大型調達を実現するスタートアップは現れるかーー大物キャピタリストも参加して開催された「Incubate Camp 8th」

Junya Mori by Junya Mori on 2015.7.11

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2015年3月から募集を開始していた独立系ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」が毎年開催している起業家・投資家合同経営合宿「Incubate Camp」の第8回「Incubate Camp 8th」が、2015年7月10日、11日に開催された。

「Incubate Camp」は、シードラウンドの資金調達済ませているか、もしくはサービスリリース済みでさらなる事業成長を目指して資金調達を希望しているスタートアップを対象としたインキュベーションプログラム。前回の「Incubate Camp 7th」では、総額 4.6 億円のファイナンスが実現している。

「Incubate Camp 8th」には17組のスタートアップと、インキュベイトファンドのメンバーに、今回から新たにEast Venturesの松山太河氏と、YJキャピタルの小澤隆生氏ら大物VCも加えて、計12人のベンチャーキャピタリストが参加。

1日目は、起業家によるピッチと投資家によるメンタリングの後、起業家と投資家のペアを決めるためのドラフト指名が行われた。一晩かけて起業家と投資家のペアで事業案をブラッシュアップし、2日目には決勝プレゼンテーションが実施された。

17組の参加スタートアップのうち、ステルス段階で事業内容やサービスを明らかにできないスタートアップも多数参加していたため、現状公開できる情報をお伝えする。

17社のスタートアップによるプレゼンテーション

ブライトテーブル

ブライトテーブルの代表を務める松下勇作氏は、2012年に「Incubate Camp 2nd」に出場を機に同社を設立。現在は、チャット形式で飲食店情報を教えてもらうことができるQ&Aアプリ「ペコッター」を開発している。

「ペコッター」ではプレミアムコースをスタートを予定しており、チャット上から飲食店の予約ができるようになるペコッター予約などを開始するという。店舗に対してコール課金や上位表示課金などを開始することも予定している。

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他のユーザから回答がない状態でも、人工知能を使って回答できるようにすることが理想だそうだが、まだ精度が足りない状態。そこで、ブライトテーブルではクラウドを利用して回答しており、回答コストは1回あたり5円ほどだという。

こうした人力のコンシェルジュサービスは会議あにも存在しており、チャットで何でも相談できる「MAGIC」というサービスは、資金調達も実施し、成長している。レコメンドのデータを蓄積していくことで、AIを導入するための準備も可能だ。

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スマートキャンプ

古橋智史氏が代表を務めるスマートキャンプは前回の「Incubate Camp 7th」にも出場していたスタートアップ。前回に出場してから、プレゼン・提案資料作成のクラウドソーシング・プラットフォーム「SKET(スケット)」資料公開プラットフォーム「Boxil(ボクシル)」などのサービスをローンチしている。

「Boxil」は資料を公開することで見込顧客の獲得から、資料の改善提案まで行うサービスだ。広告とテレマーケティングの領域のリプレイスを目指しており、資料を公開するプラットフォームを提供し、SEOで見込顧客の獲得を行っていく。

boxil

そうすることで、これまで広告単価が高くなってしまっているためにプロモーションができていないかった中小企業も自社の事業やサービスを宣伝することができるようになると古橋氏は考えているという。

DragonDesk

タウン情報サービス「30min.(サンゼロミニッツ)」事業をイードに譲渡した、元サンゼロミニッツ代表取締役の谷郷元昭氏が新たに立ち上げようとしているのが、訪日中国人向けに爆買いをサポートするサービスだ。

2014年には240万人、2015年には400万人と年々成長している訪日中国人を対象としたサービス。家電などの商品以外に、不動産の購入も行われており、訪日中国人は平均すると一人あたり23万円ほどの消費をしているという。

訪日中国人の中で、訪日後にお店を調べる人はおらず、訪日前に調べてリストを作成し、訪日後はそのリストに基いて買い物を行っているという。そこで、谷郷氏はコンテンツを作成し、weibo等のSNSで発信していくことで、リストをもとに購入したいユーザへと情報を届けていこうとしている。

