Beaconを活用した見守りサービス「otta」が公立小学校にテスト導入を実施し、地域の防犯力を高める

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otta

広島のスタートアップが開発している見守りサービスの「otta」。Beacon技術を活用した見守り専用端末を子供たちに所持させ、端末から発する電波を専用アプリをインストールしたスマホがキャッチすることで、見守り端末をもった子供がどこにいるかを通知することができる。アプリには、専用端末が付近を通ったときに通知だけを送る見守り専用のアプリと、保護者などの通知を受ける管理者向けのアプリの2つがある。

「技術をいかにして社会に役立てるかを考えたとき、子供たちの見守りなど防犯的な観点からサービスを開発したかった」とotta代表取締役の山本文和氏は語る。2014年11月にサービスをローンチしたotta。昨年度に開催された全国Startup Day in 中四国で筆者ははじめてデモやプレゼンを拝見した。

サービスの肝は、見守り用の専用アプリをインストールする人を増やすことで、子供たちに所持させている専用端末からの電波を定期的に受信できる環境をつくり、地域全体で自然と子供たちの安全を確保するかだという。

アプリのダウンロードを広げるだけでなく、山本氏は広島市内にある私立の小学校にアプローチし、安田小学校の低学年の子供をもつ保護者を中心にサービスのモニターとしてテスト導入を進めてきた。実施に際しては、丁寧に小学校の保護者らに対して説明会を実施。保護者などの意見を参考にしながら安全に導入するためのプロセスを踏まえていった。

テスト導入では、保護者へのアプリのインストールだけでなく、学校の出口付近や市内の主要な交通機関のポイントに簡易的な基地局を設置。基地局付近を通った子供たちを察知する仕組みだ。ビジネスモデルは、アプリを無料で配布しつつ専用端末の利用料を月額徴収する仕組みを採用している。

子どもたちに所持させる、防犯ブザーも搭載した専用端末のotta.b
子どもたちに所持させる、防犯ブザーも搭載した専用端末のotta.b

広島市の小学校に続き、福岡市にある公立の福岡市警固小学校への全児童を対象にテスト導入を本日発表した。福岡市警固小学校へのテスト導入は、福岡市や広島市など8つの自治体で構成されるスタートアップ都市推進協議会が2014年12月に主催したビジネスマッチングイベントで福岡市長とやりとりしたことがきっかけだったという。

「警固小学校は、公立小学校初のテスト導入。福岡市がスタートアップを支援しているなかで、新しいサービスへの理解が高く実現へとこじつけた」(山本氏)

警固小学校の導入に際して2015年7月に保護者会を実施。対象となる児童の保護者へ専用端末の配布を進めてきた。また、警固小学校は公立のため警固小学校のPTA協力のもと、地域の見守りステーションとなる通学路近くのお店や学校などにも基地局端末の設置を進めた。広島では私立の小学校として導入に対しての理解やスピードは早いが、地域との連携においては公立の小学校が地域との連携や地元自治会などと連携も深い。スタートアップが公立の学校にテスト導入したことで、他の学校への導入の足がかりにもなりやすい。

法人向けなど新たなアプローチも検討

otta PV from otta on Vimeo.

ottaを使った見守りサービスは、近年の防犯対策においても有効だ。学校に着いたら通知が来るため、保護者としても通知を受けることで安心となる。また、広島ですでに実施しているように、通学路や駅などにも基地局を配置することで、通知ポイントを増やすことができる。しかし、もともとは一般ユーザのスマホにアプリをインストールし、地域やユーザ間で見守りすることが目的だったが、その点に関してはサービスをインストールするインセンティブを構築する難しさもある、と山本氏は話す。

山本氏は、今後は個人としての見守りアプリのインストールだけでなく、コンビニやスーパー、カフェなどへの店舗展開などを考えている。その中でも大きなパートナーとなるのが、塾だと話す。山本氏は施設に通知用の専用端末を配布することで、児童が塾にいるかどうかを保護者に通知する機能を提供しようと考えている。施設側には無料で専用端末を配布することで導入コストを下げる。また、サービスの導入によって保護者らに対して安心・安全を謳うアプールにもなる。

同様に、地域に根ざしたカフェやコンビニなどにも同様に展開することで、地域全体で子どもたちを見守るための仕組みを提供する。「子どもを応援するステーションを増やすことで、保護者に安心を提供する」と山本氏。他にも、事業展開としては子どもに所持させる専用端末の小型化や施設向けへの通知端末の改良を考えている。例えば、専用端末が他のセキュリティ端末と連携したり、端末自体がWiFiなどの無線ルーターも兼ねるなど、端末自体に機能を追加することで、より実践的な端末を配布することで無意識に見守り機能が施設に導入される、ということも考えられる。法人向けに施設側へのアプローチ、ユーザ向けには小学校など地域へのアプローチ、といった考えだという。

「サービスの根底にあるのは防犯を切り口にしたサービス展開。犯罪をいかに発生させなくするか。犯罪は発生してからでは遅い。犯罪が発生しずらい地域にする仕組みづくりや、なにかあってもすぐに対応できる状況をつくりだすことが重要。従来の防犯カメラでは追跡しかできない。早く手がかりを掴む目的も含めて、近接無線通信と位置情報を軸とした事業を展開していく」(山本氏)

ottaは、東京にもオフィスを構え、開発拠点を東京に構えながら事業を進めていく。また、サービスの全国展開に向けて女性誌や主婦、育児関連の媒体や会社らと連携していきながら、サービスをプロモーションしていくという。また、VCからの資金調達も目処に事業を展開していく。テクノロジーを軸に子どもたちの安心安全を提供する新しいスタートアップが次にどのような一手を打つか楽しみだ。

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