欧州のスタートアップコミュニティが一堂に会する「Startup Europe Summit」がベルリンで開催

2015年2月12日、13日にベルリンで開催されたStartup Europe Summit
2015年2月12日、13日にベルリンで開催されたStartup Europe Summit

昨今、欧州の代表的なスタートアップ拠点として注目を集めている独ベルリンで、2015年2月12日、13日の2日間、欧州のスタートアップコミュニティが一堂に会するカンファレンス「Startup Europe Summit(スタートアップ・ヨーロッパ・サミット)」が初めて開催されました。

このカンファレンスは、“欧州におけるアントレプレナーシップの未来”をテーマに、欧州委員会(European Commission)のテクノロジー系スタートアップ推進イニシアチブ「Startup Europe Initiative」、地元ベルリンのテクノロジーハブ「Factory」、グーグルの起業支援プログラム「Google For Entrepreneurs」らが共催。

欧州委員会のアンドルス・アンシプ副委員長をはじめ、政府関係者、学識経験者のほか、マイクロソフト、アウディ、コカ・コーラ、ルフトハンザなどの大手企業、ツイッター、SoundCloud、Stripeらスタートアップ企業、インデックス・ベンチャーズやアクセル・パートナーズといったベンチャーキャピタルを含め、およそ80の企業・団体から600名以上が参加しました。

Startup Europe Summitの特徴は、将来にわたるテクノロジーの進化と、これによってもたらされる、モビリティ・ヘルスケア・トラベル・コミュニケーションなど幅広い領域でのイノベーションを見通した上で、起業家を中心とする“ヒト”、ベンチャーキャピタルや投資家らの“カネ”、テクノロジーハブやコワーキングスペースといった“場所”の観点から、欧州のスタートアップにおける課題を、多角的に議論している点です。

また、これら3つの要素をつなぐためのプラットフォームやコミュニティの重要性が、様々な立場から指摘されていたのも、印象に残りました。

欧州各国のテクノロジーハブの代表者たちが未来のオフィスのあり方を議論し合うパネルディスカッションの様子
欧州各国のテクノロジーハブの代表者たちが未来のオフィスのあり方を議論し合うパネルディスカッションの様子

Startup Europe Summitでは、各国の独自性を尊重しながら、EU全体をひとつの市場のように見立て、国境をこえてスタートアップをサポートするための包括的なフレームワークについても提案されています。ベルリン芸術大学の研究機関「デザインリサーチラボ」のGesche Joost教授は、この点について、次のように提唱しています。

Startup Europe Summitで講演するベルリン芸術大学の研究機関「デザインリサーチラボ」のGesche Joost教授
Startup Europe Summitで講演するベルリン芸術大学の研究機関「デザインリサーチラボ」のGesche Joost教授

「インターネットの普及に伴って、情報やコンテンツが自由にやりとりされるこの時代、国境を越えたコンテンツの共有を推進するためには、著作権の見直しが必要です。また、個人データの取扱いなど、一般ユーザーや消費者の権利を保護するための法整備も、今後の課題となるでしょう」

近年、欧州のスタートアップへの投資額は増加傾向にあり、2014年に欧州のスタートアップ企業が調達した資金額は79億ユーロと、前年から25.4%も増加しています(ダウ・ジョーンズのレポートによる)。

このように投資市場からの資金流入が増える一方で、欧州のスタートアップは、シリコンバレーやニューヨークといった他の地域に比べて歴史が浅く、独自の“DNA”をまだ模索している段階でもあります。

このような現状を鑑みると、Startup Europe Summitのように、官民学が集まり、忌憚なく意見やアイデアを共有し合う場と機会を定期的に持つことこそ、欧州のスタートアップらしいコミュニティやエコシステムを醸成していくための第一歩ではないかと感じました。

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