過熱するポルトガルのスタートアップシーン:内外から注目を集めるスタートアップ5選

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Pedro Rocha Vieir氏は、ポルトガルの起業家の支援に取り組む非営利団体Beta-iの共同設立者で、社長とCEOも兼任している。

Above: A meeting room at Startup Lisboa. Image Credit: Startup Lisboa
上:Startup Lisboaのミーティングルーム
Image Credit: Startup Lisboa

自慢になってしまって恐縮だが、ポルトガルはいつだって魅惑的な場所である。長く豊かな歴史、美しい建築物、美味しい料理やワインに満ちた国だ。良質な生活、高度な教育システム、18歳までの義務教育が保障され、生活費も他のヨーロッパ諸国に比べると安価である。こういった特徴や歴史、現代的な生活様式が共存していることが、ポルトガルのスタートアップの成長を後押ししているのだと私は信じている。

ポルトガルはつまり、インスピレーションを与えてくれる場所である。

公平のために述べると、現在の起業ブームは当初ポルトガルの数年間にわたる経済不況から始まった。だが、この経済停滞が好都合だったのは、より多くの若者がいざ起業してみようと思ったことだ。上昇する失業率に直面して、若い起業家らはリアルな世界にインスピレーションを求め、市場のニーズを認識し、クリエイティブなソリューションを模索、展開してきた。その結果、スタートアップの数が劇的に増加し、数年にわたる不況の後、GDPは2014年には0.9%、そして今年は1.6%増となった。

起業家精神をより一層促進させるため、ポルトガル政府はPortugal Venturesという投資機関を設立した。同機関はイノベーション、科学、テクノロジーをベースにした企業のみならず、従来のポルトガル観光業や工業分野に属する企業への投資を目的とした4億5000万ユーロのファンドである。

また、多くのスタートアップインキュベータが設立され、順調なスタートが切れるよう新たな企業にオフィスやデスクを提供している。例えばポルトガル最大のインキュベータの1つStartup Lisboaは、テックから観光に至るありとあらゆるビジネス分野のスタートアップ企業約80社を常時支援している。

北部にはMicrosoft Venturesと提携したStartup Bragaがある。Startup Bragaは世界規模の成長を目指すスタートアップ向けのプレアクセラレーション、アクセラレーションそしてインキュベーションプログラムに重点的に取り組んでいる。

Lisbon Challengeは、Fundacityによると、ヨーロッパで4番目に成果を上げているアクセラレータプログラムで、スタートアップの成長と国際化の促進に取り組んでいる。たった3年間でLisbon ChallengeはY Combinatorに3社、Seedcampに2社、そしてTechStarsに1社のスタートアップを送り出した。Lisbon Challenge出身企業の40%が資金を獲得し、1社が買収されている。

Above: Startups at Lisbon Challenge. Image Credit: Lisbon Challenge
上:Lisbon Challengeのスタートアップ
Image Credit: Lisbon Challenge

そこで、革新的でエキサイティングなポルトガルのスタートアップをすべてご紹介することはできないのだが、今年注目すべき最もホットなスタートアップをいくつかご紹介しよう。

Unbabel

Unbabelは、機械学習と人間のクラウドソーシングを兼ね備えた、Y Combinatorが支援する賢いウェブ翻訳サービスだ。人工と人間の知能を組みあわせることにより、人間の手による翻訳の品質と同等の翻訳をより早く提供できる。Unbabelのウェブ上にあるオーダーフォーム、Eメール、APIを介すか、ZendeskとMailchimpとの毎日のワークフローに組み入れて翻訳を依頼することができる。同サービスにおける機械翻訳を利用すれば、膨大な経費の削減が可能だ。Unbabelによると、企業顧客はこれまで推定200万米ドルの翻訳ニーズコストの削減が実現できたという。Unbabelチームは、すぐ近くに素晴らしいリスボンのビーチがあることを良いことに、毎週水曜日にサーフィンをしに行っているようだ!

Cuckuu

Cuckuuはソーシャルなつながりによるモチベーションを利用して、ユーザ同士で一緒に生活体験ができるユニークなアラーム時計アプリだ。ユーザはCuckuuという独自のアラームを作成し、友人や家族、他のユーザをフォローすることができる。Cuckuuの設立者であるJoao Jesus氏、Christophe De Weerdt氏、Peu Fraga氏は、楽しくソーシャルな交流を通して互いに結びつき、刺激し合いながら物事を行う手助けがしたいと考えている。

PharmAssistant

PharmAssistantは、錠剤用のSmartBottleを開発した。これは、ユーザが服薬する時間になると視覚・聴覚アラームを発する機能が内蔵されている接続デバイスだ。服用パターンを分析し、複数の薬の相互作用による悪影響の可能性まで検知してくれるアプリもある。また同社はオプションでモニタリングサービスも提供しているため、家族や医師が離れた場所から、ユーザが時間通りに医師の処方に従って服薬しているかどうかをモニターすることができる。2014年9月、PharmAssistantは大手製薬企業Bayerから5万ユーロの助成金を受け取っている。

MagniFinance

MagniFinanceは、中小企業向けに日々の管理を簡素化し、財務計画がより正確に行える財務管理プラットフォームを提供している。このサービスは、財務管理に費やす時間をわずか1日5分に短縮してくれる。この時間節約に加え、異なる銀行口座を自動的に同期することで、請求書やサプライヤーの小切手リストの発行だけでなく、支出や収益の追跡管理と将来価値の予想までが可能になる。2014年、MagniFinanceは、International Acceleration Program Lisbon Challengeのファイナリストに選出され、Caixa Entrepreneurship賞を受賞し、Caixa Capitalから10万ユーロの資金を受け取った。

Popcorn Metrics

Popcorn Metricsは1年を費やし、コードを書かずにウェブ分析ツールを一体化できるプラットフォームを開発した。これまで、自社サイトにおけるユーザの動向をより深く理解したかった企業やマーケターは、自分たちでコードを書くかITスタッフに頼むしか方法がなかった。共同設立者のPaul Boyce氏はアイルランド出身でIT業界を去ってから自分の会社を設立した。彼は休暇で訪れたポルトガルに魅了され、リスボンで事業を立ち上げることを決意した。そしてスタートアップイベントで今のパートナーであるLuís Correia氏と出会い、ともにPopcorn Metricsを開発したのだ。

ここ3年、ポルトガルのスタートアップシーンは非常にエキサイティングな状態だ。この傾向は今後も続くと私は考えている。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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