は、新たな音楽体験の創造とネットスタンダードな楽器作りを目指す
SKET
次にピッチを行ったのは、スマートキャンプ代表の古橋智史氏だ。スマートキャンプは、クラウド資料作成サービス「SKET」を開発しているスタートアップ。昨年開催されたインキュベイトキャンプにも参加している。
今回ピッチで発表したのは「SKET」ではなく、現在開発中の「Boxil」というサービス。良い資料を作っても資料がコンフィデンシャルであることが多く、公開できない、
作成した資料をもっといろいろな人に見てもらいたいといった理由から「Boxil」を開発するに至った。
「Boxil」ではユーザは良い資料を大量に見ることができる。掲載されている資料は、企業の営業資料、インフォグラフィック、業界特化コンテンツなどだ。資料を掲載する企業側のメリットは、資料を掲載することで自社事業に関心をもってくれる人を可視化し、直接コミュニケーションすることを可能にするというものだという。
今年の4月1日リリース予定としており、現在こちらのページから事前登録を受け付けているそうなので、関心のある人はチェックしてみては。
<関連記事>
HiNative
次に登壇したのはLang-8代表の喜洋洋氏。ピッチしたのは、リリースから4ヶ月が経過した新アプリ「HiNative」について。
外国語を勉強するときに、単語やフレーズを覚えるだけでは身につかないという課題意識と、身に付ける上で大事なことはネイティブスピーカーにフィードバックをもらうことだと考えていた喜氏は、ネイティブスピーカーに直接表現を質問することができるアプリを開発した。
質問のテンプレを用意しているので、質問するハードルが低くしており、また、わからない単語が写っている画面のスクリーンショットを撮影してそれを使って質問することも可能だという。
最近では音声機能も新しく追加しており、発音をネイティブに教えてもらうことも可能になっている。日本ではまだアプリは利用できないが、ウェブでは日本語でも使用できる。現在、120言語に対応しており、リリース4ヶ月で利用している国は160カ国まで伸びているそうだ。
質問への回答は早い時だと5分ほど、平均すると1時間ほどで回答が返ってくる状態。今後は回答のインセンティブになるようなゲーミフィケーション的な要素も導入を検討しているという。
<関連記事>
- 英語は「教えて学ぶ」ーーLang8の新サービス「HiNative」がアプリ公開で1万ユーザーに到達
- 50万ユーザーを抱えるある学生起業家の苦悩と挑戦
- ソーシャル語学学習のLang-8がサイバーエージェント・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施
cowcamo
休憩を挟んで後半に登壇したのは最近、資金調達とアドバイザーにフリークアウトの佐藤裕介氏が就任することを発表するなど、リリースが続いていたツクルバ共同代表の中村真広氏だ。
ピッチしたのはツクルバが運営している中古不動産物件のマーケットプレイス「cowcamo」について。同サービスでは中古物件の購入、売却、そして中古物件に関するコンテンツを見て楽しむことができる。
新築から中古ストックの活用をしていこうというマーケットの変化、PCからスマートフォンへという情報接点の変化、そして値段や立地などのスペックだけではなく、その場に込められたストーリーを重視するようになってきているという消費者の変化。この3つの変化の波に乗っていこうというのが「cowcamo」だ。
<関連記事>
Noomコーチ
今回、唯一の海外発スタートアップ「Noom」もピッチを行った。同社が提供している「Noom コーチ」は、現在世界で1400万ダウンロードを誇るアプリ。食事の記録と独自のコーチングを組み合わせて、減量目標、日々の活動、性別などを合わせてユーザのダイエットをサポートしている。
ピッチ内で発表されたNoomの数字は、ダイエットによって減った体重はユーザ平均でマイナス5kg、ユーザのアプリ継続率は約64%だという。これを可能にしているのは、年52回、週1回のペースで実施されているというプロダクトの改善。頻繁にユーザヒアリングなどを実施して、プロダクトの改善を常に行うことでこの2年で大きくユーザの継続率が上昇しているそうだ。
<関連記事>
- NY発健康支援系スタートアップNoomが日本語版アプリをローンチ、10万歩でギフト券が当たるキャンペーンを展開
- NY発の健康支援系韓国スタートアップのNoomが、1,500万ドル以上を資金調達
- 世界累計1,200 万人が使うダイエットアプリ「Noom コーチ」が大幅リニューアル、Appleの新ヘルスケアアプリケーションと連携
オフィスおかん
トリを飾ったのはオフィス向け惣菜の定期宅配サービス「オフィスおかん」を提供するおかん代表の沢木恵太氏。「オフィスおかん」はオフィスグリコのように、オフィスに24時間設置される冷蔵庫・専用ボックスにお惣菜をストックし、社員はいつでもそこから食事を取り出して食べることができる。
お惣菜を作っている業者の余っている稼働率を活かしてこれまで対象となっていなかったオフィス向けにお惣菜を提供し、ウォーターサーバー等を運んでいる業者の空き時間を物流として活用している。
「オフィスおかん」は提供開始から1年が経過。現在、リリース当初目標としていた導入企業数100社を達成しているという。食べられている食事のデータを取得し、売れるものを提供するよう最適化も図っている。
今後は、アプリを提供して決済をアプリで行えるようにし、リアルタイムにデータをとれるようにしつつ、決済・物流周辺にも進出していくことを検討していると語った。「オフィスおかん」を自社に導入してもらいたいと考えている人は、おかんのサイト上から「おねだり」ができるそうなので、こちらから希望を伝えてみてはいかがだろうか。
<関連記事>
- オフィス向け惣菜の定期宅配サービス「オフィスおかん」の正式版がスタート、ワークフードバランスの実現を目指す
- オフィス向け惣菜の定期宅配サービス「オフィスおかん」のおかんがサイバーエージェント・ベンチャーズ、オイシックスから資金調達
- 「オフィスおかん」が東京23区に対応エリアを拡大し、新料金プランでの提供もスタート
6社のスタートアップがピッチを行い、会場に詰めかけた参加者たちから投票が行われた。投票の結果、優勝したのはおかん。IBM特別賞は、nana musicが受賞した。
今後、「Sprout」は開催ペースを上げ、次回開催の会場にはヒカリエの8階イベントスペースを予定しているなど、規模を拡大していく。ユーザ向けにピッチしたいと考えているスタートアップ、また新しいプロダクトを知るのが好きなユーザの人は要チェックだ。
BRIDGE Members
BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。- 会員限定記事・毎月3本
- コミュニティDiscord招待