革新的なアイデアとプロダクトでイノベーションを創りだす:「Microsoft Innovation Award 2015」を授賞した13チーム #BizSparkJP

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「ソフトウェアによるイノベーション」をキーワードに、革新的なアイデアをカタチにしたソフトウェア、サービスを表彰するマイクロソフトのアワードプログラム「Microsoft Innovation Award」。これまでにも、導電性インクで電子回路をプリントできる AgIC、手術室の画像閲覧操作をジェスチャーコントロールできる Opect、新世代楽器KAGURAを開発したしくみデザインなどが受賞をしてきた。

そんなMicrosoft Innovation Award 2015(MIA2015)の表彰式が、先日開催され、受賞者たちによるプレゼンテーションが行われた。

今回のMIA2015では、優秀賞として7社がエントリーされ、そのなかから最優秀賞が選ばれる。また、おしくも優秀賞には選ばれなかったが、テクノロジーの観点から斬新なアイデアをもとにサービスを開発したチームを表彰する「テクノロジーエッジ賞」が急遽作られ、6社がテクノロジーエッジ賞に選ばれた。イベント会場には、会場の席数から溢れるほどの参加者が集まり、そのプレゼンテーションに魅入っていた。

ここでは、テクノロジーエッジ賞、優秀賞を受賞した各チームの紹介を行う。審査員による最優秀賞1社と、オーディエンスから最も支持されたオーディエンス賞1社、それぞれが授与される。

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オーディエンス賞は、動画やウェブを高速化するMistCDN/MistPrefetchを開発するMistTechnologies、最優秀賞はテレビの視聴の質を測定するTVI-Identifierを開発するTVISION INSIGHTSが授賞した。

テクノロジーを武器に斬新なアイデアを形に:テクノロジーエッジ賞に選ばれた6チーム

no new folk studio:IoTによるパフォーマンスシューズOrphe

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IoT×アートを軸に、光と音と動きをシームレスに変換するスマートシューズ「Orphe」を開発している「no new folk studio」。「Orphe」は、スマートフォンやタブレットにBluetoothで接続し、様々なアプリケーションと連携しながら運動に応じて制御したりスマホで色を切り替えたりできる靴だ。ダンスと連動したモーションに同期した映像を切替たりなど、パフォーマーの動きを通じて照明や楽器などさまざまな用途で使用することができる。Orphe Cloudでは、クラウドを利用したユーザデータのシェアできるようにし、今後は、オープンソースで誰でもアプリを開発できるようにしたいという。ファッション、スポーツ、VR、ヘルスケアなどさまざまな場面に向けたアプリを展開し、コミュニティを拡大していく

CFlat:ARプラットフォームのFigmy

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Figmyは、3Dフィギアをマチに持ち出すARプラットフォームだ。カメラを通して、等身大のキャラクターをARで表現し、キャラクターと並んで写真撮影などを行うことができる。また、キャラクターはキャラクターホルダーと連携し自由に切り替えをすることができる。さらに、キャラクターを自由にカスタマイズによって3Dフィギアの新しい形を模索する。今後は、3Dプリンターへの展開によって3Dとして印刷可能なものにしたり、ビューワーとしての需要などがある。HoloLensを用いることで、アニメ『電脳コイル』の世界を実世界に実装できる可能性があるかもしれない。

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jThird:HTML5共創プラットフォームjThird

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VRやARのコンテンツのプラットフォームのjThrdは、Web3D開発を誰でもできるプラットフォームだ。描画エンジンをオープンソースにし、Web3Dプログラミングをシンプルにする。これによって、Oculus Rift 用のコードも従来よりも短縮した行数でできるという。また、3Dで踊っているキャラクターのその瞬間の様子を3Dプリンター用にデータ変換することができるなど、3Dに特化したプラットフォームと言える。3D表現における新たなプラットフォームとなることを目指している。

Twinface開発チーム:手術の表情をKinectで確認できるTwinface

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顎変形症という病気の治療を行っている先生らによるチームだ。顎変形症とは、顎の骨の形や大きさの異常や位置バランスの崩れが原因によって、顔の見た目やかみ合わせによって上手く噛めなかったり、上手く話せない、といった症状がある。そうした患者たちの治療のために、治療後の顔がどのように変わるのかを、事前に確認することが一般的だが、それまではシミュレーションを通じて無表情な顔が表現されていた。そこで、Kinectを通じて本人の顔の表情を読み取り、表情シミュレーションによって患者の手術後の顔を笑顔な表情で患者に共有できるという。

今後は、CTを使わずに従来のシミュレーションよりも導入コストを抑えるためのコスト削減の方法を模索したり、笑顔だけではないさまざまな顔の動きのモデル化、精度の検証や向上、カラー化、歯や目の組込、そしてKinectの医療用機器としての認証を取るための活動をしていくという。

Mist Technologies:動画やウェブを高速化するMistCDN/MistPrefetch

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通信によるサーバー負荷を減らすために、同じウェブサイトや動画を視聴しているユーザ同士をP2Pネットワークでつなぎ、サーバー負荷を90%以上削減するMistCDN。今回は、さらにユーザが次にどのウェブページを開くかを先読みし、表示速度を高速化するMistPrefetchを開発している。MistPrefetchは、統計的予測アルゴリズムによってアクセスログを独自に取得し、予測アルゴリズムを動的に変化させながら、ディスプレイに表示されているリンクに絞り込み、マウスの進行方向、速度、加速度などからクリックするリンクを算出するなどのユーザ行動をモニタリングし、先読み予測を実現しているという。

