インドネシアのインキュベータSkystar Ventures、ローンチから15ヶ月の成長を振り返る

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Skystar Venturesは、ジャカルタの南にあるタンゲランという都市にあるスタートアップインキュベータでありコワーキングスペースである。Skystar Capitalはそのベンチャーキャピタル部門である。これまでにSkystarはBridestoryHijupAdskomというインドネシアの3つのテック企業に投資してきた。

Skystarはインドネシアの複合企業であるKompas Gramedia Groupと密接に関わっているが、この関係は1965年にJakob Oetama氏が日刊紙のKompasを設立したことから始まる。現在このグループには、Gramedia出版社や書店、そしてSantikaホテルチェーンを始め、インドネシア諸島の多くのベンチャー企業が加盟している。

Skystarのインキュベータ・コワーキングスペースは、これもKompas Gramediaに加盟しているMultimedia Nusantara University (UMN)の一部である。同社は未来的で広々とした外観の大学キャンパス内にある卵型の建物の最上階に位置している。エネルギー効率がよく、また屋内にいながら屋外にいるような感覚にもなれる建物だ。ジャカルタのダウンタウンから来ると、大学とその周辺は幾分エリュシオン、すなわち2013年のSF映画に出てくる理想郷のようだ。Skystarは壮観なロケーションにあり、Kompas Gramediaのネットワークからリソースを利用できる。2013年12月のローンチからどうやってここまで成長したのだろうか?

Work takes place inside the pod-shaped offices, the surrounding area has natural climate-control
卵形のオフィス内で仕事をする。周囲は自然を活用した環境づくりがされている。

Skystarのインキュベータプログラムの提供内容

Geraldine Oetama氏は、Skystarのインキュベータプログラムとコワーキングスペースを提供する部門の役員を務めている。彼女はSkystar CapitalのパートナーでKompas Gramediaの創業者一族の一員でもある。同インキュベータでは、ちょうど第2期目のスタートアップグループの参加を認めたばかりだが、現在プログラムで指導を受けている6チームの内の5社は、たまたまUMNの学生だった。Oetama氏によると、同校出身のスタートアップ数は予め決められているそうだ。
「UMN出身者だけに限定はしていませんが、インキュベータプログラムに参加しているほとんどのスタートアップは、同校の学生か出身者です。Skystarプログラムは、大学との緊密な関係によって他とは違うものになっています」とOetama氏は説明している。

Geraldine Oetama, executive director, and Abraham Ryan, community coordinator of Skystar Ventures
Skystar Ventures役員のGeraldine Oetama氏とコミュニティコーディネータのAbraham Ryan氏

当初より、UMNの目標は学生に起業家精神を植え付けることであったとOetama氏は述べている。実際、全学生は3年次にテクノプレナシップ(テクノロジーによる起業家精神)の講義を受ける。この講義は学際的で、UMN全学部の学生が受講する。そしてSkystarのインキュベータプログラムは、起業に尽力する心構えのある学生用にデザインされたこれら講義の延長線上のものとして機能する。

Skystarのプログラム期間は約6ヶ月間だが、スタートアップの受け入れは毎年1度しか行われず、Oetama氏の説明によると、残りの期間は、別の目的のためにスペースは利用されるそうだ。Skystarプログラムでは、スタートアップは資金調達を行わず、Skystarもまたはスタートアップの株式を取得しない形をとっている。プログラムの提供内容は、施設への利用やワークショップ、厳しいメンターシッププログラムに参加できるなど多岐にわたる。

Mac lab at Skystar incubator and co-working space
Skystarインキュベータ・コーワキングスペース内のMacラボ

Oetama氏によると、さらに、プログラムの期間中様々な段階で何社かのスタートアップは、大学から助成金を獲得することができるという。1期目では、スタートアップ3社がこの助成金を受け取っているが、2期目のスタートアップは今のところ受け取っていない。Oetama氏は、この助成金の額については明らかにしなかった。

アイデアを実行に移す

しかしながら、Skystarの第1期生となった5つのスタートアップのうち、現在も活動中なのはたった2つだ。1社はDreamboxというブランディングエージェンシーに姿を変え、もう1社はそのままInigameという独自のインドネシア語のゲームポータルサイトの開発に取り組んでいる。どちらのチームもいまだSkystarを本社として利用している。

「第1期生の多くは大学の勉強に戻りました」とOetama氏はいう。さらに彼女は、インキュベータプログラムに参加した学生の中には大学に籍を置いたままで、まだ試験や卒論に取りかからなければいけない場合もあると付け足した。

One of the teams participating in Skystar incubator’s second batch
Skystarインキュベータの第二期バッチに参加中のチーム

「インドネシアのスタートアップシーンはまだ初期段階にあります」とOetama氏は話す。「起業家に関心と創造力はありますが、まだ学ばなければならないことがたくさんあります。Skystarでは、大学と深く提携することによって、特に初期段階にいる起業家への教育を行っています」。

将来的には、Oetama氏は近隣にある他の大学とも密接な関係を結ぶことを考えている。「UMNが2008年にこのキャンパスをオープンした時は、実質的には何もない所にたった1つポツンと建っているビルのようなものでした」と彼女は振り返る。

現在、このエリアは活気あるジャカルタの衛星都市となっている。住宅街、ショッピングモール、学校、大学が建てられ、ジャカルタ中心部に飽き飽きしている中流階級の人々を惹きつけている。Skystarはタンゲランにとって、スタートアップおよびテック・ハブとして最適の場所にある。

View onto the housing complexes of Tangerang from within Skystar Ventures building
Skystar Venturesの建物内から見えるタンゲランの住宅街

Oetama氏によると、過密で都市的な雰囲気のあるジャカルタとは異なるSkystarの環境は、スタートアップがインキュベータにもたらすアイデアの種類に影響を与えているとは考えていない。

今のところ大きな違いはないと思います。学生のアイデアは彼らにとって意味を持つものであり、彼ら自身が直面している課題でもあります。彼らのモデルが成功するかはまだ実証されていないかもしれません。その点こそ、当社のVCチームがインキュベータと異なる部分なのです。ここでは、アイデアはより独創的で、楽しいものです。

2期目のスタートアップはまだインキュベータに参加したばかりであり、アイデアが大きく変わる可能性も高い。その初期段階のアイデアの1つにはDIYとクラフト分野に関連したものや、インドネシアのアンティークや美術品を対象としたものがある。Skystarでのデモデイは7月末に予定されている。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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