新たな雇用の流動化を実現するために−−人材のレンタル移籍サービス「ローンディール」がローンチ

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企業間のレンタル移籍プラットフォーム「ローンディール」が本日9月15日にリリースした。

ローンディールでは、企業に在籍しながら別の企業へ人材を貸し出すことができる。いわば、これまでの出向や企業間の人材交流をプラットフォーム上で展開し、企業間の人材交流を促進する形と言えるだろう。

サービスでは、ローンディールが受入を行う企業に対して課題をヒアリング。募集する人材を軸にした事業をプロジェクト化し、そのプロジェクトの様子を記事化する。掲載された情報や受入企業の情報などをもとに人材を貸し出す企業が応募を行う。面談を通じて双方をマッチングし、情報の管理など移籍に関しての契約など進行管理を行った後、レンタル移籍がスタートする。

レンタル移籍を行う社員は、貸出企業に所属し、給与も従来と変わらないまま違った企業で働くことができる。受入企業は、ローンディールのサービス利用料として月10万円をローンディールに支払う。レンタル移籍の期間は、約6ヶ月など期限を設定。レンタル期間中、ローンディール側は社員がパフォーマンスを発揮するための環境づくりや、双方の企業に対しての提案やコミュニケーションなどのサポートしながら、マネジメントサポートを行う。レンタル移籍期間終了後は、受入企業、貸出企業それぞれにフィードバックを行いながら、双方に対してレンタル移籍を通じたメリットを見出す。

人材を受け入れる企業は、異なるキャリアを持った人材を通じた新たな視点や、他分野の人材を通じた人脈やノウハウ、ナレッジを活用することができる。人材を貸し出す企業にとってみても、人材に成長の機会を提供したり、自社にはない規模の事業を通じてビジネスモデルを把握し、イノベーションのきっかけとしたり、場合によって業務提携や資本提携を行う前に相手企業の文化を知ることができる、などの価値がある。

例えば、こんなパターンが考えられる。大企業にいる入社3年目程度の社員に対して、新規事業やより広い視点での事業をマネジメントし、事業を起す経験を積ませるためにローンディールを活用してベンチャーへ送り出し、自律的にプロジェクトを推進する人材へと成長させる。人材を受け入れるベンチャーにとっても、高いスキルをもった人材を雇用せずに一定期間活用することで、迅速にプロジェクトを展開することができる。

「これまで、新たな人材を社内に置くためには直接雇用するしかありませんでしたが、この形を活用することで資金力が乏しいベンチャーでも多様な人材を活用することができます。新規事業だけでなく、経理などのバックエンドなどの効率化、仕組み化も推進でき、いままさに欲しい即戦力の人材を従来よりも低コストで人材を強化することができます。

他にも、新領域に対する市場調査や人脈の構築などが考えられます。人材を貸し出す企業にとっても、事業連携を見据えたパートナー探しや関係強化などの企業としてのメリットだけでなく、社員個人としても従来では分業化された部署では経験できない多様な経験を積み、それらを企業内に還元する、リバースイノベーションにも似た効果を得ることができます。結果として大企業の成長に貢献し、かつ社員個人によっても新たな経験を積むことができるようになります」(ローンディール代表取締役の原田未来氏)

ローンディール代表取締役の原田未来氏
ローンディール代表取締役の原田未来氏

原田氏は、かつて流通や決済サービス事業を展開するラクーンに所属し、同社の東証マザーズ上場も経験していた原田氏は、その後、カカクコムなどを経てローンディールを設立した。自身の経験をもとに、長く一つの企業に所属するのではなく、異なる分野や多様な考えに触れる機会を作り出すことで、個人の働き方の在り方や企業の成長に寄与するのでは、と考えたことがサービスのきっかけだったという。

大企業からベンチャーだけでなく、IT企業と非IT企業、日本企業と海外企業、地方企業と東京企業とのレンタル移籍、などさまざまな移籍が考えられる。同様の形としてNPO法人クロスフィールズが大企業の社員を新興国の企業に対して人材派遣を行い企業の人材育成と新興国に対する技術支援の両方を実現する「留職」プログラムがあるが、ローンディールはBtoB向けプラットフォームサービスとしてあらゆる企業にサービスを提供し、従来の直接雇用だけではない人材の流動化を促進する狙いがある、と原田氏は語る。

「社員個人にとっても、異なる環境に身を置くことで、会社規模や事業内容に依存しない自分のスキルを見出すことができ、スキルの体系化を図ることができます。また、複数の事業に関わることで、経験や知識における専門性が増え、専門性の組み合わせが相乗効果を生み出す。また、出向という形だからこそ、転職によって途切れてしまうことなく、企業との継続的な信頼関係を築くことができます。今後の労働市場を考えるに、こうした個人の働き方とうまくリンクさせた新たな雇用環境を実現することがいままさに求められています」(原田氏)

ローンディールのサービス画面。
ローンディールのサービス画面。

SNSなどの登場によって個人を通じた信頼獲得が注目され、個人の働き方が注目されている。しかし、優秀な人がすべて独立や起業を志しているわけでもない。会社という組織にいることでパフォーマンスを発揮する人物もいるはずだ。企業にとっても、人材育成の観点から早い時期から多様な経験を積ませ、かつ外とのネットワークを構築させることが今後ますます求められるくると予想される。

「今後は、一週間のうち3日は大企業、2日はベンチャーなど、2つの会社を並行して働くパラレルワークができる時代がくるかもしれません。クラウドソーシングなどとは違った人材のB2B事業を通じた新たな雇用の形を模索していきながら、時代に則した個人の働き方を実現しながら、企業としての成長に大きく貢献できる仕組みづくりを提供していきたい」(原田氏)

本日からスタートしたローンディールだが、まずはスタートアップなどベンチャーを中心とした受入企業の掲載を増やしていくが、今後は大企業や非IT企業などの受入情報も掲載していく、と原田氏は話す。

出向という従来のあり方をプラットフォームを通じて提供し、雇用だけでない人材の流動化を図るローンディール。未来の働き方をつくる一つの方法として確立できるかもしれない。

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