Eメール、会議、管理職を廃止したスタートアップMT Onlineが成功している理由

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Christian Renella氏とHernán Amiune氏は、メキシコのMT Onlineの共同設立者である。彼らは共に.NETプログラマーであり、コルドバ・カトリカ大学の教授を務めている。

Above: The MT team at work Image Credit: oMelhorTrato
上:仕事中のMTのチーム
Image Credit: oMelhorTrato

当社は設立して8年の中南米全域で事業を行う会社で、従業員は現在36名。私たちの最大のこだわりは「生産性」だ。

2007年以降、同じ労働時間で利益をスケールすることを目指し、それぞれの仕事を詳細にわたって分析してきた。

その結果、私たちは6年前にEメールを、3年前にミーティングを、そして今ではプロジェクトマネージャーを廃止し、週休3日制を採用している。この3つの変化を実践した理由とその方法について以下に説明したい。

1. Eメール

数年前に私たちが最も驚いたことのは、Eメールの利用が当社にもたらすマイナス要素だった。今日でさえ、驚くことに20年の歴史があるEメールは私たちが使っている最も生産性の低いツールであることを他の企業はわかっていない。当社では社内の全てのコミュニケーションで(そして少しずつではあるが社外とのコミュニケーションでも)Eメールはすべて廃止することにした。Eメールには以下に述べるように2つの大きな欠点がある。

  1. Eメールは情報を閉じ込めてしまう。つまり、特定の人とコメント、提案、質問をやり取りするときには、社内の他の人に対しては進捗状況について知る機会をブロックしてしまうことになる。一方で理想的な状況は、いつでも、そして情報を必要としている誰に対しても文書が直接アクセスできる状態である。社内プロジェクトの進捗状況、現状の詳細情報についても同じことがいえる。
  2. Eメールは結局、各チームメンバー個人の仕事の羅列になってしまう。私たちは次の仕事が何かを毎日チェックしなくてはならない。そこでは明確な優先事項がなく、組織化されない状態に向かって進むことになる。間違いなく、他の同僚たちと正確に情報が同期されなくなる。

この問題をどのように解決したか?

私たちは独自の仕事用ツールを開発した。自分たちのニーズに合わせて特別にデザインされたものだが、Trelloが現在提供しているものと非常に良く似ている。これは社内の誰もがアクセスできる一種のコントロールパネルで、各プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで確認できるほか、社内の全プロジェクトをチェックすることができる。

現在進行中のプロジェクトに誰かを追加する必要がある場合、全員に周知するために何百通ものEメールを(まったく組織化されていない方法で)再送する必要はない。ただプロジェクトの履歴のところに行き、スタートからこれまでの経緯、実施状況、今後の課題を確認すればよい。そうすればすぐに仕事を始められる。

さらに本日、当社のクライアントもこのコントロールパネルにアクセスできるようにした。したがって、「そのプロジェクトに関して何かお知らせはありますか?」、「次の配信までにどれくらいかかりますか?」といった社外メールをやり取りすることなく、顧客企業は当社の進捗状況を確認できるようになった。

2. ミーティング

次に廃止することを決定したのはミーティングだ。テクノロジー会社として各部門にプログラマーなどがいるが、質の高い仕事をこなすには午前及び午後にそれぞれ平均して4時間の続けた仕事時間が必要といえる。

ミーティングの出席による「中断」は、マネージャーに比べてプログラマーには大きな痛手だ。マネージャーの仕事は、基本的に次から次に行われる会議で構成されているという。だがプログラマーにとっては、1日にたった1つの会議が、彼らの1日の生産性に50%の影響を及ぼすことになるのだ。

通常、ミーティングはプロジェクトマネージャーや同僚たちと一緒に仕事の進捗状況を確認し、問題点を議論するために行われる。ミーティングをなくすために、当社ではEメールを廃止してから実践しているコントロールパネルを利用している。そこでは誰もがプロジェクトの進捗状況、ある時点でどのチームメンバーがどのような仕事をしているかなど、生産性に影響を与えることなく把握することができる。

議論が必要な特別な問題が発生した場合、当社ではCampfireというグループでコミュニケーションが可能なチャットシステムを利用している。これはミーティングとどのように違うのか。ここでの利点は、コミュニケーションがすぐに同期されないことだ。だから仕事を中断して集中力が失われることがない。4時間通しの仕事を終わらせることもでき、その後で時間と集中力があれば回答待ちとなっている質問に答えればよい。

この新しい仕事法によって、当社のコミュニケーションは非同期となっただけでなく、基本的にテキストのみでやりとりされるようになった。プロジェクトに参画したいと思っている新しいメンバー(さらに、休暇中、病休中、不在のメンバーなど)は、既にプロジェクトに取り組んでいたメンバーの貴重な時間を奪うことなくテキスト情報を読んで理解することができる。

3. マネージャー

最後に、1年前に当社はマネージャーというポジションを廃止して仕事をしたいと考えた。今では進捗状況をコントロールする人は不要だ。なぜなら、現在進行しているプロジェクト、テクニカルな対処法、経過時間、使用リソース、これまでの実績など、全ての情報はオンラインで共有されており、スタッフ全員が見ることができるからである。

プログラマーにとって、同僚が時間通りに、正しいやり方で仕事をしているかどうかを知るのは難しくない。だが当社に以前あった問題は、Google創業者兼CEOのLarry Page氏が語っているように、「エンジニアはテックの知識が限られているマネージャーに監督されるべきではない」という点だ。

この仕事法を実践するために、当社は2つのガイドラインを設けている。

  1. 自発的に仕事を進めることができるエンジニアのみを採用する。つまり、自分の仕事を四六時中コントロールされる必要のない人に限る。基本的に、自分たちと同じような起業家を選んでいる。
  2. 入社後、採用者には当社のオーナーとなれるような「ストックオプション」プログラムがあることを提示している。

私たちは、大人は管理される必要はないと考えている。私たちは皆成熟した大人なので、チームのメンバーに完全な自己管理を認め、責任を委譲している。そしてメンバーのパフォーマンスは完全に成果によって判断される。この最後のポイントについての素晴らしいTEDプレゼンテーションをシェアしたい。私たちが産業化の時代の次に来る、新時代について考えをめぐらせる機会を与えてくれるものだ。

生産性が向上したことで、私たちは週休3日制の勤務体制に移行することができた。これが実現できたのは、エンジニアチームとのミーティングは必要ないと認識し、コミュニケーションの一環としていたEメールを廃止し、共に働くメンバーが皆完全に自律して自主性を発揮し、委任された仕事に対して責任を持つべきであることを理解したからである。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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