アジアで次にくるらしい巨額のビッグトレンド「eスポーツ」とは?

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Jay Eum氏は、TransLink Capitalの共同設立者であり社長である。Eum氏は、近日開催されるGamesBeat Summitでの当社のDeals取締役会において、議長の1人を務める。

Image Credit: League of Legends
Image Credit: League of Legends

2014年、NBAファイナル(1800万人)、NCAA男子バスケットボールチャンピオンシップ(2120万人)、そしてワールドシリーズ(2350万人)よりも多くの視聴者数を記録したスポーツイベントは何だったか。

スーパーボール(1億1150万人)、その通りだ。だが、2700万人を記録したマルチプレイヤーのオンライン戦略ゲームである、League of Legendsのシーズン3ワールドチャンピオンシップと答えた読者は、アジアで次にくる大きなテックトレンドの波にもう乗っている。

大多数のアメリカ人がeスポーツをアングラ的なものだと感じているだろうが、それは既にアジアでは数10億米ドル規模の産業に育っていて、アメリカでも、多くの人が認識しているよりずっと人気がある。

SuperData Researchによると、2013年には世界で7100万人の人が、2500万米ドルの賞金をめぐってゲーマーたちが競い合うのを観戦した。アメリカだけで3140万人がeスポーツを観戦し、その中の70%が男性、55%が21歳から35歳までの年齢層である。

アメリカ人の少なくとも10人に1人はeスポーツを楽しんでおり、すでに主流であると言ってよいだろう。Amazonが所有するTwitchのようなビデオプラットフォームによって、現在eスポーツプレイヤーたちは個人でファンに向けて放送している。その広告や購読料で、同プラットフォームは百万ドル単位の収益を生み出している。しかし、起業家たちはまだ、アメリカの主流スポーツのような方法ではeスポーツをマネタイズできていない。つまり数十億ドルが手つかずなのだ。

eスポーツで次に来る大きな波は、ファンタジーゲームではないかと考えている。通常のスポーツだけで約40億米ドルを生み出す、アメリカ文化の大きな要素となっている。なぜファンタジーeスポーツが大きな波になり得るかを知るには、韓国でのeスポーツの進化を追わなければいけない。

17年ほど時をさかのぼって、事の始まりであるSF戦略ゲームStarCraftのローンチを見てみよう。

StarCraftとeスポーツの高まり

米ビデオゲームメーカーのBlizzard Entertainmentは、1998年10月にStarCraftをリリースし、韓国の歴史と文化を変えた。アメリカや世界中で今私たちが目にしているeスポーツを作り上げたのである。

韓国は、StarCraftがローンチする場所として理想的であった。プレイステーションのような家庭用ゲームコンソールが好まれたアメリカや日本の市場と違い、韓国ではパソコンゲームが人気だったからだ。

StarCraftは、インターネットで対戦できる最初のマルチプレイヤー戦略ゲームの1つで、爆発的な人気を誇っていた。1998年から2007年にかけて、Blizzardは同国でStarCraftを450万件を販売したが、それは世界で販売された950万件の半分にすぎない。

そして、eスポーツは国全体で認知されるスポーツへと発展した。1998年末には、StarCraftのトッププレイヤーたちがKorea Pro Gamer’s League(KPGL)を結成。その後3年以内にKorean E-Sports Associationが設立され、企業がスポンサーとなった50以上のチームがリーグ戦を戦い、世界初のeスポーツテレビチャンネルであるOnGameNet(OGN)が全試合の放送を始めた。最初のWorld Cyber Gamesである「eスポーツオリンピック」が2001年に開催され、国外から迎えられたゲーマーたちがeスポーツカルチャーを体験した。

2007年はeスポーツにとって転機となった。大会放映権の価値が増大し、テレビ局はeスポーツリーグと交渉しなければならなくなった。まさにアメリカの放送ネットワークがNFLやNBAと交渉するようにだ。

現在人気のeスポーツゲームは、League of Legendsである。これは2011年に発売された複数プレイヤーが参加するバトルアリーナゲームで、2013年のワールドチャンピオンシップでは3200万人の視聴者を集めた。Defense of the Ancients 2(Dota2)は2013年にローンチされたアリーナゲームで、こちらも人気急上昇中だ。Dota2は2014年のチャンピオンシップに1090万米ドルを捻出した。これはeスポーツ史上最高の金額だ。

