3Dプリンターで、伝統の街からものづくりのオンデマンド化を図るYOKOITO

by ゲストライター ゲストライター on 2015.6.11

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東京ビックサイトで先日開催されたデザインフェスタで、3Dプリンターで製造した「FAB-LENS(ファブレンズ)」を発表した、京都発の学生ベンチャーのYOKOITO

「FAB-LENS」は、トイカメラ風でマウントや絞り、レンズ部、フードなどをユニット化して自由に組み合わせてつくることができる製品です。FAB-LENSは、3Dプリンタで出力した部品を組み立てた、レンズ交換式のデジタルカメラ用トイカメラレンズ。FAB-LENSを使えば、トイカメラで撮影したような画像をレンズ交換式のデジタルカメラ用レンズで撮影することができます。FAB-LENSは、レンズを除きマウントや絞り、鏡胴、フードなどの部品を3Dプリンタで出力でき、各モジュールのデータはオープンソースとしてThingiverseに公開されています。

また、YOKOITOは3Dプリンターで西陣織の道具を製作したとして京都新聞に取り上げられるなど、京都を中心に活動しています。

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京都ものづくり広場「fagora」
3Dプリンター稼働中
3Dプリンター稼働中

FAB-LENS from Ichiri Takamatsu on Vimeo.

アイディアを実現するために人々を繋ぐ「緯糸(よこいと)」

YOKOITOは、京都ものづくり広場「fagora」という作業スペースに3Dプリンター数台とレーザーカッター、DIY工具を揃えており、毎週土日曜に一般の人でも利用できるように開放しており、アイデアや簡単なスケッチ、データや加工したい材料などを持参すれば、誰でも自由に形にすることができます。また、月に一度「関西3Dプリンター活用研究会」という集まりを開催しながら、さまざまな業種・業種の人とアイデアを交換したり、アイデアを実現する方法を模索したりしています。

ここから生まれたのが、3Dプリンターを使った西陣織の道具「杼(ひ)」と「FAB-LENS」です。

「FAB-LENS」星形やハートの絞り
「FAB-LENS」星形やハートの絞り

「僕たちは人々をつなぐ「緯糸(よこいと)」の役割を担っています。「FAB-LENS」の原案者である鈴木雄貴さんは、大学院の研究で既に3Dプリンターでレンズを作るところまでは出来ていたんです。

しかし、商品として売り出すには、パッケージ、説明書の制作、広報、販路など、他にも必要なことがたくさんありました。そこで僕らは一緒にものづくりをしながらグラフィックデザイナーの方を紹介したり、ウェブサイトやSNSでの告知をお手伝いしました」。

3Dプリンターによって、従来よりもはるかにプロダクトを作るハードルが下がりましたが、アイデアを出すところから販売までの全てを一人で行うには限界があります。アイデアを持った人と、多様なスキルを持った人をつなげるというYOKOITO。さまざまなプロダクトをプロデュースしながら、商品化が難しかったニッチな需要に応えたいと話します。

杼を手に取る中島氏
杼を手に取る中島氏

伝統産業を3Dプリンターで支え、技術をアーカイブすること

YOKOITOのもう一つの製品「杼(ひ)」も、関西3Dプリンター活用研究会の中で生まれたものです。

「京都の伝統産業、西陣織で使われる「杼」という道具は、手織りで緯糸(よこいと)を通すためのものなのですが、実はこの道具が作れる職人さんは現在ひとりだけなんです。その職人さんは高齢で、跡継ぎはいないとのこと。もしその方が「杼」を作れなくなったら、、手織りの西陣織の製造は難しくなってしまいます。貴重な職人さんのノウハウを残すのにはどうすれば良いか。そうしたことを西陣織職人の中村さんからご相談を頂き、「杼」の製作に挑戦することになりました」。

3Dプリンターで道具を作ることだけではなく、後継者のいない職人さんの技術やノウハウをデジタルデータとして蓄積しておくことが目的と語る中島さん。そのデジタルデータを「編集可能な状態」にすることで、貴重な職人のノウハウを形状を部分的に変更したりすることができ、より便利なアイデアをみんなが持ち寄ってアップデートが可能な状態にすることができます。伝統工芸にまつわる貴重なデータのアーカイブは、ビジネスモデルやマネタイズも含め、今後さまざまな面白い展開ができるのでは、と中島さんは話します。

オープンソース化することによって発展する3Dプリンターの活用

「FAB-LENS」はウェブサイトでCADデータを積極的に公開し、自宅の3Dプリンターで印刷してカスタマイズ用のパーツを製作し自由に組み替えたり、他のユーザーに向けてアップデートしたデータをシェアできるようにしています。

「オープンソース化のデメリットはほとんど無いと考えています。仮に模倣品が出回ったとしても、SNSが証人になってくれます。僕たちのプレスリリースをSNSに投稿した日付が「僕たちのプロダクトが先発のオリジナルである」という証拠になるからです。技術を出し惜しみせず、広く多くの人に発信しながらより良いデータにアップデートされて行くことで、ものづくりの仕組みが変わっていくと考えています」。

試作品の数々
試作品の数々

「ものづくりのオンデマンド化」とMade in KYOTOの魅力

大企業による大量生産型ではなく、これまで世に出ることがなかったアイデアを形にし、製品化したいと考えてる中島さん。実際、YOKOITOの作業スペースには、たくさんのプロトタイプが並んでいました。

こうした活動を行っているYOKOITOの創業者3名は現役の大学生。3名とも関東出身だが、「京都」という土地で起業したのには理由があります。それは、世界展開を視野に入れたときに、Made in Japan よりMade in KYOTOの方が世界に向けてのブランド力があると中島さんは話します。また、学生の町京都ならではの、優秀な人材を集めやすいことも理由の一つだそうです。

「芸大が多いこともあって、京都は古い街ですが新しいことに寛容な雰囲気があります。東京にはたくさん3Dプリンター関連のベンチャーはありますが、京都の方がより3Dプリンターの能力を発揮できるのではないでしょうか」。

今後のビジョンは「小規模な3Dプリンター工場」

3Dプリンターのデメリットは、生産数が少ないこと。そのため、1つを製造するのに、時間がかかってしまいます。材料費はある程度抑えられますが、人件費がネックになってしまいます。そうした課題を、3Dプリンターを複数台並べることでコストを下げ、商品として展開するのに可能な数を生産できるように計画中とのこと。

「FAB-LENS」のように、商品展開を前提に「小規模な3Dプリンター工場」としてある程度まとまった数を生産していきながら、新製品や新しいものづくりの取り組みを実践していこうと見据えています。

(TEXT:mamita)

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