中古車流通の改革を目指してーー自動車整備業のクラウドソーシング「Ancar」がCAVから資金調達

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CAVインベストメント・アソシエイト三田 浩騎氏、Ancar CEO 城 一紘氏、Ancar COO 越島 悠介氏
CAVインベストメント・アソシエイト三田 浩騎氏、Ancar CEO 城 一紘氏、Ancar COO 越島 悠介氏

クラウドソーシングという存在が認知されるものとなり、ある領域に特化したクラウドソーシングもいくつか登場してきている。自動車整備業のクラウドソーシング「Ancar」もそのひとつだ。

Ancarは自動車整備業をクラウドソーシング化することで、中古車の個人売買のプラットフォームを生み出そうとしているスタートアップだ。Ancar代表取締役社長 CEO である城 一紘氏は、前前職でGREEで2年ほど務めていた経験を持つ。

彼はGREEで働いた後、結婚を機に実家の家業である車の整備業の後を継ぐために、実家に戻った。IT業界を経験した後、自動車の整備業の世界を目の当たりにした彼は業界全体に対して問題意識を持った。

城氏「IT化はほとんど進んでおらず、整備だけではなく、車の流通全体も改善していくことができるのでは、と考えました。人の命を預かる整備士は重要な存在であるにも関わらず、待遇や地位がそれほど高いわけではなく、労働環境も良いと言えるものではありませんでした。こうした部分に違和感を感じて、ITの力を使って消費者も含めてハッピーにできないかなと考えてプロダクトを作ろうと考えるようになりました」

城氏はエンジニアではなかったため、プログラムが書ける人を探していたときに、現在Ancar取締役 COOとなっている越島 悠介氏に出会い、2014年の夏頃から活動がスタートしたという。その後、少しずつどういったプロダクトにしていくのかを詰めていった。

中古車流通の改革を目指して

ancar

現在、中古車の流通は、利用者から買取店が買い取り、オークションに流す。オークションから販売店から落札し、消費者へと販売するという流れとなっている。3者が介在することで、価格が高騰している。

城氏「間に入る人が多いため、売りたい人は高く売ることができず、買いたい人は安く買うことができない状態。さらに、コスト競争に対応するために、流通の流れの中にいる整備士がひとつひとつの仕事に丁寧に取り組みにくい構造となっています」

この間のマージンをなくしてしまおうと考え、中古車の個人売買のプラットフォームを作ろうと城氏は考えるようになった。車という商材は安全性が必要であることや素人では触ることができない部分がある。そこで、Ancarはプロを介在させることで信頼性と安全性を担保しようと考えた。

城氏「これで買いたい人と売りたい人が価格で満足できるようになり、整備士の人たちの仕事につなげることもできる構造ができるのでは、と考えています。現在は、地道に営業活動をしながら、整備士の人たちとのネットワークを築いています」

出品の条件は事故者でないこと。まずは、車を売りに出したいと考えている車の持ち主のところにはまず査定士を送る。査定が終了した後、整備工場が点検を行い、出品する。出品している段階では車は一旦売り手の元に戻る。

出品した車に買い手がついたら、Ancarから運送業者が派遣され、買い手の近くの整備工場まで車を運ぶ。そこで最終的な点検を実施した後、買い手の元へと運ばれる流れとなる。一度、整備士を挟んで納車することで、買い手と整備士の間にリレーションが築けるのではないかという狙いもあるという。

成約しなかった場合も、Ancar側で買い取りを行う。出品を決めた段階で、売り手は車が手離れすることは確定する。Ancarが買い取る場合は、売り手側の言い値ではなく、Ancar側の価格での買い取りとなる。全体の仕組みの細かな部分については今後調整しながらローンチに向けて動いていくという。

まずは、エリアを絞って成功するモデルを作ることに注力し、実績を作ったら横展開していくことを目指す。Ancarが目指しているのは、自動車整備業のクラウドソーシングによって中古車売買のプラットフォームを構築することだけではなく、広く自動車に対する体験を変えることだ。業界の構造を変えようという彼らの挑戦に期待したい。

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