E2D3.org:エクセルにグラフ描画表現力を追加するE2D3

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データビジュアライゼーションや、データジャーナリズムなどの手法が話題を呼ぶと同時に、いままで、データの可視化はプログラムできる人しかできなかった。そこで、誰もが使うエクセル上で、データ可視化ができるツールを開発した。E2D3は、オープンソースプロジェクトとして展開され、数多くのエンジニアやデザイナーが関わりながら開発されている。また、E2D3上で作られたデータを共有することで、データの可視化の助けとするなど、すべての人がデータ可視化ができる世界を目指している。

新たなイノベーションを目指して:優秀賞に選ばれた7チーム

情報基盤開発:紙のデータ集計を効率化するAltPaper

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画像認識とデータベースを得意とする情報基盤開発は、昨今のビックデータの時代のなかで、データ生成という市場に発展の余地があると考えた。そこで、データ入力支援ソフトAltPaperを開発。紙に書かれた情報を自動で入力、集計する。従来のOCR製品に比べて安価に導入でき、紙で集めた情報をすべてデータ化することができる。2015年12月からはストレスチェックキットが義務化される。グローバル企業においては、情報漏洩の観点から、モバイルではなく紙などを通じて情報共有や入力を行うところも多い。紙というメディアの特性を活かした新たなデータ生成分野で道を拓いていくという。

TVISION INSIGHTS:テレビ視聴の質を捉えるTVI-Idenfifier

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テレビ番組のの面白さを測定する一つの方法に、視聴率がある。しかし、視聴率はいわば視聴の量であり、ユーザがどのように視聴しているか、という視聴の質を図ることはできない。しかし、番組コンテンツを考えたときには、テレビの見られ方などが重要だ。そこで、TVISION INSIGHTSが開発したTVI-Idenfifierは、Kinectと人体認識技術を用いたアルゴリズムによって、ユーザがどれだけテレビに夢中になって視聴しているか、などの視聴の質を測る。視聴の態勢を理解することで、それにあわせたテレビ番組コンテンツづくりが可能だ。今後は、データにもとづいたレコメンドやユーザ心理をリアルタイムで理解した最適なコンテンツ提供などが可能だ。

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ウサギィ:ディープラーニングに依存しない判定器、画像解析できるマン

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画像解析できるマンは、スマホで撮った写真をアップロードし、ごはんはどうかを瞬時に判定する。判定には、10万点以上の特徴から正しくない例の特徴を抽出し、機械学習をさせる。他にも、画像解析技術をもとに、不適切な写真の投稿を事前に禁止したり、工場での不良品の発見、画像に写っている企業商品の識別しウェブサイトへの誘導などが可能だ。画像解析、音声認識、文章認識、最適化の研究も展開しており、ポジティブな文章か、ネガティブな文章か、書いた人の年齢や性別の判定も分かるという。

Brand Pit:画像認識型SNS分析ツールBrand Pit Analytics

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現在のSNSには、毎日18億の画像があるが、80%以上がハッシュタグがついておらず、マーケティングとして活用できないでいる。そこで、Brand Pitは画像をスキャンし、その情報を抽出。ブランドがどのように消費者と関わっているかを分析する。これによってターゲットセグメントや消費者行動の把握、市場拡大時の市場調査、キャンペーンやプロダクトローンチ時の効果測定などを、従来のテキストベースのSNS解析ではなく、画像ベースのSNS解析を行うことができる。また、一般ユーザの投稿画像の認識に特化しているため、画質が撮影技術の高くない画像にも対応。ユーザが意図せずに写っている製品やロゴも認識でき、よりブランドとユーザとの関わりを分析することができる。

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SPLYZA:残像動画を自動で生成するClipstro

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スポーツ番組などでよく見かける残像動画を、30秒動画をiPhoneで撮影するだけで自動で生成するClipstro。三脚も編集も不要だ。人の動きの軌道やゴルフのスイングなどの弾道も撮影できる。すでに20ヵ国でリリースされている。7月にはAndroid版もリリースする。また、企業のプロモーションにも使われるなど、スポーツ用途だけでなく、YouTubeやInstagram上でのおもしろ動画作成といったエンターテインメントの分野や、製造業の機械操作、リハビリなどの分野にも応用できるのではという。

サイトセンシング:属性や反応を自動計測するFG-サイネージ

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産総研ベンチャーのサイトセンシングは、映像から顔検出を行い、視聴者属性や反応を自動計測するFG-サイネージを開発した。FG-サイネージは、高速演算によって一度に20人を超える顔検出を行い、90%以上の確率で年齢などを把握。単なる笑顔検出だけでなく、笑顔の度合いも提示する。また、実年齢ではなく見た目年齢を測定し、購買パターンを判定する。デジタルサイネージにカメラが一体となったものを開発し、コンテンツ視聴状況や注目度を自動計測するためのサービスを開発していく。

フリックテック:正確渋滞分析を行う、渋滞ナビ

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実際に自動車が走行した位置や車速などの情報を用いて生成されたプローブ情報をもとに、正確な渋滞分析を行う渋滞ナビ。ユーザ参加型の渋滞マップで、ユーザそれぞれの方向位置などをマッシュアップし、渋滞情報を把握することができ、渋滞を知り、回避し、将来を予測することができる。プローブ情報の投稿や共有、渋滞解析からさまざまなルート検索が可能。すでに300万ダウンロードされている。

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