韓国ではeスポーツが発展し、現在アメリカで台頭してきているような競技ゲームの文化を育てた。ゲームはアメリカ製かもしれないが、最も長い歴史を持つ関連団体やトーナメント、そして最も人気のあるチームやプレイヤーは圧倒的にアジアから出てきている。eスポーツが韓国でいかに発展したかを見れば、これがアメリカでも主流になろうとしているのは明らかだ。

お金を払って他人のゲームプレイを観戦する

3100万人のアメリカ人がeスポーツを観戦しているにもかかわらず、依然として競技ゲームの重要性が理解されているとは言いがたい。しかしアメリカ人がお金を払って他人のプレイを観戦し、広告主がその注目度に対してお金を払っていることを知れば、それが理解できるだろう。

アメリカのeスポーツ業界には有力なプレイヤーがいる。それはTwitchだ。TwitchはAmazonが2014年8月に9億7000万米ドルで買収したライブストリーミングのビデオプラットフォームで、現在1億以上の月間ユーザがおり、そこにはミレニアル世代(1970年代後半から1990年代に生まれた世代)の全アメリカ人男性の約半分が含まれている。Twitchユーザのうち半分近くの人は、週に20時間以上をこのプラットフォームに費やす。これはアメリカのインターネットトラフィックにおいて、Netflix、Google、Appleに次ぐ第4位にランクされる

Twitchでは、ゲームプレイ動画を生中継し、それをオーディエンスが観戦する。International Business Timesによれば、トップクラスのブロードキャスターは月に2万米ドルものお金を稼ぐことができるという。

Twitchの人気配信者は広告収入の分配を得ることができ、プレミアム会員からお金をもらうこともできる。プレミアム会員は、会員限定のチャット、特別な顔文字、カスタマイズされたチャットバッジ、その他の特典などを手にする。アメリカのミレニアル世代が不必要な5ドルを毎月払うなんてどうかしていると思うかもしれない。しかし、Re/codeは8月にTwitchには最大60万の有料会員がいると報告している。

アメリカでのeスポーツ熱が冷めることはない。Twitchは、多くのスタートアップが熱望する高いレベルのユーザエンゲージメント、そしてB2BとB2Cという2つの収入源をもっている。だが、広告とサブスクリプションはeスポーツのマネタイズ法の一部でしかない。

ファンタジーゲームとeスポーツの融合

アメリカにeスポーツファン市場が存在することはTwitchが証明しており、ファンは週20時間もストリーミング放送を試聴したり、お気に入りの配信者に対してチャットの特権費を支払ったりするほど夢中になっている。これは、北米の4150万人のファンタジースポーツファンと似ている。この2つの類似した現象とeスポーツファンタジーゲームの早期の成功が、eスポーツをマネタイズする上での次のターゲットがファンタジーゲームだと示唆している。

4150万という統計は、アメリカとカナダのファンタジーゲームを支持する団体Fantasy Sports Trade Association(FSTA)によって出されたものだ。議員がファンタジースポーツをギャンブルに分類しないようにするために存在している団体と言ってもよい。FSTAのデータによると、プレイヤーは年に36億4000万米ドルをファンタジーゲームに費やしている。オーディエンスの80%は男性で、週におよそ18時間スポーツを行っており、それ以外に週の8.67時間をファンタジースポーツに費やしている。平均年齢は34歳だ。この統計データは、アメリカのeスポーツのファン基盤に驚くほど似ている。年齢が少し高く、ユーザ数が数百万多いだけだ。

ミレニアル世代の男性オーディエンス、膨大な視聴時間、トーナメント大会、Twitch経由で利用可能になるインフラを考えると、ファンタジーゲームは理想的でおそらく収益の上がるマーケットだ。もし誰かがそれを構築すれば、週20時間ゲームを見て過ごすeスポーツのファンたちは、勝者を予想してお金を投入できることに気がつくだろう。まさにファンタジーフットボールやファンタジーバスケットボールで遊ぶ人たちのように、である。

FanDuelやDraftKingsのようなファンタジーアプリは、どれほどのお金が日常的な友達グループからウェブへと移動しているかを示している。FanDuelだけみても、参加費として2014年の第4四半期に3億7000万米ドル以上を集めた。これは前年の4.5倍にあたる。DraftKingsは今年、賞金に10億米ドル以上を支出するとみられている。

ファンタジーeスポーツは、アメリカのテレビがゲームを放映するか否かにかかわらず有望である。NAPTEとConsumer Electronics Associationの共同調査によれば、ミレニアル世代のたった55%が、主に利用する視聴機器としてテレビを挙げており、その数値は下がり続けるだろう。テレビ番組にならなくてもeスポーツとファンタジーリーグは不利になるというよりは、たぶんすでにその先を行っているのだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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