8月の最終土曜日、柏の葉スマートシティのイノベーション拠点「KOIL」で、市民参加型のハッカソン・プログラム「柏の葉ッカソン」が開催された。
このイベントにはリクルート・ホールディングス傘下各社(以下、リクルートと略す)の社員80名、三井不動産の社員4名、柏市の市職員5名、市民活動団体から8名が参加。リクルートの社内新規事業制度 Recruit Ventures で集まった30件のビジネスアイデアを、アイデア考案を考案したリクルートの社員自らが街へ出て披露、市民にアイデアを叩いてもらおうという試みだ。
このイベントに先立ち、一般応募(リクルート社内以外の一般市民からの応募)から最優秀賞、優秀賞の受賞者表彰が行われた。
- 最優秀賞「子育てコンシェルジュチルドレンズセンターの開設」 加藤裕希氏
- 優秀賞 「Kids Scout(キッズ・スカウト)—学びの基地—」 水上哲也氏
- 優秀賞 「ルイーダの酒場」 大串寿人氏
- 優秀賞 「柏の葉ベビランプロジェクト」 平岡健次氏
一般応募の受賞者表彰の後、ワールドカフェの方式により、リクルートのアイデア考案者がアイデアを聞いてくれる人のテーブルをまわる形でハッカソンが開始された。各テーブルにはグラフィックレコーダーが待機し、考案者とテーブルホストの間の対話を迅速にまとめていった。
先にも書いた通り、Recruit Ventures のプログラムからは30件のアイデアが披露されたが、そのすべてをここで紹介するのは難しいので、興味深かったアイデアを5つばかりピックアップしてみたい。
Si-star
大病院に通う「軽症患者」と、経験豊富な「大病院出身のクリニック医師」をつなぐサービス
- 大病院が混雑し、重症患者の対応が遅れている。
- 姉妹病院制度で、大病院から軽症患者を地域のクリニックへ送客する。
- 紹介状を書くのが手間。医師が簡単に紹介状を作れる仕組みが必要。
カシポ
空き時間を何かに使ってもいいよという人が福祉をお手伝いし、Rポイントや柏の葉ポイントを得るサービス
- 人材不足、社会保障に関わる財政不足の解消が目的。
- 介護に求められるのは排泄と入浴。それをやってもらうことができるのか?
リクルートエナジー
再生可能エネルギー設備または再生可能エネルギーの一括購入、および、そのシェアを提供するサービス
- 再生エネルギーを導入するためにかかるコストが高く踏み切れない。興味はあるが価格がボトルネック。
- 1軒の屋根でできる発電量で分配までできるか?
OpenKids
子供を学童保育に通わせられない家庭と、近隣住民で時間を提供できるカスタマ(シニアや専業主婦)を結びつけ、子供の学童保育を地域で代替するプラットフォーム
- シニア層が子供と付き合いが増えることで、アクティブなまちづくりができる。
- 共働き世帯は学童保育に支払う費用の増加に悩む。
every delivery
新聞配達業者によるITサービスと連動した日常的な消費財の配送サービス
(例えば、Cookpad で検索した料理の食材を予約すると、翌朝届けてくれる)
- 一人で住んでいる人の確認連絡サービスは提供できるか?
- 新聞を読む人が減っているとは言え、さらに荷物を持てるか?
- ネットスーパーと戦えるのか?
今回の市民らからのフィードバックを受けて考案者はアイデアをブラッシュアップ、リクルートでは9月16日に一次審査会を実施し、実証実験を経て2016年4月1日に事業化の可否が決定される。晴れて事業化が決定されたときには、考案者はそのビジネスに異動・配属となる見込みだ。
比較的よく見かけるオープン・イノベーションの形としては、大企業が持つアセットとリソースを拠出し、そこにスタートアップが持つアイデアを掛け合わせるというものだ。リクルートは大企業ながらもアイデア創出の社風を伝統的に持っている組織であるため、今回のような試みが可能だったのかもしれない。市民から先進的なアイデアに活発な意見が上がったのも、東京と学研都市つくばの中間に造された、柏の葉という街の土地柄が深く関与しているのだろう。今後このような試みがが、日本各地からも生まれてくるのを楽しみにしたい。
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