500 StartupsのパートナーRui Ma氏が分析する、海外のスタートアップが台湾に開発チームを置きたがる理由

by Tech in Asia Tech in Asia on 2015.7.11

Rui Ma(馬睿)氏は、グローバルなシードファンド・アクセラレータである 500 Startupsで、中華圏を担当するベンチャーパートナーである。Twitterアカウントは@ruima


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Via Flickr by tsaiian. Licensed under CC BY-NC 2.0.

500 Startupsの既存ポートフォリオは現在、台湾企業9社のみならず、台湾に子会社または支社を置く外資系数社ほか、多くの企業を抱えている。500 Startupsポートフォリオと弊社以外が支援・投資している企業に、外資系スタートアップが台湾に開発チームを設置することに決めた理由と、そうした決定について想定内外の良い点と悪い点に関して率直な意見を聞いてみた。

情報開示:台湾政府は提携ファンドを通して私の雇用主である 500 Startups に出資している主要投資家である。私は台湾の優れたスタートアップを発掘するためにここ3年は台湾を頻繁に(だいたい月に一度)訪れている。

コストが最優先

台湾の経済に疎い人のために説明すると、台湾の賃金は過去10年以上伸び悩んでおり、大学新卒者の平均月給はわずか2万5,600台湾ドル(現在の為替レートで月約830米ドル、年間約1万米ドル)となっている。私が直接インタビューした開発チームを台湾に設置することを選択した企業では、給与決定の際に最優先されるのはコストであるとのことだった。

給与額についてまとめるために、PCI Executive Search の Norman Chang 氏に調査を依頼したところ、ハードウェアエンジニアのジュニアレベル(1~3年の経験)は、年間58万~86万台湾ドル(1万9000~2万8000米ドル)の現金報酬を得ていることが明らかになった。ただし、高利益を上げている企業によっては、 上級学位を持っているものに対して最高で6万5000米ドルを提示しているところもあるが、これは最高額であって通常はここまでの額ではない。プログラマーを志す人のためのエンジニア養成所である Alpha Camp の Bernard Chan 氏の話によると、台湾のスタートアップでは、経験年数2年未満の現在の年間現金報酬(自社株その他の利益を除く)は56万~84万台湾ドル(1万8,000~2万7,000米ドル)だという。確かに、最近のシリコンバレーで6桁もの給料が支払われるのとは大違いだし、平均でもシリコンバレー金額の3分の1以下のようだ。

では、台湾と隣の中国本土と比べてみるとどうだろうか。中国は特別安いということはなくなっているということはさておき(最近の統計によると、新人レベルの約半数が急成長を遂げ、シリコンバレーの十数年経験者レベルと肩を並べるくらいになっているという)、中国もいい勝負だ。ただ、台湾の求人市場は中国の過熱ぶりには遠く及ばない。離職率について詳細なデータを私は持ち合わせていないのだが、何人かに話を聞く限りでは、弊社の台湾の設立者運営チームは主に中国本土で運営するチームよりも、チームの安定性への憂慮がはるかに小さいという感触がある。

Rui Ma (in black and white T-shirt) in Taipei.
台北にて。Rui Ma氏 (白黒のTシャツを着ている右から2人目)

良い点:住みやすく、良質の才能に恵まれる

PicCollage(開示:500 Startupsのポートフォリオの1社)のJohn Fan氏と共同設立者たちにとって、台北は数十年間テクノロジーにおいてリーダーシップを取っていることにより、アジアの他の都市と比べて明らかに魅力的であった。なお、香港やシンガポール、上海といった場所では金融など才能選出のため競争している主要産業が他にある。John氏の説明によれば、都市の「魂」が重要であり、台湾は「学習意欲があり、クールなプロジェクトで働きたいというすばらしいエンジニアを発見できる」テクノロジーの血筋が十分に存在するという。これについて詳しくはよく引用される Paul Graham 氏のエッセイを参照してほしい。もちろん、台北がアジアで最も住みやすい場所の1つであると知られていることも幸いしている。最近、CNN の読者投票で台北は食べ物が最も美味しい都市として選ばれている。台北のインフラ整備もすばらしく、教育システムも優秀で、世界で最も犯罪率の少ない都市の1つでもあるのだ。

