日々の生活の中に自然に溶け込んだロボットを目指して−フラワー・ロボティクスが自律型ロボット「Patin」のプロトタイプを発表

by Eguchi Shintaro Eguchi Shintaro on 2015.6.24

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ロボットや人工知能といった話題が世間を賑わせている。同時に、多くの人にとってロボットはヒト型で、かつアニメやマンガに登場するように存在感と万能感を併せ持つイメージをもたれやすい。これまでにも、いくつかロボットがフィーチャーされる時代があり、各家庭にロボットが一台ある、という予測もされた。しかし、以前としてあるロボットに対するイメージは、ロボットを一つの産業として捉えたときに、視野を狭くしてしまうことになるだろう。

2001年からロボット開発を進めてきたフラワー・ロボティクスは、ロボット開発において「デザイン」を重要視してきた。そこには、これまで「デザイン」と言われてきたさまざまな領域においてインターフェイスだけでなくユーザの体験そのものや、日々の生活のなかに当たり前のように存在する「用の美」といったものだ。

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フラワー・ロボティクス代表の松井龍哉氏

「姿や形だけでなく、科学技術と人の生活をどう結びつけるか、それがデザインの力です。テクノロジーを洗練させ、人類の文化を更新させるために、デザインは大きな役割があります。だからこそ、デザイナーの仕事はロボット産業においてこれからますます求められるものだと考えています」とフラワー・ロボティクス代表の松井龍哉氏は語る。

「生活に自然に入るロボット製品の開発と販売。車やPC、スマートフォンのようにロボットを日常の風景とすることを企業理念としています」

松井氏は、ロボットと定義するには「センサ」「知能・制御系」「駆動系」の3つの要素技術があるものを「ロボット」と広く定義することだという。つまり、ロボットは「知能化した機械システム」であり、環境情報を知能が認識し、環境に適応することだと話す。

「ロボットは環境の中からさまざまな情報を自ら取捨選択し、行動基準をつくる自律型ロボットの設計思想をもつ。だからこそ、デザイナーとしてデザインすべき対象は、その自律性にある」と話す松井氏。ロボットデザインの本質は、人の生活の中に自然と共存させるトータルシステムの設計が求められるという。

プラットフォーム的思想をもった自律型ロボット「Patin」

そうした考えのものに開発を進め、先日そのプロトタイプを発表したのが、Patinだ。松井氏は、ロボットの面白さをできるだけ削ぎ落とした結果、残ったものは「ロボットが動く」と「ロボットが自ら考える」という、思考と動作こそが、ロボットがロボットたらしめるものだと考えた。そのロボットを日常にとけ込ませるために、家庭の中に使用されることを想定したホームロボットの開発を進めた。

Patinは、全方位に回転できる4つのオムニホイールやカメラ、マイク、空間認識を行い人や障害物を検知するセンサ、無線LAN、NVIDIAの組み込みボード「Jetson TK1」などを備えたロボットだ。

しかし、本体であるPatinそのものの機能は最小限に抑えてある。重要なのは、そのプラットフォーム性だ。上部に「サービスユニット」と呼ばれる部品を取り付けることで、様々な機能をPatinに持たせることができる。いわば、スマートフォンにアプリをインストールするように、ユニットを交換することでさまざまな機能を提供するロボットへと変化する。

ランプユニットを取り付けたPatin。
ランプユニットを取り付けたPatin。

例えば、ランプユニットを取り付けることで、人の音声で操作でき、状況に合わせて移動したり色を変化させたりする自律型ランプへと変わる。他にも、家庭菜園のユニットを載せれば、部屋のインテリアとしても機能する。ロボットの行動履歴やセンサーで収集した情報は、Wi-Fiなどを経由してクラウドに集積し、データ解析を行う。家庭内の情報を集めながらその先へのサービス展開を見据えた取り組みを行うことができる。

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ロボットを単一した機能で終わらせることなく、プラットフォームとしてさまざまな機能を追加させる設計のPatin。ロボットを中心とした家庭用ロボットのプラットフォーム型ビジネスを見据えた動きだけでなく、SDKによる開発環境を提供し、サードパーティがそれぞれのサービスユニットを開発する動きを促す。例えば、部屋の温度を自動で調整する自律型の扇風機や、部屋を快適に保つために自律性をもった加湿器などが考えられるだろう。他にも、斬新なアイデアをもとにベンチャーがサードパーティとして開発に参入することで、結果としてロボット産業全体を後押しする役目も果たそうと松井氏はにらんでいる。

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現在は、Patinはプロトタイプで、国内の工場とも連携しながら製品開発を進めていく。量産機向けに再設計を行い、2016年後半の発売を目指している。価格面や多様なサービスユニットを生み出すためにサードパーティとも連携しながら、さまざまなユニット開発も進めていくという。

Patinの開発だけでなく、現在ではさまざまな企業がロボット開発を進めている。ロボットが家庭の中にいる時代も、次第に現実味を増してくるなかで、私たちの生活にいかにロボットが自然な形で入ってくるのか。ロボットを開発する側にとって、より複合的な視点で設計することが求められるだろう。

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