メディアで日中横断のコンテンツマーケティングを行いつつ、購入サポートサービスを提供し、店舗への送客手数料や不動産購入時の販売手数料などによるマネタイズを検討しているという。

「30min.」時に培ったコンテンツマーケティングに関するノウハウを活用しつつ、まずは訪日中国人向けにサービスを提供。将来的には欧米のレジャー消費などを開拓していくことを視野に入れている。

ストロボライト

”ボタニカル飯塚”と名乗りながらプレゼンテーションを実施したのは、ストロボライトの石塚秀彦氏だ。同社が運営しているのは、花や植物を中心としたボタニカルライフメディア「LOVEGREEN」。

ライトなボタニカルユーザが増えておりニーズが高まっている一方で、対応するソリューションがない、と石塚氏は語る。現在、「LOVEGREEN」は月間20万UUの数字となっており、衣食住と花植物やDIYと花植物などニッチではあるものの、競合の少ないテーマを扱っている。

LOVEGREEN

今後、UGMで花植物に関する写真の投稿を可能にしたり、植物店向けのウェブサイト構築ツールの提供、植物関連のIoTデバイスを開発するなど、ボタニカル業界を垂直に統合しようとしている。

将来的には、Houzzのような施工やECといった領域にも手を伸ばし、ビジネスを行っていきたいと考えているという。

おかん

おかんはこれまでに何度も本誌で取り上げてきたことのあるスタートアップだ。惣菜版オフィスグリコである「オフィスおかん」というプチ社食サービスを提供している。2014年6月には、サイバーエージェント・ベンチャーズやオイシックスから資金調達も実施している。

おかんのサービスは月額課金制で、現在の導入企業は150社。継続率も90%以上を記録しており、順調に成長している。現在、一部企業では決済アプリとの連携を試験的に導入しており、これにより同社は従業員の食事に関する情報を取得していくことを視野に入れている。

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おかん代表の沢木恵太氏は、ピッチの中で自社のことをフード関連の会社ではなく「ヘルスケアマネジメントカンパニー」だと宣言し、新たなアプローチを考えていることを明らかにした。

ダイナプティコ

ダイナプティコの等々力康弘氏が発表したのは、フードデリバリーサービス「maishoku」だ。元々の注力しようとしていたデリバリー飲食店に向けた、売上、仕出、勤怠、顧客管理を可能とするクラウド型レジシステムから舵を切った。

「maishoku」ではサイトを通じてメニューを注文すると、提携している飲食店にオーダーが行き、ユーザの元に食事が届けられる。現在、256店舗が加盟しており、完全成果報酬型となっていることもあって継続率は高い。

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法人顧客の数が比率としては高く、さらにこうした単価が高く、定期購買しやすいユーザを獲得するために、「オフィスmaishoku」という新サービスを構想している。

これはオフィスの50メートル圏内に位置するレストランがオフィスまで食事を運んでいくサービスだ。提供する食事の美味しさ、フードデリバリーサービスを2〜3年にわたって提供してきた経験を強みにサービスを展開しようとしている。

フューチャースタンダード

フューチャースタンダードの鳥海哲史氏が取り組んでいるのは、年における映像自動解析サービス「SCORER(スコアラー)」だ。カメラ網を設置し、画像の解析を行い、そのデータを用いて収益化をしていこうとしている。

スマートカメラへと切り替わっていき、ドローンや自動運転車等の登場が予測される中、カメラと画像解析関連の領域は成長していくと考えられる。画像解析の技術により、ひとつのカメラから色々なデータを取得することが可能なため、設置場所を確保していくことがフューチャースタンダードの課題となる。

同社はすでにいくつかの大手企業に設置に関する提案を実施しており、プログラム中にパートナーとなった投資家の西條晋一氏が関係している「Qrio」にも提案が決まったという。

鳥海氏は、人が集まる場所、通過する場所等にカメラを設置していき、「ロボット社会の目を担っていきたい」と語った。

Candle

Candleの経営メンバーは、学生が中心となって構成されており、CEOの金靖征氏も東京大学工学部システム創成学科の4年。そんなスタートアップが開発しているのは、メイク、ヘアアレンジ、ファッションといった美容関連のメディア群だ。

