オープンデータを活用して飲食店の衛生レベルを公開する「Yelp」の取り組み

サンフランシスコの飲食店「The Cheese Steak Shop」のYelp情報。右下に衛生レベルを示す「Health Scores」が掲載されている
サンフランシスコの飲食店「The Cheese Steak Shop」のYelp情報。右下に衛生レベルを示す「Health Scores」が掲載されている

2004年7月に米サンフランシスコで開設された「Yelp(イェルプ)」は、2014年第四四半期時点で月間ユニークユーザー数1億3500万人、ユーザー投稿数7100万件を擁する、世界最大級の口コミサイト。

数多くの消費者からのリアルな評価や感想が蓄積されたこのオンラインプラットフォームは、いまや、カフェやレストランなどのお店選びに欠かせない情報源のひとつとなっています。

Yelpでは、このプラットフォームに登録されている飲食店を、ユーザーがより安全、安心に利用できるよう、一般ユーザーからの口コミと合わせ、各飲食店の衛生状態に関する情報を掲載しようと注力してきました。

2013年には、サンフランシスコ市、ニューヨーク市と提携し、行政機関が有する飲食店の衛生検査データをYelpなどのグルメ情報サイトに統合するためのオープンデータ標準「LIVES(Local Inspector Value-entry Specification)」を開発。

サンフランシスコ市が、2013年1月、LIVESに準拠したデータをYelpで公開しはじめたことを皮切りに、ニューヨーク市、ロサンゼルス市といった大都市から、イリノイ州エバンストン市、ノースカロライナ州ローリー市などの地方都市まで、この取り組みが全米に広がりつつあります。

とはいえ、実際、行政機関のデータベースから飲食店の衛生検査データを抽出するのは、けして簡単ではありません。ほとんどのデータは、Yelpのようなオンラインプラットフォームに対応しておらず、データ形式はもちろん、衛生検査の項目や基準も、地方自治体ごとにばらつきがあります。

そこで、Yelpは、2015年1月、オープンデータ専用クラウドサービスプロバイダー「Socrata(ソクラタ)」との提携を発表。サンフランシスコ市やダラス市など、米国の地方自治体も参加するSocrataのオンラインコミュニティ「Open Data Network(オープンデータ・ネットワーク)」にYelpもメンバーとして加わり、LIVESをより広く普及させるのが狙いです。Socrataは、自社の顧客である行政機関に必要な技術サポートを無償で提供し、この取り組みを後押ししています。

一般消費者にとっては、利用しようとする飲食店の料理の味や店内の雰囲気、サービスの質のみならず、衛生レベルも、気になるところ。Yelpは、ユーザーからの投稿だけでなく、行政機関からの公的データをも集約することで、利便性を高め、ユーザーのより適切な意思決定をサポートし、ひいては、人々の生命と健康の保護に寄与しようとしています。

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