テレノイドを使ったコミュニケーション開発事業を営む、テレノイド計画が設立

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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テレノイドとテレノイド計画を説明する石黒浩教授(右)

7月1日、東京の日本ベンチャーキャピタルの支援を得て、京都にテレノイド計画が設立された。7月13日に東京で開かれた記者会見では、このプロジェクトが本格的に披露され、小さなロボットを使って、まさに立ち上がりつつあるサービスの市場見通しについて、議論がなされた。この試みの中心人物こそ、テレノイドという足の無いロボットを作った石黒浩氏(大阪大学特別教授、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)フェロー)で、彼は ATR では生活支援ロボットに特化した、自身の名前を冠した研究所も率いている。

47億円の「けいはんなATRファンド」でこのプロジェクトを支援する、NVCC 代表取締役の奥原主一氏は、NVCC と ATR の関係について説明し、ATR は京阪奈として知られる地域にあり、ロボティクス、情報サイエンス、テレコミュニケーションの分野でマネタイズ可能な知的所有権を多く保有していることを明らかにした。テレノイド計画に監査役として参加する坂野寿和氏によれば、ATR は来年で設立30周年を迎える。テレノイドは、2024年6月まで運用される「けいはんなATRファンド」の支援を通じて、製品開発に用いられる ATR 初の知的所有権群になる模様だ。

渋谷を拠点に、対話ができる高齢者介護や警報通知サービスを提供する、こころみの社長を務める神山晃男氏がテレノイド計画の社長を兼任する。この小さなロボットは遠隔操作端末として機能し、ユーザと対話する相手にオペレータが必要となるからだ。こころみが可能とするオペレータ集団は、テレノイドのサービスの一環として提供される。ターゲットとする市場は、精神疾患のある人は言うまでもなく、認知症に悩む高齢者の人たちだ。現時点で価格は未定。

telenoid-demonstrationテレノイドは、身体と精神の両面からの支援を目的として、ヒューマノイド・ロボティクス・インターフェイスの情報普及と高齢者介護を目的として、石黒氏が自身の身代わりコピーを開発したジェミノイド計画に端を発する。残念ながらジェミノイドは動きが一様過ぎて、見映えが動く死体に見えるような印象を与えた。その違和感を軽減すべく、テレノイドは求められる機能が丸裸で、そのデザインも色の無いシンプルなつくりとなっている。日本やデンマークの複数の介護施設で実施されたテストでは、必要最小限の頭と胴体しか無い、そして音声しか出ないロボットが、より好意的に受けられることがわかった。

パッと見では少し青白く見えるテレノイドは、ユーザが親しみを持てるよう、真剣な眼差しを投げかけるのに加え、ユーザの状態をチェックできるよう多くのセンサーが備わっている。テレノイドは、サイバーワールドとリアルワールドを中立ちする媒介として機能するのだ。多くのユーザは、気に入った音声を適用し、好きな映像を柔らかく色のついていない顔に投影することで、テレノイドにポジティブなイメージを加えるようにしているようだ。同社はこのサービスがヒットし、そう近くない将来に「人類にとっての新しい友人」を作り出せることを望んでいる。

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