Wikimedia Foundationと8つの団体がNSAと司法省の大量監視を告訴

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Image Credit: Eric Blattberg / VentureBeat
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ユビキタスオンライン百科事典Wikipediaの親会社であるWikimedia Foundation(以下Wikimedia)は、他の8団体と共同でアメリカ国家安全保障局(NSA)と司法省(DOJ)を告訴する旨を発表した。これは「大量監視の流れに対する挑戦」とみられる。

問題となっている訴訟はもちろん、NSAの請負人から内部告発者に転じたEdward Snowden氏によるメディアへのリークと関係している。この事件は2013年に端を発し、数えきれないほどのグローバル監視プログラムが明るみに出た。そのうちいくつかは世界の様々な政府との共謀によって運営されていたのだ。

「この訴訟を起こした目的は、世界中のユーザの権利を守るために大掛かりな監視活動計画を終わらせることです」とWikimediaのシニアリーガルカウンセルであるMichelle Paulson氏とゼネラルカウンセルのGeoff Brigham氏は共同執筆しているブログの投稿で説明している。

Wikimediaによる訴訟は、「インターネットコミュニケーションに対する大規模な検索と情報取得」を標的とするもので、これは「アップストリーム監視」と呼ばれることもある。

NSA指示によるデータ収集の多くは、2008年の修正外国諜報活動偵察法(FAA)を根拠とし、米国外の人とのコミュニケーションに介入するためにインターネットの内部を細かに調査した。しかし、このプログラムの副産物として、純粋な国内データを含むありとあらゆる種類の情報も取得することになった。Wikimediaは「これにはユーザとスタッフ間の通信も含まれているのです」と述べる。

「インターネットの根幹を傷つけることで、NSAは民主主義の根幹をも傷つけようとしています」とWikimedia FoundationのエグゼクティブディレクターLIla Tretikov氏は言う。「Wikipediaは表現・質問・情報の自由にのっとって設立されました。ユーザのプライバシーを侵害することにより、NSAは学問を理解し、創造していくという人類の能力にとって欠かせない知的自由を脅かしているのです」

Wikimediaがこの訴訟の件でパートナーシップを組んでいる団体は、National Association of Criminal Defense Lawyers、Human Rights Watch、Amnesty International USA、Pen American Center、Global Fund for Women、Nation Magazine、Rutherford Institute、Washington Office on Latin Americaの8つである。

合計9つの団体の代表を務めるのは、米国自由人権協会(ACLU)である。この団体は、「米国憲法及び法の下で全ての人に保証されている個人の権利と自由を守るために」活動している非営利組織である。

本件はACLUがNSAを標的にした最初の係争事例ではない。さかのぼること2007年、この組織はNSAに対し「テロリスト監視計画(TSP)」に関連した訴訟を起こした。合衆国控訴裁判所は最終的に、当事者適格の欠如を理由としてACLUの訴えを退けた。この法的概念はつまり、原告は十分な「損害」があることを示さなくてはならないことを意味している。そして2013年、Clapper v. Amnesty International USAとして知られる裁判でも、合衆国最高裁はまたしてもFAAへの訴訟案件を退けた。本件の原告はやはり「当事者適格」が欠如していると判断されたからである。

それでは、Wikimedia含む9団体は今回のケースでNSAに勝てる見込みはあるのだろうか?彼らは大丈夫だと信じているようだ。「2013年の大掛かりな監視活動では、私たちの世界商標を使いながらWikipediaを明らかに参照したNSAによる機密のプレゼンテーション用のスライドが含まれていました」とした上で、「これは、政府がとりわけWikipediaとそのユーザをターゲットとしていたことを示しています。私たちには十分な当事者適格があると信じています」とWikimediaはコメントしている。

Snowden氏による暴露事件を受け、Wikimedia FoundationはNSAの監視活動に対する非難の声を強めることになった。特に、NSAが使用していて「インターネット上でユーザがやり取りしているほぼ全ての情報」を集めることができるXKeyscoreというツールを名指ししている。その上で、Wikimediaは予定していた、より安全性の高いHTTPSプロトコルへの移行を促進している。このプロトコルはすでに提供されてはいたが、デフォルトではなかったものだ。他方で、NSAが主導するデータ収集活動に対しては関与しないことを明らかにしている。それ以外にWikimediaは最近、Twitterのいわゆる透明性向上に向けた取り組み、セキュリティ問題に関してDOJを相手に現在行われている訴訟への支援活動を行っている。

この訴訟について、Wikimediaと8つの原告団体からの訴状はこちらから読むことができる。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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