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キュレーションメディア「Topicks」と、動画メディア「Stage」を運営し、相互送客を行う他、YouTubeチャンネル等でコンテンツを配信していこうとしている。マネタイズのモデルや広告とキャスティングを検討しているという。

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CEOを務める長谷川浩之氏は、2013年代学卒業と同時に農業系のスタートアップを立ち上げ、2014年にサンフランシスコに日本人起業家向けシェアハウス「Tech House」を立ち上げ、運営を行っていた人物だ。

旅の検索・予約をチャットで行うことができるコンシェルジュアプリ。最初は自社で対応を行い、徐々にネイティブのインターンや各地のローカルガイドなどに対応をしてもらう体制を構築していく予定だという。

ユーザ数の獲得のために、ビジネストリップやローカルガイドのサービスとして使ってもらうことも視野に入れ、将来的には人工知能によるレコメンドシステムを実装していくそうだ。

MAKEY

MAKEYは、女性が自分に合ったメイク方法を知るため、ユーザ同士がメイクのノウハウを共有するためのサービス「MAKEY」を運営するスタートアップ。同社はOpen Network Labの第10期プログラムにも参加している。

TwitterやInstagramといったソーシャルネットワークで、ユーザは頻繁にメイクに関する情報発信を行っている。MAKEY代表の中村秀樹氏は、スマホとセルフィー文化により盛り上がっているこの領域に着目し、クックパッドのメイク版をつくりあげようとしている。

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「MAKEY」ではメイク方法を知りたい女性たちが、写真と文章でメイクプロセスを発信している。同社はこうしたCGMによるコミュニティに加え、キュレーションメディアを立ち上げ、スピードを重視した動きもしていくという。

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iDEAKITT

iDEAKITTはテキストだけの匿名性のソーシャルネットワークサービス「LifeCLIPS」を開発しているスタートアップだ。Open Network Lab第10期プログラムにも参加し、特別賞を獲得している。

CEOの藤田遼平氏がピッチを行い、いくつか新たな方向性を明らかにした。現時点では情報は非公開とのことなので、オープンになるタイミングを待ちたい。

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以下に、現段階では事業の情報が非公開となっているスタートアップを列挙する。

Good Moneyger

新卒でリーマン・ブラザーズに入社し、その年にリーマン・ショックを経験した清水俊博氏が立ち上げようとしているのは、投資で損をする人を減らすことを目的としたサービスだ。事業の詳細に関しては非公開。

Azit

18歳で起業し、現在22歳の吉兼周優氏もキャンプに参加。事業内容は非公開となっている。

クラウドソーシング方式のグラフィック制作会社であるフロンティア・エージェントを創業し、2014年に売却した経験を持つシリアルアントレプレナーである坪井直紀氏もプログラムに参加。BtoB向けのマッチングサービスの立ち上げを準備中であることを明らかにした。

一部非公開である企業に加えて、参加自体が非公開となっているスタートアップも何社か存在しているが、そうしたプレイヤーに関しては情報がオープンとなるタイミングを待ちたい。

2日間のプログラムを終えて発表された順位は、以下の通りだ。

  • ベストグロース賞 金氏・村田氏ペア
  • 3位 鳥海氏・西條氏ペア
  • 2位 坪井氏・松山氏ペア
  • 1位 中村氏・本間氏ペア

前回のキャンプでは入賞したスタートアップ以外にも、この後資金調達を決めたスタートアップもいくつか登場した。今回、キャンプに参加したスタートアップたちが、今後どのような動きを見せるのかに注目したい。

Junya Mori

Junya Mori

モリジュンヤ。2012年に「Startup Dating」に参画し、『THE BRIDGE』では編集記者として日本のスタートアップシーンを中心に取材。スタートアップの変革を生み出す力、テクノロジーの可能性を伝えている。 BlogTwitterFacebookGoogle+

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