半導体チップの研究で、IBMは長年にわたり技術革新を積み重ねてきた。そして今、IBMの研究活動は世界初の7ナノメーターの半導体チップの製造の成功という形で結実したと発表した。これはチップ中の小型化されたトランジスタの大きさがわずか1メートルの70億分の1しかないということを意味する。これは人の髪の毛の太さの1400分の1の大きさである。
これらのチップが開発されたことで、ムーアの法則(1965年にIntelの名誉会長だったGordon Moore氏の、チップに搭載される部品点数は数年毎に倍増すると予測した内容がその後広まった)通りに、この業界は少なくとも次世代チップが開発されるまでは発展し続けるだろう。
いったん市場で大量にチップが使われ始めると、速いコンピュータからよりスマートな「モノのインターネット」製品まで、もっと安く処理能力の高い優れた電化製品やネットに接続できるスマートな日常的なモノを市場で見かけるようになるだろう。
IBMはこの最新成果は、昨年同社が発表した30億米ドルの5ヶ年チップ研究開発投資の成果だと語った。昨年の発表はある意味ほろ苦いものだった。IBMは最新のチップ研究を行うものの、チップ製造事業を昨年中にGlobalFoundriesに売却することで合意したというものであった。(先週やっと当局の承認がおりた)また、IBMは過去数十年にわたる10の研究成果も7ナノメーターのトランジスタ作成に必要だったと述べた。
IBMのシステム事業は今後もIBM研究イノベーションによる最先端半導体の利用を継続するが、それらのチップはおそらくGlobalFoundriesによって製造されることになるだろうとIBMは語った。
最新のブレイクスルーによってIBMが製造した最初のチップは、機能トランジスタを搭載した7ナノメーターのテストノードだ。ということは、これらのチップの商用モデルの登場はまだまだ先になる。現存の最良チップ、例えば今あるデスクトップやラップトップを駆動するマイクロプロセッサでは、22ナノメーター、14ナノメーターの技術を採用している。次に登場する製造技術は10ナノメーター生産システムであり、7ナノメーターチップはその後になるだろう。
IBMによると、今回の7ナノメーター技術のブレイクスルーは、ニューヨーク州とのパートナーシップ、GlobalFoundriesとの開発アライアンス、サムスンやチップ製造機器メーカーとのパートナーシップ、そしてニューヨーク州オールバニにあるSUNY工科大学のNanoTech Complexに拠点を置く自社の研究者たちのおかげだとしている。
IBMはさらに、7ナノメーターチップによって技術レベルがさらに進み、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、認知コンピューティング、および携帯製品のニーズを満たすようになると語った。
IBMによると、実用に耐えうる7ナノメーターノードテクノロジーを開発することは半導体産業における大きな課題の1つであったという。従来の方法でそのレベルの小型化を追求するとチップの性能が落ちてしまい、小型化によって期待される利点(小型化による高性能化、低コスト化、低エネルギー消費)が損なわれてしまうのだ。
IBMによると、根本的な技術的障壁によって、7ナノメーターチップは製造が不可能であるという声も研究者の間には上がっていた。しかしながらIBMは、IBM Researchによって開拓された新しい半導体加工技術を駆使したという。シリコンゲルマニウム(SiGe)やチャネルトランジスタ、極端紫外線(EUV)リソグラフィの統合といった従来の革新的技術を多段階で駆使したのだ。それにより、IBMはチップのサイズを現在流通している最高の10ナノメーターテクノロジーを使った製品との比較で50%も小型化することに成功した。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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