私がインタビューした企業はいずれも、自社のチームを管理するのが難しいと感じていないようだった。一方で、全員が、典型的な台湾エンジニアはシリコンバレーのエンジニアと比べて自己主張や自発性が弱いと話す。これを解決すべく、PicCollage はより文化に合った採用に注力し、創造力を伸ばしてさらに発言できるように、特別なスタッフトレーニングを生み出した。また、ほとんどの台湾人エンジニアは英語が堪能で仕事上のコミュニケーションがスムーズに進む。なお、私が話したほとんどの企業には、作業をうまく進めるために中心となるエンジニアチーム間で標準中国語がある程度堪能なスタッフがいた。

あまり良くない点:プログラミングへのアプローチが違う

しかし、設立者の皆さんには台湾は虹色・バラ色ばかりではないということを知っておいてほしい。Spoonrocket のエンジニアVP、Justin Lee 氏が2年前、エンジニアチームを立ち上げようと台湾に到着した際に気づいたのは、ほとんどのプログラマーがC・C++といった低水準言語の経験はあっても、アプリケーション開発にはほとんど知識がなかったのだ。それは、台湾がハードウェアに圧倒的に注力しているためだ。

技術的に私たちのニーズを満たし、かつスタートアップで働く意欲のある人員を探すのに、予想以上に時間がかかりました。

さらに彼が感じたのは、台湾の大学でのコンピュータサイエンス教育は、西洋で浸透しているより概念的なアルゴリズムへのアプローチではなく、特定の言語やフレームワークに力を入れている傾向が強いということだ。PicCollage はさらに、台湾には経験豊富なデザイナーが少ないということも挙げている。特に西洋の感覚に慣れている人だ。しかし、いずれも乗り越えられない壁ということではないし、両社は結果として、持ちうるコストで必要な才能を見つけ出すことができたのだ。

わかった! では、いつオフィスを出そう?

私が話した設立者のほとんどが、オフィス開設のベストタイミングは最初のシードラウンドで資金を調達し、エンジニアチームの拡大が必要となる後だと考えている。それ以外には、全チームが移動するのでない限り、たいていのチームはメンバーが分散している状態で一緒に仕事をするのは、特にそれが製品またはサービスに「魅力」が見出せていない場合には困難だと考えている。いずれにせよこれはアウトソーシングとしてではなく、完全なテクノロジーチームを作り上げるチャンスと考えるのが大切だ。運営側、少なくとも CTO はチームを成長させるために膨大な時間を費やす必要があるだろう。

あなたがいざ台湾にやって来たら、勢いある台湾の設立者コミュニティである 500 Startups のようなコミュニティの一員になればもちろんぐっと簡単になるが、そうでない企業は、モチベーションが高くて技術のあるエンジニアに出会うために現地の集まりやハッカソンに参加すると効果があったとのことだ。このギャップを的確に埋めようとしている最新の取り組みの1つが、Taiwan Startup Stadium(台湾新創競技場)である。台湾のスタートアップが海外進出したり、海外のスタートアップが台湾に進出したりできるよう、十分なスペースやプログラミング技術を提供するスタートアップサービスプロバイダーだ。

今後の展望

全般的に言えば、他のマーケットで事業を展開しながらも台湾で主要な技術的人材を雇っている企業がソフトウェア開発サイドでかなり感動的なサクセスストーリーを生み出すのを私は目にしてきた。当然ながら、外国の大企業はその点に気づき始めている。他の企業と同様、Mozilla や Cheetah Mobile(猟豹移動)は台湾に上陸してエンジニアチームのオフィスを設立し、確実に台湾エンジニアたちの給与を引き上げる力となっている。

ついでながら言うと、ハードウェア企業にはもっと合う環境なのではと思える。また私たちは少なくとも1つの投資先会社、日本のスタートアップ WHILL が台湾でエンジニアリング系の豊富な知識を活用しているのを目にしている。世界中で起きているスタートアップブームの高まりは、台湾にもその跡を残し、物事は急速に変わりつつある。それは引き続き私たちがここ 500 Startups で注意深く観察すべき最も興味深いスタートアップエコシステムの1つだ。そしてもしあなたが台湾にいるのなら、いつでも私や台北を拠点とする同僚のCjin(程希瑾)氏に連絡してくれればいい。

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【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

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