低価格で簡単設置のホームセキュリティ「Secual(セキュアル)」が、ウィルグループインキュベートファンドからシード資金を調達

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Secual 代表取締役の青柳和洋氏(中央)、取締役の西田直樹氏(右)と東窪公志氏(左)

ホームセキュリティ・デバイスや関連するクラウドサービスを開発する「Secual(セキュアル)」は16日、ウィルグループインキュベートファンドからシード資金を調達したと発表した。調達金額や出資比率については開示されていない。ウィルグループインキュベートファンドは、人材派遣業などのウィルグループ(東証:6089)が設立しフューチャーベンチャーキャピタル(東証:8462)に運用を委託するファンドで、先週の Travee(トラビー)への出資に引き続き、今回が2件目の投資案件となる。

Secual は今月初め、ビジネス・コンサルティングと新規事業創出を展開するイグニション・ポイントの新会社として設立された。Secual が開発するのは、不審者の侵入を防ぐカジュアルなホームセキュリティ・デバイスで、Wi-Fi 経由でクラウドと連携させ、居住者や近隣住人に対して警報を発するものとなる。

Secual デバイスの当初のモックアップではマグネットセンサーを想定していたが、現時点では、さまざまなドアや窓の振動を検知できる加速度センサーを搭載し、低消費電力の無線通信規格 EnOcean により、Wi-Fi ゲートウェイと接続させる仕様を検討中だ。なお、技術仕様やデザインについては、今年12月の試験運用開始までに確定させるとのことなので、現在開示されている情報から変更される可能性がある。

ホームセキュリティ・デバイスの開発着手に至った背景を、Secual の代表取締役である青柳和洋氏に尋ねてみた。

侵入の警報が入ってから警備会社から駆けつけたとしても、10分後とか15分後になります。空き巣や泥棒は5分あれば逃げてしまいますし、警備会社も警察ではないため何もできません。

そこで周囲の目、人のつながりによって犯罪を抑止する「ソーシャル・セキュリティ」という概念を考えました。高いコストをかけて完全に守るセキュリティがある一方で、コストは比較的安いけどカジュアルに試せるホテル・セキュリティがあってもいいのではないかと思って。

Secual では自宅に設置したセンサーが異常を検知したときには、現場で警報が鳴るほか、クラウドを通じて、ユーザ本人はもとより、予め登録した家族や近隣住人などに、スマホアプリによるプッシュ通知、自動音声による電話発呼、電子メールなどで通知することができる。クラウドのダッシュボードでは、警報が通知される対象者の設定のほか、センサーの感度や監視時間帯などを制御できるようにする予定だ。

既存のホームセキュリティ・サービスを見ていると、申込のプロセスがすごく複雑です。料金を知るにも見積が必要だったり、そもそも、決まった価格表が載っていない。

Secual は、例えば、センサーデバイス3つと Wi-Fi ゲートウェイをセットで数千円程度で販売したい。センサーデバイスは電池で数年間動きますが、価格を安くするため構造を単純化しており、充電機構などはなく電池が無くなれば使い捨てです。クラウドの利用料も月額数百円から千円台くらいを想定したい。(青柳氏)

Secual に使われる技術は、日本国内にある既存のコンポーネントを組み合わせて開発されるため、新たに技適マークを取得する必要は生じない。Secual の意匠は、業界指折りのプロダクトデザイン事務所 Miyake Design が担当する。Secual のターゲットでもある独り暮らしの女性が、自宅の各所にセンサーデバイスを設置しても生活に溶け込むような、違和感の無いデザインを目指しているのだそうだ。

Secual では市場展開とあわせ、マグネットセンサーや加速度センサー以外にも、さまざまなセンサーをリリースしていくことを想定。公開 API を開発し、ビデオカメラなどとの連携も容易に実現できるようにしたいと考えている。

2000年代初頭、そこらじゅうの街角や駅前で「ヤフーBB」の ADSL ルーターが配られていたのを覚えている読者は少なくないだろう。ルーターの配布でユーザベースを先取することで、ヤフーはそこにあらゆるサービスを追加的に提供していくことができた。IoT の分野で、これに近い考えを持っているのは、フランスの Sigfox だろう。Secual は入口はホームセキュリティであるが、センサーデバイスを安価で日本中の住宅に行き渡らせることで、新たなビジネスの布石を築こうとしているのかもしれない。

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