北京、上海、深圳…スタートアップの拠点を置くならどこがベスト? 中国の5都市を比較

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中国はビジネスを行うのに優れた場所だ。しかし世界最大の消費者向けテック市場に店を構えるのは言うほど易しくない。

深圳や広州といった南部の工業都市から金融ハブの上海、そして文化の都である北京まで、中国には大都市がたくさんあり、それぞれがユニークな味を出している。しかし大都市にはライバルが大勢いるのは当然だ。スタートアップの堅固なオペレーションベースを構築しようとしている起業家の世界でもその構造は当てはまるだろう。

以前は北京が中国のスタートアップ文化の中心だったが、新しい投資の波は、製造業者に近く、急速に技術革新のハブが発展する南部の再開発都市で見られるようになった。同時に、よそ者にも開かれた上海の雰囲気は、増え続けるスタートアップが市場参入を試みるにあたり魅力的な場所となった。そこで私たちは5人の起業家に中国のスタートアップハブでの経験について語ってもらうことにした。

北京

SeekPandaのMatt Conger氏

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Matt Conger氏によれば、「Beijing Welcomes You(北京歓迎你)」という歌は中国にいる外国人の大半にとってカラオケの定番曲だと言う。外国人起業家にとってこの曲名は7割方正しいと思います、と彼は言う。

私たちはオンデマンド通訳・翻訳のO2OネットワークのSeekPandaを北京で設立しました。というのも北京はごく自然に、ビジネス・トラベラーとハイエンドな言語の専門家という私たちのネットワークの両方を惹きつける場所だったからです。私たちは「パンダ(訳者注:サービス名SeekPandaをもじって翻訳者・通訳者の雇用候補者の意)」を実際に面談して評価しました。募集に応募してくる翻訳・通訳者の質という面で、他の都市は北京の比較になりません。

北京の長所:
北京にはシリコンバレーに似たスタートアップ文化があり、Garage Cafe(車庫珈琲)はパロアルトにあるCoupa Cafeと同じようにベンチャーキャピタル、起業家、開発者を結びつける役割を果たしている。

VCや大学が信じられないほど密集している。また、北京に拠点を置く海外・国内問わず起業家を支援する政府プログラムが複数運営されている。

北京の短所:
北京はスタートアップハブとしては多少非効率的である。コミュニティが分かれてしまっているのだ。これは英語/中国語という言語障壁ではなく、地理的な距離によるものである。Zhongguancun(中関村)とEast Third Ring Road(東三環路)がスタートアップの集まる中心だが、両者は非常に離れている。

ざっくり言うと、B2CのスタートアップはZhongguancunで、B2BはEast Third Ring Roadに集まっている。Liangmaqiao(亮馬橋)にあるManning(曼寧)のように両者が一緒に活動できるスペースができれば、このギャップを乗り越え「北京へようこそ」の曲名が100%その通りだと言えるようになると思う。

上海

AmandaのGuan Wang氏

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Amanda(上海言叶網絡)の共同設立者兼CEOのGuan Wang氏は中国生まれだが10歳の時にスウェーデンに移住した。2011年に彼はルーツである中国に戻り、上海に居を構えた。

このような急速なペースで中国がグローバル経済におけるリーダーに変革していくにあたり、世界中の人々が中国語を学び、今日のダイナミックで複雑でモダンな中国文化につながりを持てるプラットフォームを創ることに機会があると思ったのです。

私たちの旅路における最初の重要な一歩として、最近iOS上でAmandaアプリの初期バージョンをリリースし、ユーザから多くの好評を得ることができました。このアプリでは、ユーザは中国ソーシャルメディアで盛り上がっている話題を通じて中国標準語を学習することができます。

当社製品はグローバル市場を狙っており、上海はターゲットユーザや外国人の逸材、全業界の潜在パートナーを見つけることのできる国際ハブなのです。当社は大学にも近く、新卒採用にも便利です。

上海の長所:
上海はとても魅力的で暮らしやすい都市で、中国本土で一番西欧的なスタイルといって間違いない。このため、外国人の逸材を惹きつけるのは比較的容易だ。

上海の短所:
中国本土に限れば、住居と事務所スペースを含め、上海は中国で最も生活にかかる費用が高い。上海の海外志向は魅力的だが、産業はテクノロジーではなく、いまだに金融と小売に集中している。

深圳

Unchained AppsのMike Michelini氏

私はMike Micheliniで、Unchained Apps Ltdのビジネス開発部門バイスプレジデントです。中国語学習(WCC Dictionary)からタスク管理(TaskLabels)、そしてソーシャルメディア(Social Agent)まで一連のモバイル向けアプリを作成しています。

