日本でB2B/Enterpriseのサービスを始めるときに考えるべき市場選択というか勝負の切り口 

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A Second City rose from the ashes of the first – Chicago. / 15609463@N03

編集部注:本稿は本誌でも執筆中のブロガー、archetype鈴木大貴氏のブログ「インプットをアウトプットするブログ」からの転載記事。同氏に許可を頂きこちらに掲載させてもらった。

PCからスマホへのデバイスシフトによる特需やキュレーションメディアラッシュも一段落したことで、スタートアップのテーマとして実業×ITやB2Bの領域に注目が集まってきています。

TheBridgeでひたすらB2Bスタートアップの調達動向を追いかけてきたお陰で、なんとなく日本国内でB2Bスタートアップを立ち上げたりサービスを始める際に念頭に入れておいた方が良いなぁと思うことがまとまってきたのでメモがてら。

「どの領域に注目していますか?」と聞かれる質問の直接的な答えにはならないのだけど、以下のアプローチで勝負するB2Bスタートアップを見つけると寄り目がちになります。

切り口①市場性と優位性のあるテクノロジーで勝負する

競合や代替手段を思い浮かべたとしても自社以外に選択肢が無いようなテクノロジーを武器にサービスを展開しているところは当然だけど改めて強いなぁと。最近だとDeep Learningがかなり盛り上がってますね。

自分にそのバックグラウンドがあるかもしくは仲間を集められるか次第だけど、圧倒的に高いテクノロジーを持っていることが大きな優位性を持つのは当然だしTech Startupならそうあるべき。

切り口②従来比10倍のUXを提供する

UXの良し悪しがユーザー獲得に大きな影響を与えるB2Cサービスと比較すると、導入意思決定軸の中でUXのプライオリティがそれほど高くないB2Bサービスは進歩が遅くその差は広まるばかり。

Slackを代表例に従来型のツールより圧倒的に高いUXを提供することで急成長する領域は全然あるような気がするので、勝負の切り口としては考えてみるのもいいかも。

ただしUX切り口の勝負は「ユーザーと導入意思決定者の距離が近いこと」が大事な条件なので全社で利用するサービスより特定の部門が使うものに限定されるサービスになりやすい。そうでない場合は「UXによる改善効果>スイッチングコスト」の証明が必須で啓蒙営業をせねばならずリードタイムが伸びてしまうので低単価サービスだとちょいと微妙かも。

で具体的に10倍UXってなんぞやという話だけど「モバイルフォーカス」や「自動化」「働き方の変化」とかこのあたりはキーワードに入るはず。

切り口③キャッシュポイントをずらし、面を一気に抑える

サービスの提供価値自体に課金することが一般的なEnterpriseシステムですが、キャッシュポイントをずらすことで急成長したZenefitsのやり方は結構な衝撃を受けました。

人事ERPを無料提供することで一気に面を押さえ、保険料で稼ぐZenefitsのモデルは「そのやり方があったかー」と思えるB2C的な戦い方なのでこのフリーミアム方式を他の領域でできないか考えてみるのもいいかも。

守りより攻め

これは切り口というか個人的な好みなのですが、使うことで良い人が採れたり売上向上に繋がる等、自社の成長に繋がるサービスを「オフェンス型」、オペレーションコストを下げることができるサービスを「ディフェンス型」と呼ぶとすると、オフェンス型の方がアップサイドが大きく、「期待」にお金を払ってもらいやすい(気がします)。

ディフェンス型は導入により削減できるコストが対価の最大値であることに加え、人一人分の仕事を削減しても日本ではレイオフとセットになり難い。ただし導入し誰の効率を上げるかによってコスト削減なのか投資なのかが分かれることもあるので、結局誰の何の問題をどう解決するのか、作ろうとしているプロダクトやビジョンは仲間やユーザーを惹きつけるものなのか、結局はそこが大事だよなぁと改めて。

ということで

久々に考察っぽい記事を書きましたが海外B2Bスタートアップネタを中心に投稿する研究グループを作ってるので興味ある人はぜひご参加ください。

B2B Tech Research

日本と海外は当然ながら商慣習が異なるため安易なローカライズには注意が必要ですが、まだB2B、特にEnterpriseはまだまだタイムマシンが効きやすいのでその辺りもご参考になれば。

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