ドイツ・ベルリンにオフィスを開設することを発表し、グローバル展開に乗り出したUIデザインエージェンシーのグッドパッチ。現在、グッドパッチは50名以上のメンバーが働いているが、これまで役員は代表の土屋尚史氏1人だった。
海外展開への本格化に合わせて、社内の体制にも変化があった。ベルリンオフィスの代表となるボリス・ミルコヴスキー氏が執行役員に就任した他、東京オフィスにも新しく藤井幹大氏が執行役員として就任している。
グッドパッチは、多様性を重視することをテーマにしていたり、規模の拡大を目指しつつも、クリエイティビティや自由度はなくさないように務めるなど、デザインエージェンシーとしてのあり方にも注力している。
ミッションは「組織」のデザイン
そんなグッドパッチで藤井幹大氏はチーフUXデザイナーを務めている人物。藤井氏は今回執行役員に就任し、グッドパッチ内で特に「組織のデザイン」に取り組む。彼は前職では会社の立ち上げ時期から関わり、自身がデザイナーでありつつ、デザイナーのマネジメント経験があったため、組織づくりに関する知見を持っていたという。
藤井氏「元々自分もデザイナー出身で、良いデザイナーがそのままパフォーマンスをフルで発揮できる環境を作ること、デザインの評価基準を用意することなど、組織をデザインすることが自分のミッションです」
藤井氏は元々、役員になる前提でグッドパッチにジョインしていたそうだ。1年働き、組織にも慣れ、役割が明確になってきたため、今回改めて役員に就任することで、デザイナーたちからの相談窓口を明確にするという目的もあった。
藤井氏「最近では、ホラクラシ−と呼ばれる組織のあり方も提唱されています。従来型の組織ではない新しい組織の姿。グッドパッチも、メンバーが50人超えたあたりから、これまでのやり方での限界が見え始めました。グッドパッチはこのさきグローバルにも展開し、さらに組織は大きくなる。そうなるとよりいっそう組織づくりが重要になります」
フラットな雰囲気をもったカルチャーを保ちながら、強い組織にするか。これをどうデザインするかが大きな課題だと藤井氏は語る。
カルチャーの維持と成長スピード
藤井氏「グッドパッチは、スペシャリストの集団だと思われがちなのですが、正確には集団でスペシャリストなんです。尖ったスキルや能力を持った人が新しく入ってきたとき、その人の能力が活かされるようにし、スペシャリストであり続けられる組織体制、強いチームを作っていく必要があります」
デザイナーは能力を評価することも難しい。評価基準も組織のフェーズに合わせてアップデートしなければならないが、成長していく過程という最も忙しいタイミングで、評価の基準が実態に合わなくなってしまう、と藤井氏は語る。そのため「急成長を見越した評価の仕方」を作る必要があるという。これも藤井氏が取り組む課題のひとつだ。
また、現在、採用の一次面接は藤井氏が担当するようになっている。これまでは土屋氏がすべて担当していたそうだが、ここでも変化があった。代表自らが面接や応募メールへの返信を担当していた理由には、「コンタクトポイントすべてがブランディングに通じる」という考えがあったためだと土屋氏は語る。
そのため、求人の応募にもすぐ返信するようにしており、こうした考えはグッドパッチの自社サービスであるプロトタイピングツール「Prott」のカスタマーサポートにもつながっている。こうしたカルチャーをいかに浸透させるかということも組織をデザインする上では大切になりそうだ。
世の中のデザインを底上げする
土屋氏「日本の経営者層はデザイン軽視の傾向があると考えています。そんな経営者の元で働いていたら、デザイナーは力を発揮できない」
藤井氏「デザインの力をいかに経営課題にできるかが重要です。それはボトムアップで起こすことができる変化には限界があるため。アプリやサービスも、より上流に近いところから関わることで、より良いアウトプットにつなげることが可能だと考えています」
そう語るグッドパッチが目指しているのは、「世の中のデザインを底上げすること」だ。
藤井氏「ひとつひとつの受託の仕事をして、一緒に仕事をした相手にだけデザインの力を知ってもらうというアプローチだと、対応できる数に限りがあります。そのため、プロセス自体を仕組み化して、広く提供していこうとしているのが「Prott」です。
そうやってデザインの力を信じる気持ちがスプレッドしていくことで、社会に影響を与える。そんな未来を描ける人にメンバーになってほしいと考えています」
グッドパッチはデザイナーだけではなく、エンジニアもデザインの力を信じたメンバーが集まっているそうだ。グローバルに展開を目指す東京発のデザイナーチームは、同時にその土台を固め始めている。
これから先、より広い規模、より早い速度で、グッドパッチが世の中のデザインの力を底上げしていく姿に期待したい。
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