私たちが深圳を選んだのは、ちょうど香港と深圳の境に位置しているからです。当社チームの一部は香港、一部は深圳をベースとしています。中国最大の人材プールと香港が有するビジネス開発のネットワークという両側面を最大限に活かそうという狙いです。

深圳の長所:
生産拠点として急速な再開発が進んでいるが、深圳は今のところまだ事業のオペレーションコストや生活費が比較的安価である。深圳の大きなウリは、製造ハブ、家電市場と工場に近いだけでなく、イノベーションのホットスポットである香港にも近いことだ。中国人と西洋人の若い起業家も大勢集まっており、言うまでもなく気候も温暖である。

深圳の短所:
都市は開発中ではあるものの、物価が急速に上がっている。この地域では開発者の競争もとても激しく、Tencent(騰訊)やLenovo(連想)のような大手が我先にと開発者の取り合いになっている。

成都

Cloud TimeのMatt Vegh氏

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Matt Vegh氏は典型的な中国の古巣起業家である。厳密に言えば、「成都の」古巣だろう。他にそう言える者はいない。中国内陸部で最もダイナミックな都市に15年もの間いたことがそれを証明している。

成都市の市役所関係者、複数の自治体や省の関係者はこぞって彼に頼り、全産業にまたがる戦略フレームワークモデルを立ててきた。彼は「12 step Eden report」という成都市の国際化に関する関係者限定のホワイトペーパーを執筆し、その全施策が実行された。

彼のスタートアップCloudTimeはステルスモードのグローバルメッセージングプラットフォームで、ストリーミングビデオ、ゲーム、そして複数言語でリアルタイムかつインストリームのチャットなどを90以上の言語ペアで翻訳する。いまやCloudTimeは特許申請中のマイクロチップベースのテクノロジーを使っており、このチップはモバイル広告の世界を変え、世界的なスケールでCloudTimeをIoTの根本技術を支える存在へと進化させる可能性を秘めている。

成都の真髄とは『合流』だと思います。成都は非常に多くの重要な要素がとても良く混ざり合っており、ここ以上に起業家に適した場所は中々イメージがわきません。都会と田舎、伝統と現代、ビジネスとレジャー、産業と環境などリストはまだまだ続きます。

これらが混ぜ合わさり、とりわけUESTC(電子科技大学)、SWUFE(西南財経大学)そして四川大学など中核的研究拠点があり、高度に教育された人材、特にIT分野の人材を続々と輩出しているということが、私が考える限り、成都を中国で最も野心的で起業条件が整っており親ビジネスなテクノロジー地域としているのだと思います。最後に付け加えますと、成都と四川省は歴史的美術・現代美術の双方の中心でもあります。

成都の長所:
成都は優れた交通システムとインフラを誇り、公共・プライベートのどちらでも自動車が非常に便利である。生活費は東部の中心地よりも非常に手頃であり、能力を妥協することなく人件費を抑えることが可能だ。内陸部の都市であっても生活スタイルは良く発展しており、1時間弱ほど車で移動するだけで自然の素晴らしい景色を見ることができる。

成都の短所:
大きく発展した製造業や流通業を擁する大都市であるにも関わらず、成都は一般的にまだまだ「隠れた存在」でしかなく、海外の投資家に成都のことを一気に良く知ってもらえるようになるチャンスがまだある。また、成都はテクノロジーに詳しい地域投資プールも立ち上がっていない。ライフスタイルの観点では、唯一の短所は、山地に囲まれているがゆえに、湿度が高く天気がどんよりしがちな点である。

広州

Enter ChinaのNick Ramil氏

Nick Ramil氏はEnter Chinaの共同設立者である。Enter Chinaは中国で製品製造を考える起業家らのリーディングコミュニティで、世界中の起業家が製品を開発、検証、創造、そしてローンチするのを支援している。

「私たちが広州を選んだのは、製造業の省である広東省の省都であり中心地だからです。広州は中国におけるグローバルトレードの中心で、最大規模の貿易博覧会などの開催地であり、すぐに製造業者にアクセスできるという点でここ以上の場所はありません。」

広州の長所:
製造業の都市であり交易のハブでもあるという点で、広州は中国参入を目指すスタートアップにとって非常に魅力的な選択肢である。深圳が香港に近いという地理的利点と急速に発展する交易のコミュニティの両者を有するのと同様である。

広州の短所:
上海や北京や深圳と異なり、人口のほとんどが中国標準語ではなく広東語を話し、多少言葉の壁がある。環境汚染や異常気象なども長い期間住むという点ではあまり魅力的ではない。

著者略歴:Michael Park氏は、香港に拠点を置くオンデマンド通訳のスタートアップLipSyncのCEO兼共同設立者である。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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