#GMICTokyo: 日本・米国・中国・インドに見る、モバイルマーケティングの違いとローカライズの必要性

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本稿は、7月10日に東京で開催された、GMIC Tokyo 2015 の一部だ。

昨年に引き続き、中国の大手テック企業が組織する GWC(長城会)のカンファレンス GMIC(Global Mobile Internet Conference)の東京イベントが、六本木の東京ミッドタウンで開催された。

午後のセッションでは、日本・アメリカ・中国・インドのモバイルマーケティングを専門とする企業のエグゼクティブを招いて、各国のモバイル市場におけるマーケティング手法の特性や違いについて議論するパネル・ディスカッションが持たれた。

このパネルの登壇者は、次の方々だ。

  • CyberZ 取締役 青村陽介氏(日本)
  • btrax CEO Brandon Hill 氏(アメリカ)
  • AdMaster COO Calvin Chan 氏(中国)
  • Vserv 共同創業者兼CEO Dippak Khurana 氏(インド)

なお、このセッションは、ヘイローの代表取締役である梅澤亮氏がモデレータを務めた。

各国各様、モバイル市場の違い

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Brandon Hill 氏

4人のパネリストはまず、それぞれの市場の特徴を説明することから話を始めた。Hill 氏は、アメリカのモバイル人口は1億8,750万人で普及率は80%と非常に高いことを指摘。青村氏は、日本のユーザは熱しやすく冷めやすいので、あるモバイルアプリを投入してから3ヶ月以内に6割のユーザが飽きてしまうが、そのうち6割は後日戻ってくるなどユーザ行動が非常に繊細であるため、日本ではローカライズされたマーケティング活動が必要だと説明した。Khurana 氏によれば、インドでは2億1,300万人のモバイルユーザがいるが、そのうちの8割が男性。Android がスマートフォンの9割以上を占めていることもこの市場を特徴づけている。

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AdMaster の Chan 氏は、POES(Paid Media、Owned Media、Earned Media、Sales / EC Platform)という、メディアやプラットフォームを串刺しに横断してパフォーマンスを計測する必要性を指摘した。中国の三大ネット企業である BAT(Baidu=百度、Alibaba=阿里巴巴、Tencent=騰訊)などは、さまざまなメディアやプラットフォームを持つようになっており、企業がモバイルやネットマーケティングをする上では、それらを横断して評価する必要が生じるからだ。また、例えば、北京単体でも2,500万人が住んでいるため、北京向け、上海向け、深圳向けなど、地域特化版のメディアやプラットフォームが作られるのもトレンドであると話した。

アプリのマーケティングをどのようにやるか

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Calvin Chan 氏

Hill 氏によれば、シリコンバレーでは多くのマーケティング手法が生まれており、それらをアプリの種類によって使い分けたり、組み合わせたりする方法が主流などだと言う。代表的な方法としては、アプリのディスカバリーツール(目的に応じてアプリが探せるアプリ)への掲出や、Google や Facebook などでのキャンペーンを活用するものだ。

Chan 氏は、中国でのコンドーム商品「Durex Baby」のマーケティング事例を披露した。コンドームというのは、なかなかパブリックな場所で議論するのは憚られる話題であるため、WeChat(微信)などのソーシャルメディアを使ったマーケティングが非常に都合よいのだという。ソーシャルメディア上で KOL(Key Opinion Leader、ソーシャルメディアで影響力のある人)のアカウント8つを使って、1千万インプレッションのマーケティングを作り出したとのことだ。

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Khurana 氏は、インド独特のマーケティング手法である不在着信によるマーケティング事例を説明した。Vserv が手がけたコーヒー用クリーム「Nestle Everyday」のマーケティングでは、無料お試し品がもらえるキャンペーンを展開。約81万人に広告がリーチし、2.6万人がその広告をクリック。そのうち、2,636人が電話をかけてきた。広告の CTR(クリックスルーレート)は3.17%で、そのうち、電話をかけてきたのは約1割のユーザということになる。不在着信によるマーケティングの詳細は、以下の ZipDial に関する記事が詳しい。

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Khurana 氏は、他にもインドのクラシファイド広告サービス Quikr やプリペイドモバイル向けのトップアップサービス FreeCharge の事例も披露。さまざまな業態において、不在着信マーケティングが使われるようにあるのだという。モデレータの梅澤氏は、アメリカでもこのようなマーケティング手法が機能するかどうかを Hill 氏に尋ねたが、アメリカではおそらく受け入れられないだろう、という答えだった。

ユーザ行動の変化

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Dippak Khurana 氏

時の変化に伴い、モバイルを使ったユーザ行動にも変化が現れている。アメリカでは、モバイル上でクレジットカード番号を入力するのは面倒であり、他のさまざまな新しい決済方法が生まれていることを Hill 氏が指摘。ApplePay、Snapchat Pay、Square、ビットコインなど多くの決済手段が、Eコマースの売上アップに貢献していることを指摘した。

中国では、毎年11月11日の独身の日(光棍節)に、Eコマースサイトが年間最大の売上を上げることで有名だ。Chan 氏によれば、中国最大のEコマース・プラットフォーム Alibaba(阿里巴巴)」では、2013年では15.3%に対し、2014年では42.6%がモバイルで取引。その成長率は実に3.5倍だ。モバイルを使うかどうかは世代によっても異なり、80后(パーリンホウ)の世代の32%に対し、90后(ジョウリンホウ)の世代では54%が(PCなどではなく)モバイルを使って Eコマースを楽しんでいると語った。

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インドでは、信用に対する問題から、クレジットカードあまり広く使われていない。Khurana 氏によれば、Eコマースの70%がキャッシュ・オン・デリバリで決済されているとのこと。彼は、モバイルを使ったコマースの浸透は商品分野によって著しく異なり、例えば、電子製品などであれば、全取引の35〜40%がモバイルで行われていると述べた。

青野氏は、日本のEコマースのトレンドとして、C2C(個人間取引)が台頭してきていることを指摘。売り手が企業ではなく、非常に数の多い個人になるため、マーケティングに必要なデータをリアルタイムで取得する必要が生じ、キャンペーンを展開するのは難しくなっていると語った。

モバイルマーケティングにおける次のトレンド

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青村陽介氏

2015年の日本のスタートアップ・シーンは、アメリカと並んで動画メディアが席巻している。このことからも、日本では、モバイルにおいても動画を使ったマーケティングがトレンドになるだろう、というのが青野氏の見立てだ。

インドの Khurana 氏は、これまではマーケティングにおいてもモバイルファーストがよく見られる戦略だったが、これからはデータファーストになるだろうと予想。どのようなユーザが、どのようにして商品を購入しているかのデータが集められるようになり、より正確な情報を元にしたマーケティングができるようになるだろう、と指摘した。中国の Chan 氏も Khurana 氏の意見に賛同し、データをもとに誰が何を買うか、より正確に予想できる技術が確立され、それに基づいたマーケティングが可能にあるだろうと語った。

Hill 氏は、毎週のように新しいデバイスが発表されるシリコンバレーの特性を背景に、新しいビジネスに合った新しい広告ビジネスが生まれてくるだろうと予想。数年後には、自動運転の乗用車が実用化されることで、人は移動中に運転以外のことができるようになるので、車内空間がEコマースをはじめとする新たなビジネス機会に変化するだろうと述べた。

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