本稿は、B Dash Camp 2015 Spring in Fukuoka の取材の一部である。
(編注:原文の改変に伴い、初版から一部の内容を更新しました – 4月18日午前10時)
2015年4月10日(金)、日本の福岡で開催された B Dash Camp で、日本のソーシャル・ゲーム・インターネット企業である GREE の CEO 田中良和氏が登壇した。GREE の新サービスや新規参入分野について語ることはなく、日本の主要インターネット企業の一つを築き上げるまでの苦悩について、スタートアップやジャーナリストらと語った。
私は GREE を自分のアパートで趣味の一つとして始めた。このようになるとは思っていなかった。
田中氏は、2013年の GREE の初期のことをこう振り返った。
アメリカで Friendster が人気を集めているのを見て、田中氏は会社設立を考え、60年代に人気を集めた「六次の隔たり」(Six degrees of separation、知人を6人介すと世界中の人々と間接的な知り合いになれるという考え)から GREE と社名をつけた。
GREE のサービスは日本の若者の間で広く人気を集めた。しかしこのとき、田中氏は当時スタートアップだった楽天でフルタイムの仕事を持っていた。田中氏は GREE を趣味として運営し、自分のポケットからサーバや運営費を捻出していた。
サービスが10万人に達したとき、田中氏には決断を迫られる転機がやってきた。GREE を続けるために楽天のフルタイムの仕事を辞めるか、GREE をシャットダウンさせて毎日の仕事に戻るかだ。当時の GREE のユーザにとっては幸いなことに、田中氏は前者を選択した。
私のサービスを使ってくれる人が10万人以上もいたんだ。それをやめられるだろうか。
そして、目まぐるしくも2004年、友人で当時 CNET Japan の編集者だった山岸広太郎氏と GREE を公式に立ち上げることになる。
ベンチャーは魅力的なものではない。人を雇う必要があるものの金が無かった。倒産しそうだった。
田中氏はリスクの高い融資を得ることを余儀なくされたが、GREE は順調に成長していった。GREE のPC向けサービスは順調に伸び、新しいユーザが群れをなして、この新しいソーシャルネットワークを訪れ、その結果、田中氏の賭けは清算できたようだ。
会社を成功させるか潰すかという選択だった。
2000年代中盤になって、携帯電話の隆盛がやってきた。
当時、GREE は PC のみのプラットフォームで、PCベース SNS からモバイル SNS へと移ってゆく人々の移行率は、田中氏やチームにとって気がかりだった。
物事はフィーチャーフォンへ移るとわかり、PC からフィーチャーフォンへシフトを図らねばならないと思った。それは難しいことだったが、やらねばならなかった。
しかし、全員ではないまでも彼のチームには、反対する意見もあった。特に、エンジニアたちは、フィーチャーフォンへの移行が最良のアイデアだとは賛同しなかった。田中氏によれば、エンジニアたちはこのように言ったという。
こんな小さな画面をつくるために、エンジニアになったのではない。
しかし田中氏は、スマートフォンは人気が伸びることはなくても、ソーシャルメディア・プラットフォームとしては PC を遥かに凌ぐだろうと考えていた。
彼は事の緊急性についてスタッフをなんとか説得し、2009年末から2010年始めにかけて、GREE は SNS のすべての機能を iOS と Android 向けに対応させた。
やるか、やらずに失敗するかという選択だった。
「リーダーシップには統率力が求められる」と田中氏は説明する。2007年から2008年にかけてのスマートフォンがそうであったように、ある出来事が一過性のものに思えても、市場を変えるかもしれない瞬間を見逃さないよう、常にオープンマインドを持っておくことが重要だと述べた。
モバイルプラットフォームをローンチして以降、2億人以上が GREE で SNS またはモバイルゲームのいずれかを利用しており、そのうちのいくつかは、日出ずる国の外でも成功を収めている。田中氏は、(Facebook の)Mark Zuckerberg に次いで、世界で2番目に若い億万長者となった。
将来については、田中氏はゲームについて積極的な自信を持っている。
ゲームは間違いなく将来成長する。特に中国のスピードは速いだろう。
数年のうちには、ゲーム市場は現在の2〜3倍の大きさに成長し、特に中国や東南アジアがそれを牽引するだろうと、田中氏は語った。
自らの将来については、田中氏は今後も GREE への関与を貫くようだ。
起業には痛みを伴う。再びやりたいとは思わないだろう。
彼はそう締めくくり、聴衆からは大きな笑いと拍手が送られた。
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